決戦! ドラゴン…ドラゴン?②

「編成はどうするんだ?」

 ジャックが言った。スキンヘッドのね。名簿を見て、名前を知った訳よ。ジャックのパーティーは四名で、全員歴戦の強者、という風貌の戦士達。Cランクだけど。一応振り返ると、斧使いのジャック以下、シーフ、アーチャー、剣士の合計四名。

「能力が分からないのだけど。ランクはどうなの?」

「Cランクが最高だ。三つある。後衛ならレベッカのチームだな」

 ジャックが指差す先に五名ほどのパーティーがあった。全員女の子。ぱっと見、アーチャーと魔導士の編成…魔導士がいるのか。これは予想外。魔導士がいるなら、戦術の幅が広がるからね。

「にしても、シルバよりランクが低いわね…」

「仕方ない、大した依頼がないんだ。ポイントが稼げない」

 ランクって二軸の評価でね? 累積賞金額が一つ、それから戦力評価がもう一つなの。戦力評価って、ざっくり言うと依頼の難易度×依頼の回数で算出できるのよ。「生き残った回数」、とも言えるわね。例えば、薬草採集やら、この前の翻訳業務なんかは当然ゼロ。狩猟で1とかかしら。戦争傭兵の類だと100ポイントがついたりするわ。その分、激戦が予想されるのだけれど。

 ちなみに今回のドラゴン退治は50。割と高め。なんだけど、貢献度によってポイントは上下するの。逃げ回った結果生き残った、では当然ポイントは下がし、下手したらマイナスが付くわ。戦争だと分かりやすくて、討ち取った敵の数が加算されるの。将軍クラスだと更にボーナスが付くわね。アタシも何度か討ち取ったなぁ。効率よく、ポイントが稼げるから。

 話を戻すけれど。Dランクまでは、相当の時間さえかければ誰でも昇格できるのよ。賞金額だけの算出だからね、ちまちま薬草採集を重ねるだけでもOK。Cランク以上はポイントが必須なの。「魔のDランク」というのは制度的な問題もあるのよね。

「戦争が無いから、かしら」

「そうだ。俺たちもコツコツ狩猟系やら、ごく稀にある賊退治で稼いだんだ」

「そう言えばクジラを獲っていたわね」

「クジラは狩猟系でポイントが一番高いからな。一頭につき5ポイントだ」

「それなら鹿とか猪を捕まえた方が良くない?」

「バカ言うな、草食動物は0.5ポイントだ」

 そうだっけ?

「ともかく、ポイント不足で昇格が遅い、と」

「そうなるな」

「実際の戦闘力はどうなのかしら?」

「分からん。戦争経験者は俺たちだけだ」

「どこで?」

「ビザンツで」

「東側なの?」

「ああ。フィヨルドとな」

「激戦だ」

「知ってるのか?」

「フィヨルドにも何年か…ともかく、Dランク以下の統制を取りたいのだけど」

「なら、任せろ。シャルルじゃ古参だ」

「前衛組を全部」

「分かった。後衛は?」

「そこのレベッカにお願いするわ」

「ペルルは?」

「遊撃隊」

 ぱん、と名簿を畳む。眼前にレオナード率いる王国軍が整列していた。

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