潮風の国⑦
という事で、今日も掲示板と睨めっこ。なにか楽で稼ぎがいいやつはないかなぁ。薬草採取。腰が痛くなるからやだ。魚釣り…島国らしい依頼だけど、やったことがないから却下。お祖母ちゃんの話し相手…これはギルドの仕事なのかしら? 出張料理…これも違うと思う。イノシシ狩り…これかなぁ。キャラバンの護衛、ってのもあるけれど、アタシはしばらく街を楽しみたいの!
「あんまり、傭兵の依頼って無いね」
それはアタシも気にはなっていたの。精々、要人警護とか護送警備くらい。
「ないわね。島国だからかしら?」
「大陸だと、小競り合いでも依頼してくるからね」
実際、ギルドの主な収入源は戦争なんだよね。最近は大きいのがないから、どこのギルドも苦労しているみたいだけれど。
「だから依頼の範囲が広いのかしら」
「確かにユニークだね」
「なぁ」
あいつが話しかけてきた。
「これ、ドラゴンだよな?」
そういえば昨日、はぐれドラゴンがどうとか言っていたような。そもそもモンスターが人里に現れること自体が珍しいの。モンスター退治の依頼なんて、年に一回あれば良い方。一応、依頼票を見てみる。ドラゴンのイラスト付き。イラストって目立つから、どうしても依頼したい人は追加料金でイラストを付けてくれるんだ。ともかく、依頼主は…少し離れた所の領主らしい。注意書きがある。
王国軍が先に討伐した場合は報奨金の支払いはなし。
「王国軍ってもう来てるのかしら?」
「うーん、依頼日が三日前だから、微妙な所じゃない?」
ベルがぶんぶんと唸った。彼女、考え事をすると羽が震えるの。
「王国軍って?」
「アリア王国軍よ」
「アリア王国…アリアっていうのか、ここ」
あいつの言葉は無視して、もう一度依頼票を確認。報酬はすごく良い。ドラゴンだものね、二千リリル。節約したら一年間暮らせちゃう。とはいえ、一人だとしんどいかなぁ…。先にアリア軍が倒しちゃう可能性もあるし。無駄足になったら目も当てられないや。
「やっぱりイノシシね」
依頼票を掴み取る。イノシシ一頭につき二十リリル。ま、悪くないでしょう。
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