どこかの元貴族のお話…1話(執事の不幸)
「お嬢様、しっかりしてください。貴方がいないと僕は…。」
お嬢様と呼ばれる方に縋り付くが、その人は意識はすでになかった。
ただ、死んでいるわけでもなかった。
一般で言われる“植物状態”になっていた。
そのお嬢様は誰からも好かれており、いつも街を歩く度に何か住民の方から貰ってカバンを一杯にして城に戻っていくのが有名な話だった。
だから、いつもどう断ればいいのかしらと悩んでいたのが可愛らしく微笑ましかった。
だが、ある日お嬢様が執事の元へやってきた。執事は、どんなことを
お願いされるのか楽しみであった反面危ないことにまきこまれなければ
いいなと日々心配していた。
「ねぇ、ロイ。また、街に行かない?私、ロイと行きたいとこ沢山あるの!
ね〜え、行こうよ!ここにいても暇でしょう?」
「はぁ、お嬢様。俺がいつ暇ですと言いましたか?俺は見ての通りお嬢様宛のプレゼントの仕分けで沢山やることがありますので違う方をお誘いください。」
そう言って、執事は沢山積んであるプレゼントの仕分けを再開し始めた。
「えーいいじゃん。そんなことやめて私と一緒に行こ〜よ〜!!」
お嬢様に左腕を引っ張られ、プレゼントが傾いてお嬢様の方へ倒れかけた。
「お嬢様!」
執事は、その身をかけてお嬢様を守った。だが、お嬢様を守った左腕に一筋の傷ができてしまった。それを見てお嬢様は慌ててしまっていた。
「!?…我儘言ってごめんなさい。私は、貴方に傷付けるつもりなんかなかったのただ、一緒に遊びたくて一緒に居たくて…。ごめんなさい。医者を呼んでくるわね。ここにいてね。」
お嬢様、敬語が…。折角、素で話してくれたのに。はぁ…。
「ありがとうございます。お願いします。」
そういうと、お嬢様は医師のいる部屋へ向かって行った。
…いや、わかってた。ただ、少しでも長く話したくて、意地悪しただけ。
でも悪いことしちゃったな。だって、将来高い地位にいる俺じゃない違う男に嫁がなければいけないって分かってる。だから、今のうちに話せるだけ話したいというこの気持ちくらい好きにさせて…お願いだからさ。
このお嬢様への「好き」の気持ちは言わない。だから、話すぐらいは許して欲しいな。
「きゃああああー!!ロイ助けてぇ!!いやぁああ!」
声がした。その声はお嬢様だった。
「お嬢様?」
俺はすぐさま声のする方へ走っていった。そこには悪魔のような仮面を被った人がいた。
「お嬢様を話せ!!」
その男の手には鷲掴みされているお嬢様がいた。
「…ロイ、助けて!」
「うるせえな…黙れ!」
その男がそういうとお嬢様を壁に向かって投げ飛ばした。
「はぁ、折角儀式に使う生贄捕まえたと思ったらこれだよ。俺、うるさいの嫌いなんだよなぁ。」
その男は、お嬢様の方を見ると残念そうにしていた。
一方、お嬢様は頭から血を流しており、意識すら危うかった。
「まぁ、いいや。今回もいなかったということにしょ。どうせ、他で捕まえていると思うしな。じゃあね、執事くん」
「逃すか!」
執事が捕まえようとその男の方へ向かっていったが、男の方が速く今いる3階の窓から去っていった。窓から外を眺めるもそこにはもう誰の姿もしなかった。
執事は真っ先に医師の部屋へお嬢様を連れていくと医師はすぐさま回復魔法上級のヒールをお嬢様にかけた。すると、すぐさま怪我したところが治っていったが、出血の量が多かったのか意識は無くなっていた。
執事は、お嬢様はすぐ目を覚ますと信じ通常の仕事をやりながらも適宜にお嬢様の様子を見にいった。
だが、それから目を覚ますことはなかった。
ただ、医者によると上級ヒールより上の回復魔法を持っている方がいれば治るかもと言われ、お嬢様の家族に伝え来てもらったが手の施しようがないと言われ断り続けた。
そんな時、お嬢様の家族でさえもそんな娘はいらないのか縁を切られてしまった。これはチャンスだと思い、お嬢様を抱き抱え城から離れた自分のアパートに一緒に暮らすこととなった。ただ、お嬢様の体を見ることは許されないことなので家政婦を雇い城での通常勤務後家に戻りお嬢様の様子を見るの繰り返しだった。
そんな時に、ギルドから随分と若い貴族のような口調の男性が来たのだった。
そして、その男によりお嬢様は意識を覚ましたのだった。
おしまい
「回復魔法の必要性 例文 執事の願い叶った日 作者ロイ・ステルーズ」
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