第387話 転生計画とモフモフライフミッション

 上村さんが作ったサラダをテーブルに並べて、溶岩魔道プレートで肉を焼いた。炭火を使わないバーベキューだ。ジュウジュウと音を立てて肉が焼けて美味しそうな臭いがコテージに充満している。結界で臭いや音は外に出て行かないけど、空気は入れ替わっているようだ。息苦しくなることはない。


 お腹いっぱいバーベキューを食べて、休憩中だ。コテージの半分に仕切りを付けて3つベッドスペースとミニテーブルをセットした。ダイニングキッチンと個室3部屋だ。僕の巣へースニに入って、ベッドを椅子代わりにして今はレイに手紙を書いている。

 地球にも魔物に似た魔力を糧にできる生き物がいたこと。

 その生き物は、今は人間を襲ったりしないこと。

 異世界に行ってドローンの操縦訓練をしたいことなんかを書いた。


 手紙を書き終えて、アイテムボックスの共有スペースを覗くとレイからの手紙が追加されていた。


 そこに異世界も春になろうとしていることと今の所、急いでしないといけない仕事はないから、いつ転生しても大丈夫だということが書いてあった。


 本田さんと上村さんがいるならちょうどいい。明日にでも転生して家にはドローンで戻ってもらったら良いよね。それから、こっちの世界を色々案内してもらって…。よし!相談してみよう。父さんと母さんにも連絡しておかないといけない。…、まだ、8時前だし本田さんたちに相談して、OKもらったら父さんと母さんに連絡しよう。


「本田さん、上村さん、ちょっといいかな?」


「何?」

「どうしたの?」


 僕がベッドスペースから出て行くと二人は、食堂でジュースを飲んでいた。


「さっき、アイテムボックスを覘いたらレイから連絡が入っていてさ。今、差し迫った仕事もないから転生しても大丈夫なんだって。それでさ、僕も向こうでドローンの操縦練習もしてみたいから、明日から1週間くらい行ってみたいなって思うんだけど、合格発表もあるでしょう。それで、レイのことお願いできないかなって思ってさ。」


「レイが来るの?」


「久しぶりだよね。お世話って言っても何もできないって言うより、私たちが色々お世話してもらうことになると思いけど大丈夫だよ。任せて。」


「それじゃあ、連絡してみる。上手く言ったら明日から入れ替わると思うけど、入れ替わったら帰りはドローンを使えるからさ。そのつもりで計画立てておいてくれないかな。転生の日程が変わる時は、また相談するね。」


「了解。」

「任せて。」


 一応、父さんと母さんにも連絡した。電話で一言だけ、明日か明後日レイがこっちに来るって言うと、楽しみにしているって言ってた。


 部屋に戻ってもう一度手紙書いた。

 明日、転生したいって。時間は家にある向こうの時間時計で確認してもらった。こっちの時間とほぼ2時間の時差になっているそうだ。地球が2時間進んでいる。


『転生について

 転生は、できれば明日。朝、レイの世界の時刻で8時。こっちの時刻で10時でどうだろうか。今、富士山に本田さんと上村さんと一緒に来ている。できれば、帰りはドローンでお願いしたい。』


 さて、ここまで書いたら明日の朝アイテムボックス確認するだけで良い。今日は、もう寝るかな。


「凜君、もう寝るの?」


「まだ、8時半だよ。」


「そうだね。そう。ダイダラボッチのことも気になってた。」


「富士山の噴火は心配よね。」


「私は、ムジナちゃんが気になるのよね。家に来てくれないかなって…。」


「それは、私も。あのモフモフちゃんたち可愛い過ぎる。」


「あの子達を家に連れて帰りたいってこと?」


「できれば、適えばってそう思うのは当然だと思うんだよね。」


「でも、ムジナって個体で連続体なんて変なこと言ってたし、ここから離れられるかもわからないよね。」


「そう。でも、山姥さんが今くらい魔力があれば、町に遊びに行くこともできるなんてこと言っていたじゃない?」


「それで、私たちがすべきことは山姥さんにムジナちゃんをお家に連れて行っても良いかと聞くことよね。」


「でも、タヌキはペットにしたらいけないんじゃないか?」


「えっ?そうなの?でも、庭にタヌキが来てるってニュースで流れたことあったじゃない。」


「ちょっと待って、調べてみる。」


 スマホでタヌキとペットを検索ワードにして調べてみた。やっぱりペットして飼うことは禁止されている。


「やっぱり、ペットとして飼うのは禁止されているよ。ムジナって姿を変えることができるなら、他の動物に化けてもらった方がいいかもよ。」


「その前があるでしょう。山姥さんに許可してもらえるかどうかよ。」


「あの子たちの許可は?」


「見てたら分かるでしょう。一緒に来たがっているわよ。」


「本当?」


「本当よ。」

「絶対間違いない。」


 本田さんも上村さんも自信満々?に応える。


「信用してないみたいね。それなら、聞きに行ってみましょう。」


「ええ?今から?なんか違う妖怪も出てきそうだし…、明日の朝にしようよ。」


「でも、玲君明日の朝、異世界に転生するんでしょう。それならバタバタじゃん。」


「大丈夫。朝って言っても10時くらいだから。今日は、もう寝て、明日の朝、夜が明けて話に行こうよ。そっちの方が安全だよ。」


「…、わかった。明日、夜が明けたら一番に行くわよ。精錬魔術でできる料理はできるだけたくさん作っていて。お菓子でも良いから。頼んだわよ。絶対説得して見せる。私たちの幸せなモフモフライフの為の重要ミッションよ。」


 精錬魔術で食べ物を作ること。それが、僕に課せられた寝る前のミッションなのだそうだ。手持ちの材料で何ができるかな…。小麦粉やベーキングパウダー、クリームなんかはあるけど、フルーツなんかはほんの少し残っているだけだ。アイテムボックスの中に入れていたら痛まないって言っても、買ってきた物は大抵食べちゃうから。こう言うことがこれから頻繁にあるのなら、レシピを増やすのと常時調理の材料ストックしておかないといけないかも。


 そう言えば、一番最初の頃向こうの世界でレイは、ポーションを作る時、乳鉢に入れた薬草を魔力を込めながらゴリゴリすり潰していっけ…。魔力を込めならがら…、同じように料理したら魔力がたくさん含まれた料理になるのかな…。良し、明日、上村さんに試してもらおう。そうしてムジナたちに食べ比べてもらえば良い。もしも、それでも良いんなら本田さんたちも自分でムジナたちの食べ物を作れるようになる。


 そんなことを考えながら、手持ちの材料で作ることができる料理を精錬していった。スープ、フルーツミックスケーキ、ドーナツ、ハンバーグ。ムジナたちはどんな食べ物を喜ぶかな。明日の朝が何か楽しみだ。



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 今日の夕食は、シエンナ、アンディと一緒だ。少し遅めの夕食になった。久しぶりの賢者の工房での食事だ。食事の準備はメアにお願いした。玲に連絡を貰ってここに来た。きっと、明日には転生をしてくると言い出すだから、ここで、待っている方が都合が良いはずだ。


「本当に玲様はいらっしゃるのでしょうか?」


「多分、いや、絶対来ると思う。…、ちょっと待って、アイテムボックス。」


 …、やっぱり。


「明日、午前8時。書き込みがあったのついさっきじゃないかな。玲からの連絡にそう書いてあった。」


 明日の朝、8時ならまだ十分時間がある。向こうに持って行くものって何かないかな…。まあ、物は持って行くことはできないけど、ルーサーさんから新しく作った錬金術式を購入しておけばよかった。

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