第5話
「ふぅ、もういい。受付嬢黙れ。後でまた話聞いてやるからさ。」
「なんですって???「聞き捨てなりませんね。」…えっ、アシードさん?」
受付嬢に放った言葉に僕の爺やが怒っていた。
「例え、反論できる意見が無くなったからといって、女性にそんな言葉をかけてはいけませんよ。女性には優しくするべきです。そんなことばかりしていますと、永遠に独身ですよ。」
「アシードさんっ…。」
これは、爺やに惚れたかな…?
「…アンタに何が分かると言うんだ。」
「分かりませんよ。ただ、言えることはあります。そんなことばかりしていると、相手も自分も傷ついてしまいます。なので、自分を大切にすることが必要です。そうすることにより、相手を気遣う余裕ができますよ。」
「自分を大切にすることか…。確かにそれはあるな。…受付嬢、ごめん。酷いこと言った。許してくれとは言わない。だが、これから気をつける。本当にごめん…。」
「良いですよ…。私も言い過ぎましたし。これから気をつけてくださいね。だから、ギルド長は30歳超えているのに独身なんですよ!…でも、一人くらい、ギルド長を支える人がいてもおかしくないと思いますし、私がギルド長のお嫁さんになっても良い、ですよ?…。」
「!?」
「あっ…今のは無しです。あの…」
いったい僕は何を見せられているのだろう…。
ギルドランク聞きに来ただけなのになぁ…。
爺やを見ると、嬉しそうに頷いていた。
結論、ギルド長と受付嬢は付き合うことになりました〜って、おめでたいことだけど時間を多く取られちゃったな〜。そして、僕と爺やのランクはA級でした。ただ、ギルドランク一覧を見せてもらった時本来なら普通に道のりが長そうだったな〜。なぜなら、下から、見習い、F、E、D、C、B、A、S、SS、SSSと結構あったからだ。
ギルド長に聞いたところこの世界でSSS級を持っている人は2人いた。その下のSS級は5人、S級は10人、A級は15人いた。ただ、ギルド長から僕とアシードの実力ならS級を与えることができるって言われたが、S級まで高くなってしまうと親の耳にも入るかもしれないと思い一個下のA級にした。
“親に噂を聞いて、僕の顔を見に来て欲しくない。利用されたくない。”
この思いが、あってA級にした。爺やは、僕とお揃いが良いらしくて、同じA級になった。ほんと、爺やは馬鹿だなぁ。…ありがとう。
そう思い、爺やの方を向いたら「どういたしまして」と言われた。
…ほんと、爺やだけには昔から勝てないよ。
「じゃあな、レオン、アシード!これからよろしくなぁ!!」
「レオンさん、アシードさん、ありがとうございます。これからギルド長共々よろしくお願いしますー!」
「こちらこそよろしくお願いいたします。お坊ちゃん共々遊びに行きます。」
「じゃあね。」
ギルド長たちと別れ、外に出ると陽が落ち綺麗な月が姿を見せていた。
「爺や〜、僕楽しかった!」
「それは、よかったですね。お坊ちゃんが楽しそうで爺や嬉しいですよ。昔、数式や魔法式ばかり見つめてる時間が多かったので爺や超心配でしたが、今日の様子を見てると卒業したようでよかったですよ。」
「爺や!その頃の僕は仕方ないだろ!遊ぶものがなかったんだから、」
僕は拗ねたような行動をとった。
「ふふっ、そうですね。でも、爺やにとってはいい思い出です。もちろん、今の姿もお坊ちゃんのアルバムに写真撮って入れたいほどにいい思い出です。」
「爺や…。爺やは僕の執事やめないよね…。」
「爺やはやめませんよ。定年退職の年齢に達しても続けますよ。」
「…流石に定年退職の年齢になったら辞めてくれ、爺やの体が心配だからさ。」
僕とアシードは家の前まで来て裏道から入り込むとそこには見たことのない馬車が二つあった。馬車についている家紋は二つとも家の家紋と一緒だった。
「爺や…。こ、これは?」
僕は爺やの方に振り返った。
すると、爺やはそれを見て顔をこわばらせていた。
「爺や?」
「あっ、失礼しました。そうですね。貴方の両親に間違いないかと…。」
「そうだよね…。爺や、僕はどうしたらいいと思う?
正直会いたい気持ちはあるけど、何故この歳になるまで会いに来なかったのか。とか沢山の疑問が溢れだして、どうしようもないんだ。僕は、どう、したら、いい、かな…。」
僕は、嬉しい気持ち、会いたい気持ち、寂しかったという思いなど沢山の感情が溢れてきて涙を流していた。
ただ、そんな僕に爺やは酷いことを言い放った。
「逢いに行かないほうがいいかと。部屋にこもっていた方がいいと思います。」
「えっ…?爺や…?なんで、そんなこと言うの?僕は、僕の両親に初めて会えるんだよ…?酷いよ!見損なった!」
僕は爺やの顔を見ず駆け出した。
玄関から堂々と入り、一個一個両親のいる部屋を探し続けた。すると、開かずの部屋と言われている部屋以外見当たらなかった。そして、僕は、開かずの部屋の扉に耳を傾けると男性の声と女性の声がした。僕は、その人たちが僕の両親と思い開けるとそこには、僕の両親との間に新たな子がいてその子と両親が楽しく談笑していた。僕は、両親の写真をいつも持っていたから分かった。そこにいるのは紛れもなく僕の両親ということを知っていた。
「ねぇ、お母様、お父様、ここに僕もいますよ。僕の名前はレオンと言うんですよ。」
そう僕が話しかけても誰も反応しなかった。
そんな時だった。爺やは、扉の前にいた僕の手を引いて出て行った。ただ一言領主に向かって言った。
「申し訳ございません。今すぐ連れて行きます。」
「アシード、しっかり見張っててくれ俺のいるところに“一度”たりともそいつを連れてくるな。」
「はい、かしこまりました。」
「…。」
扉から出ると、辺りは真っ暗で僕とアシードの足音を除いて物音一つも無かった。
「ねえ、爺や。忠告破ってごめんね。」
「いえ、こちらこそ言葉足らずで申し訳ございません。」
「大丈夫だよ。だけど、部屋に着いたら暫くは一人にしてくれる?」
「はい、かしこまりました。」
その後は、僕とアシードは一度も喋らずに部屋までついたのだった。
「送ってくれてありがとう。じゃあ、お休み。」
「はい、お休みなさい。」
“バタン”
静けさの中、扉閉める音がいやに響いていた。
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