第388話 新しい仲間
今日は、全員早起きをした。
「だからさ、玉ねぎをみじん切りにする時も包丁を通して魔力を玉ねぎに流し込んでみて…、魔力操作の要領だよ。」
「じゃあ、私は、お好み焼きを作ってみる。粉とキャベツを混ぜる時に魔力を流し込むイメージよね。」
「マヨネーズも手作りできたら魔力が豊富になりそうなんだけどね。」
「玲君、生卵持ってきてるの?」
「あっ、マヨネーズ持ってきているから、精錬コピーで作ってみようか。生卵も酢も持ってきている。」
「うーん。私の錬金術でも作れそうだけど…。上手くできなかったら嫌だから、玲君作って。きっとムジナたち喜ぶよ。」
本田さんがお好み焼きを焼いている。焼きながらフライパンの中に魔力を流し込んでいるようだ。
「僕たちの朝ごはんも食べないといけないよね。」
「じゃあ、私のお好み焼きを朝ご飯にする?千切りキャベツも錬金でできないかな…。」
「錬金できるかもしれないけど、アルケミーとは違う気がするね。ルーサーさんに聞いたら分かるかもしれないから聞いてこようか?」
「今知りたいのよね。でも、聞いてきて、他の錬金術の呪文も聞いていてね。」
「分かった。」
本田さんが作ったお好み焼きの生地で小さめのお好み焼きを3つ作って朝ご飯にした。全部焼くと時間がかかりそうだったから、本田さんが作った生地を半分収納させてもらって精錬魔術でお好み焼きを焼き上げた。
次は、上村さんのハンバーグだ。これも半分は、収納させてもらって精錬魔術で作り上げた。ムジナたちに持って行く料理が出来上がったのは7時30分だった。
コテージを出て収納。辺りの人の気配をサーチして人がいないことを確認した後、昨日の風穴に向かった。今日も来るつもりだったから、入り口をふさいだだけで階段は壊していなかった。
「お早う。みんないる?」
「みんなー、朝ごはん持って来たよ。山姥さん朝ごはんですよ。」
中に入るとムジナたちが60匹くらいいた。みんなモフモフで元気だ。毛並みもつやつやしている。
「おう、お主ら、今日も来てくれたのか。ありがとうよ。」
奥の方から山姥さんが出てきた。
「お早うございます。」
「まあ、儂らは、この時間から、眠りにつくのが普通だがな。朝飯など生まれてこの方食したことがないぞ。」
「ええっ?食べないのですか?」
「だ、誰がそのようなこと言った。食したことがないと言っただけではないか。」
「今日持って来たのは、お好み焼きとハンバーグです。ちょっと食べ比べて感想をお願いしたいのですけど宜しいですか?」
「何?食べ比べだと…。」
「はい。ええっと、本田さんが作ったお好み焼きと上村さんが作ったハンバーグと僕が作ったピザの3種類の食べ比べからお願いして良いですか?」
「ほほう。3種類も食べさせてくれるのか。任せておくのだ。その代わり、忖度も何もせぬぞ。」
「はい。宜しくお願いします。あんまりお腹いっぱいになったらこの後の食べ比べに差し支えるので少しずつ食べて下さいね。」
お好み焼きは4分の1、ハンバーグは半分、ピザも4分の1渡した。
「どうでしょうか?」
「…、うむ。どの料理も魔力が豊富で上手いぞ。儂の好みで言うなら、この一品だな。」
山姥さんが選んだのはハンバーグだった。
ムジナさんたちには一口ずつにしたかけらをまず食べてもらった。その後、一品だけたくさん食べるとしたらどれにしたいかを決めてもらった。だいたい三等分だ。
次は、本田さんが作った生地を僕が精錬魔術で焼き上げたお好み焼きと上村さんが捏ねたハンバーグを僕が精錬魔術で焼き上げた物とそれぞれ作った料理で比べてもらった。
やっぱり二人分の魔力が込められた二品に人気が集中している。
「さて、美味しかったですか?」
