仮面少年

@Abta

第1話 中学三年のあのとき

中学一年生の春、僕は大きな輪の中にいた。しかしその輪はリーダー格の退学により消えていった。中学三年生の春、僕は自分を中心とした新しい輪をつくった。今度は自分を中心とした輪だ。最初は3人だったがどんどんふくらみやがて大きな輪になっていった。輪は大きくなるにつれてそれぞれ気が合うものどうしの輪へと移り変わっていった。卒業するころにはまた一言、また一言、自分を中心とした会話の輪が消えていっていった。どうしても最初しか馴染めず、続いていかない輪。そんな輪がもどかしくて切なかった。僕は輪に馴染むためにいろんなことをした。人の話を聞くようになった。個性を出すようになった。ドラマやアニメをみて会話のネタを作ったりもした。おしゃれだってした。彼女だってできた。でもすぐに消えていった。何もかもすぐに消えていった。そんな日々の中で中学卒業の日にとうとう母親も失った。たった一人だけだった家族を失った。僕を取り巻く輪は完全に潰えた。中学生活を友達も家族も何もかもないまま終えた。いま思えばこのときからだった。僕はこの日から仮面をかぶった。中途半端な輪に入るための仮面ではなく一番目立つ強烈な仮面。まるで主人公のようなそんな仮面を僕はかぶった。

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