第4話 もやの正体
「黒いもや...」
クロの話に出てくるもやは、社を開けた時に出てきた瘴気だろう
瘴気は人間の負の感情の塊である
その性質として、人間の生気を吸い力を付けようとする
だがカラスの声...?そんなものは天界の本にも載っていなかった
「ねぇクロ、その森で人が死んだとかって聞いたことある?」
「いや、聞いたことないです」
「君の家の土地の名前は?」
「石置と言います」
質問に、クロは癖らしい眉間の皺を寄せながら無表情に答える
「石置...」
聞けば聞くほど気になってくる
今は家出中で何もすることがないし、これも縁だろう
「クロ、そのもやを見させてもらえないかい?」
「いいんですか?」
クロは願ったり叶ったりという顔をしてこちらを見つめる
「良いんだ、僕も知りたいことがある」
瘴気なら"アイツ"の事が出てくるかもしれない
「じゃあいつから家へ向かおうか」
問う私にクロは今すぐに行きたい、という感情を露わにしながら答える
「明日の朝出発しましょう、今日は街に降りて食料でも...ってお金を持って無いんでした」
クロが懐を漁りながら肩を落とす
「食料がいるのかい?」
明日の朝出るのなら昼前には着くだろうに
クロはお腹が空いているのだろうか
「歩いたら腹が減るでしょう」
「?飛んでいくから大丈夫だよ?」
クロの顔を見ると、真っ黒な目玉が飛び出しそうな顔で僕の方を見ていた
「飛ぶ?」
「うん、明日の朝出れば遠くても昼には着くだろうね」
クロは僕の言葉を聞くと顔を真っ青にする
「家の方向とか...!」
クロは言い訳をする様に手を振る
「じゃあ今から市に降りようか、丁度昼時だよ」
なぜだかわからないけれどクロはあの、とかいや、等ともごもご口を動かした後、大きく息を吐いて行きましょう、と小さく言ってこちらに笑顔を向けてくれた
人と交流するのは久しぶりだから何かしてしまったのかと思っていたけれど、笑顔になってくれたなら良かった
クロも家に帰りたいだろうし、同じ人間と話したくなるだろう
ちゃんと交流できているみたいだ!
そう思った私は、ほくほく顔で市に出るためにクロを連れて本殿を出た
「ほら、行こうか」
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