みんな飛び跳ねて反応してくれた。美味しかったんだね。
「山姥さん、実は、ムジナさんたちの中から承諾してくれる子を二人程、僕たちの家に連れて行きたいんですけど、許してくれますか?」
「うむ…、儂じゃダメか?」
「えっ、ええっとそれは、遊びに来て下さるのはかまいませんが…、一緒に暮らすのはちょっと…。それに、僕の家じゃなくて本田さんと上村さんの家に一緒に行ってくれるムジナさんを募集しているのですが…。」
「儂は、だめなのだな。ムジナたちは全員行きたがるだろうよ。何か条件はないのか?」
「あっ、あります。実は、人間界はタヌキをペットで飼ってはいけないっていルールがあるので、イヌか猫に化けられる方という条件が付きます。」
「お主らの中で犬か猫に化けられるもので、こ奴らと一緒に人間界に行ってみたい物は化けて見よ。」
20匹ほどのムジナが犬や猫に変身した。
「ええっ、そんなにたくさんいてみたい子がいるの…。」
「どうしよう。この中から一人なんて選びきれないよ。」
このままじゃ、争いになってしまいそうだ。
「君たち、2匹の猫か犬になれないの?」
20匹のムジナたちは、10匹ずつに分かれてギュギュっと固まりだした。おしくらまんじゅうをしているみたいにかたまっているモフモフが、可愛い。
『ボワン』
2匹の大型犬に化けることができたみたいだ。秋田犬?みたいな白と黒の犬がそこに立っていた。
「お主ら、そこまでしてこ奴らと一緒に行きたいのか…?」
「クーン。」
大型犬にしては高い甘えたような声で応えた。
「ありがとう。一緒に行ってくれるのね。これから宜しくね。」
「よろしくね。仲良くしましょう。」
新しい仲間ができた。さあ、僕は、次、異世界転生だ。
僕たちは、残っているみんなに作ってきた料理を全部分けてあげた。この風穴が見つかった時騒ぎにならないように、皆の食事が終わった後、土魔法で作ったイスとテーブルを元に戻した。
「じゃあ、みんな、次は、一月後位に来るからね。それから、皆の仲間は絶対大事にするから心配しないでね。」
挨拶を済ませて外に出た。階段も広げた入り口も元に戻した。これで、人間に見つかることはないと思う。
外に出て、一度サーチで人の気配を確認してコテージを出した。新しい仲間も一緒にコテージに入り、結界を張る。
「この子たちの名前を決めないといけないわ。」
「どちらが私と一緒に来てくれるのかしら。」
本田さんが聞くと黒い犬の方が近寄って行った。
「じゃあ、あなたが私と一緒に来てくれるのね。」
上村さんが白い犬に話しかけた。白い犬は、上村さんの足に体を寄せぴったりとくっついた。
「私と一緒に来てくれるクロちゃんの名前を決めるね。どんな名前が良いかな…。クロちゃんは安直すぎるから…。夜…、ナイト。私の騎士って言う意味と暗闇のような色って言う意味でナイトはどう?」
「ワン!」
「気に入ってくれたみたいね。じゃあ、あなたは、ナイト。宜しくね。」
「じゃあ、あなたね。白はダメよね。私、カタカナじゃなくてひらがなか感じの名前にしてあげたいな。雪ちゃんじゃだめ?女の子みたいな名前だけど…。」
白い犬は、少し首をかしげていたけど、本田さんの顔をじっと見ると、
「ワン!」
「雪ちゃんで良いのね。じゃあ、あなたの名前は、雪。雪ちゃんね。」
「ナイトと雪ちゃんだね。宜しく。僕は、玲だよ。持田玲。」
「あっ、これからちょっと変なことが起こるけど、ビックリしないでね。玲君、じゃあ、準備してきて。ドアは開けておいてね。」
「うん。行ってきます。1週間くらい行ってこようかな。後は宜しくね。」
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