「緑化症」という病

「ねぇマキナ、緑化症って知ってる?」



私がカルナの元へ通い始めて1年が経ったある日、カルナは唐突にそう私に聞いた。



「いや、知らねぇな。緑化⋯?体が緑色になんのか?」


「ううん、体が段々植物になっていく不治の病。壁の外に行くとなるらしいよ。」



初耳だった。

壁の外に世界があるなんて。

てっきり、この壁の中にしか世界は広がっていないのだとばかり思っていた。



「壁の外⋯?壁の外になんて出られんのか?私一度もそんな話聞いた事ないんだけど⋯。」


「出方は知ってるよ。でも、私もまだ外へ出たことは無いし、危ないかもしれないからマキナにも教えなかったんだ。」


「危ないって⋯、まだ私の事子供扱いしてんのか?これでもカルナより年上なんだけど?」


「年上って言ったって1つだけでしょ?それに、ここでの生き方をマキナに教えたのは誰だったっけ?」


「それは⋯、まぁ⋯、カルナだけど⋯。」


「ちゃんと分かってるじゃない。ほら、そろそろ帰る時間でしょ?こっちの片付けはしとくから、早く帰る準備しなよ。」


「うぅ⋯、わかった⋯。」


そうして、私はいつもの様に自分の家へと帰って行った。


私がカルナの元へ外出するようになってから、母は自室から出てこなくなった。

いつも部屋の前に食事を置いてから家を出て、帰った頃には皿だけが残っているから、食べてくれてはいるのだろう。

不安ではあるが、今の私にとっては母よりもカルナの方が大切だ。

万が一があれば、きっと私はカルナの方を選ぶだろう。

そんなことを考えながら、私は今日も眠りについた。

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