第6話
真っ暗い部屋の中、僕はベットの上で暫く佇んでいた。
「…。」
もう、僕には分からない。今までは妄想の中で両親が帰ってきてくれたら、きっと僕と沢山話してくれる。聞いてくれると信じていた。だから、生まれた時から会ってなくても平気だった。“いつかは会ってくれる”そう思っていたから…。でも、今はわからない。爺やの静止を振り切ってまで、会いに行ったのに僕より小さい子供に夢中で爺やに話しかけられるまで無視された。僕の今までの5年間って何だったんだろう。両親に会いたい、会って話したい、寂しい、とか沢山の思いを抱えて生きていたのに。これではその思いすらも無駄になった。
「…僕って何の為に生まれてきたの。何の為に生かされているの?もう、僕にはわからないよ…。」
僕は、布団の中で一人寂しく涙を流し続けた。
次の日、爺やが訪ねてきたが僕は断り、爺やに今日一日この部屋に誰も入れないように言いつけた。
僕は、ベッドからご飯やトイレ以外は出ないで過ごした。
ただ、食欲もあまりなく、あまり食べなかったら爺やに心配された。だが、昨日の今日で食べれる訳がなかった。僕は出かけた。本当は庭を歩きたかったが、両親が帰った今そこにいるかもしれないと思うとどうしても足が動かなかった。
「僕の中の感情ぐちゃぐちゃだなぁ〜。どうしよう。いつもなら解決策出てくるのに今は出てこないや…。」
僕は天井を眺めた。何もない天井。柄やシミとかなく清潔な天井。魔法が無ければ、この綺麗さはありえない。そう思える天井。
「はぁ…。何も食べたくない。何も考えたくない。何も行動したくない。」
僕は誰が来ても開けられないように1時間かけて魔法陣を設置した。
その魔法は、部屋に合わせて拡大縮小できるコンパクトな魔法である。ただ、効果は誰かが呼んでも、ドアを叩いても僕は気づかない。ましては、この僕のいる領域に誰一人として入ることはできない。それは、…家族も同じだ。ただ、効果は短い。もって、一日という短さだ。僕からは自由に出入りできるが他の人は出来ない。
だから、僕はゴロゴロしていた。ただ、顔は真顔だ。っというか、真顔以外できなくなってしまったが正しい。両親が僕を家族の一員に入れてくれなかったという衝撃は5歳の僕にはとてもじゃないが辛いものだった。
それからというもの、僕は変身魔法を高めることにした。理由は、外を自由に出歩くためだ。だから、その為に方程式、魔法式、構造建築のための本を読み漁った。勿論、身長を伸ばすためにはどのような細胞が必要なのかひたすら探し続けた。ただ、食事のことは扉の前に置いてもらったり、部屋に自分でお風呂やシャワーを作ったりした。トイレも作成した。つまり、この部屋にいるだけで食事以外の大切なものは揃っているということになる。
そして、僕は完成させた。
出るために大切な姿を変える魔法。
これを作るために長い年月がかかった。その期間は3年という長さだった。
専門家じゃないから、一から細胞のことを本で調べ、体の構造を知った。そして、光の角度によって人はどれくらい成長して見えるのかなどを調べた。中には実験をした。勿論自分自身を使って行った。さすがに、他の人を巻き込むわけにはいかなかった。なぜなら、実験を行うまで1年かかりその間誰とも話していなく不安だったからというものもある。それ以外に、倫理観が僕を邪魔した。本当に厄介なものだ。
だから、今僕は8歳であり、身長は135.5cmになった。
ただ、表情筋消え去ったがな…。まぁ、いい。
久しぶりにギルド長に会いに行くか。
自分に魔法をかけると、身長が175cmとなり、今までの視線と違い少し目線が高くなった。髪の毛は銀髪から黒色に染まり、顔などが見事大人のような顔つきになった。(後に爺やが教えてくれた。)
これ、邪魔か…
すると、爺やが真っ先にやってきた。
そして、僕の姿を見た執事が一旦扉から出て、服を持ってきた。
「それでは寒いでしょう。こちらを着てください。」
そう言って渡したのはギルド長や冒険者がきそうな服であった。
「爺や…。ありがとう。」
僕は素早く着替え部屋の外に久しぶりに踏み出したのであった。
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