第4話

「アシード、さっき蹲っていたけど、大丈夫?」

僕は、アシードに近づいていった。アシードは先程いた場所にはいなく、闘技場への出入り口で待っていた。

「大丈夫ですよ。ただレオン、あまり腰には触れないで欲しいです。さっきぎっくり腰やってしまったところなんで痛くてたまらないんです」

そういうと爺やは猫背で歩いていた。

「あ〜、だよね。ぎっくり腰だと思ったよ。だって、背筋がいつも伸びているはずなのに、今猫背で歩いているんだもん。」

僕は、爺やから少し距離を置いてゆっくり歩いた。

「すみません、この爺や一生の不覚です。情けなくて、涙溢れそうです。

およよ…。」

「!?おいっ、嘘泣きはやめろ。僕が泣かしたみたいじゃないか。」

「爺やは冷たいお坊ちゃんに悲しいです。」

「ごめんよ、でもここではしっかりしてよ。流石に外だからさ。」

僕は爺やの近くに行き、肩を軽く叩いた。


「お坊ちゃん…。まぁ、しょうがないですね。嘘泣きにも騙されなくなったお坊ちゃんに成長を凄く感じましたが、爺やお坊ちゃんギルドランクが気になりますので泣き止むことにします。」

そういうと、背筋をピーンと伸ばすと前を向いてアシードは歩き出した。

「はっ?」

おいおい、アシード、ぎっくり腰は???まさか…。ぎっくり腰の下りから僕は全て騙されていたのかぁ???

「…。」

僕はジトっと遠い目でアシードを見ると、テヘッとベロを見せてきた。


僕、苦手なものなんかこの世に無いと思ってたけど、訂正する。

僕の苦手なものは“爺やの思考”かもしれない…。



「はぁっ…。」

僕がため息をついている間にもアシードはどんどん先へ進んでいった。


「お坊ちゃん、遅いですよ。次回からもう少し早めにお歩きくださいね。

あと、お坊ちゃんやっぱり騙されやすくて、爺やは凄く心配です。どうか、騙されないようにもっと知識や俊敏な物を見ることができる能力を身につけてくださいね。」

「アシード!!!!最後の一言は余計だぁぁぁぁぁぁああ!」

僕をみるアシードの目には嘲笑が合ったのを見て僕は、少し怒りながらアシードの元へ急いで向かった。



“バタン”


僕とアシードが闘技場へ通じるドアを出た瞬間、そのドアは姿を消した。話によると、新規ギルドの冒険者見習いしか見ることができないらしい。

つまり、見えないということは僕とアシードは冒険者見習いからは脱却できたらしい。今のところ結果が出てないからわからないが…。


「アシード、試験どうだった?今更ながら全然聞いてないな〜って思って。」

「あれ?質問に質問を返すようで悪いのですが、お坊ちゃんさっきの怒りは大丈夫だったんですか?」

「…正直まだ怒りはあるけど、爺やは心配かけたくなくてそう言ったんだと思うから大丈夫。それより、質問に答えてよ。」

「はいはい、分かりました。そうですね。正直、こんなに簡単でいいのかと驚いてしまうくらい雑魚でした。」

「だよね〜。僕も見ていてそう感じた〜。アシードは剣捌きなど一流なのに、相手は違うから相手の下手くそさが全面的に出てて驚いたよ。そして、相手が滑稽だったよ。面白いもの見せてくれてありがとう。爺や。」

「いえ、お坊ちゃんの近くにいたからやり方が移っただけですよ。」

僕とアシードは拳と拳でグータッチをした。


“ピンポンパンポーン”

「アシードさん、レオンさんギルド長の部屋までお越しください。もう一度繰り返します。アシードさん、レオンさんギルド長の部屋までお越しください。」


そんな時に、さっきの受付嬢が僕たちを呼んだ。ただ、それがギルド内のアナウンスで呼ばれた為いろんな人から好奇の目を向けられていた。それは、僕らがギルド長の部屋に入るまで続いていた。


「やあ!二人とも、俺はおっさん改め、ギルド長のディセン・ロウギンスです。アシードさん、お宅のお坊ちゃん、とても強いね。俺、なんの魔法か分からないまま捕まったからジョブ出せなくて超悔しいんだが?まぁ、それは置いといて二人のギルドランクを発表させてもらう。」

「さっきと雰囲気変わったね。」

「こればかりは真剣に行わないといけなくてな、ギルドの方針なんだ。さっき会話してたし、戦っていたから変だとは思うがこの雰囲気で聞いてくれ、

…お二人は、ギルドのことについて何か知ってたりするか?」


「僕は知らない。アシードは?」

「多少なら知ってはおります。」

僕は、記憶をフル回転させたが、自分の持っている蔵書にはギルドのことに関するページ及びプリントが記載されていなかった。それで、アシードに聞くとアシードは知っていた。…今度から市内の本屋にも寄ることにしようかな。


「お坊ちゃんが全く知らなくて、アシードさんは知っていると…これは最初から説明した方が早いよな〜。だりぃな…。仕方がない、これもお酒のためだ。

黙って聞いてくれよ。御二方さんよ。



ギルドが作られたのは今から50年ぐらい前の話になる。

当時は、冒険者というものがいなく、怪物や魔物を倒すのは守人という今で言う警備隊と言われる。その為、守人は何かと規則があって自由に動ける存在じゃなかったんだ。守人は人数を多くないといけないのに、規則が沢山あり色々と面倒臭かったせいか志願者が全然いなかった。そこで、村の警備にも村の外の警備にも人を派遣させたかった当時のリーダーが考えた結果、二つに分けた方が効率が良いということになった。それで、村の警備を守護守人、村の外の警護を探索守人の二つとなった。当時の人は、二つに分かれたことによりその役職に興味を持ち始めるが志願者はこれといって増えなかった。理由は簡単、規則が何も変わっていなかったからだ。それから、特に増えたわけでも減った訳でもないことを知ったリーダーが、更に改革をし規則は緩くなったがそれはそれで新たな問題が起きた。それは緩くなったことにより全体をまとめることができなくなったということだ。今でも分かるとおり、人は全員それぞれの個性がある。つまり、何が言いたいのかというと守人の中で争いが始まり始めた。最初は小さい戦いだったが、時が過ぎると共に一刻一刻と激しくなっていった。それにより、政府は解散させることになった。それから25年ほど経ち、現在のリーシェイン・ロード国王が20歳の時にギルドと警備隊を作ったというわけだ。ギルドと警備隊が守護守人か探索守人かは言わなくてもわかるから除外する。これがギルドの創立の歴史だ。」


僕は、ギルド長を見た。すると、次の話に行こうとしていた。

そんなときに、受付嬢からギルド長に向けて一言放って言った言葉に僕とアシードは驚いてしまった。


「ギルド長、話長いです。

それに、ここにギルドの取扱説明書あるのにわざわざ話す必要性ってありますか?」

そう受付嬢が言うとムカついたのか青筋を立てながらギルド長が反論をした。


「あるに決まってんだろうが!初めての人がこの取扱説明書を読んだら混乱して頭が痛くなるだろ!そうならないようにする必要性があると思ってやってんだよ!」



ギルド長と受付嬢の口喧嘩がヒートアップしていった。

それより、目上の人に胸を張ってその言葉言えるの強いね。家庭を持つと男は女に尻に敷かれるというけど…まさかギルド長と受付嬢は!?

僕は、見て見ぬ振りをすることにした。厄介ごと(夫婦喧嘩)に巻き込まれたくはないから。ふと、僕は心の中で思った。




早くこの時間終わらないかな…。

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