第385話 素材採集と魔力サーチ
須走口五合目から更に上に登って、少し開けた場所を見つけてコテージを設置した。コテージには、トイレと台所はついている。結界を張れば、光も臭いも漏れない。
今回のキャンプのためにそれぞれのプライベートスペースも設置した。簡易的なドアだけどそれぞれの部屋にベッドの他にライティングテーブルも入れている。
「ここに入るとここが富士山の五合目なんて思えないわね。」
「そうだよね。じゃあ、私とベルは、晩御飯の準備をするね。凜君は、溶岩採集してくるでしょう。」
「うん。ちょっと出てくるね。戻って来たらスマホを鳴らすからドアを開けてね。」
「了解。でも、電波来ているかな?」
「え?ええっとね。私のスマホは大丈夫。」
「私のも大丈夫みたい。」
「じゃあ、そう言うことで、電話したらドア宜しく。」
僕は、コテージを出て、登山道に向い、道に沿って登りだした。富士山は最後の噴火から300年以上経過している。溶岩もかなり風化しているはずだ。もしかしたら魔力の通りやすさや魔力保持量も変わっているかもしれない。
収納しても目立たない場所の溶岩を収納して、給湯の魔道具を作ってみた。取り出して、魔力を流し込む。
チョロチョロと熱いお湯が出てきた。以前、採集してきた溶岩で作った物と性能はあまり変わらないようだ。
(良し。2~3トン程、あちこちから拾ってくればいいかな。それにしても、噴火後300年たっている溶岩でも噴火したてとあんまり変わらないのはどうしてかな。ちょっと不思議だ。火山岩の特徴みたいで、深成岩は、魔石のような性質は無いようなんだよね。)
「サーチ、薬草。サーチ、毒気し草。」
こんな高い場所には、まだ、薬草は生えてないか…。まあ、おじいちゃん地に行った時、かなりたくさん採集したからまだしばらくはもつと思うけど、春になったから、おじいちゃん家に行って採集してこないといけないかな…。
溶岩は直ぐに採集し終わって、薬草のサーチは空振り、魔力反応でコテージがどこにあるかわかるかな…。
「サーチ、魔力反応…。やっぱり…、あれ?」
おかしい。何でいくつも魔力反応があるんだ…。でも…、魔物じゃないと思うけど…。動いてる。接近してみる…か。
登山道からは離れていった、崖の下の方、一番近くの魔力反応がある場所だ。そこに向かって走った。かなりの上り坂だけど、コテージを出る前に体力増強ポーションを飲んだから全然平気だ。崖を迂回して、魔力反応を感じる方向に近づいて行った。サーチは続けている。だから、見失ってはいないはずなんだけど、居ない…?
この先に居るはずなのに崖…?ん?小さな穴。風穴か?この中に入るのは一人じゃ危険か…。一度コテージに戻ろう。
僕は、一人で風穴に入らず、一度コテージに戻ることにした。怖かったわけじゃない。断じてそうだ。無茶はしないだけだ。冒険で無茶をすることは勇敢なことじゃないんだ。だから、コテージに帰って本田さんと上村さんと一緒にこの魔力の正体を確認する。もしも、魔力の正体が幽霊なら、霊体の退治の仕方をレイに聞こう。でも、敵対ているわけじゃないからな…。
僕は、コテージをセットしたと思う場所の側で本田さんの携帯をコールした。料理中なら本田さんの方が手が空いているはずだ。
「もしもし、鈴だよ。」
「今、戻ってきた。でも、ちょっとみんなで行きたいことろがあるんだけど、料理は中断できる?」
「えっ?聞いてみる。(カラーっ、今、料理を中断できるー?うん。わかった。)後10分位で中断できるて。」
「10分…。微妙…。本田さん、中に入れて。ボーっとコテージの前で立っているには、ちょっと長い時間だよ。」
「了解~!」
直ぐに、ドアが開いた。僕は、周りを確認して急いで中に入った。
「採集は終ったの?後1時間もしないで日が暮れると思うよ。」
「うん。採集は終ったよ。でも、変なんだよ。魔力の塊がある…、居る?そう。居るんだよ。風穴の中に。」
「何々?それってお化け?妖怪?」
「あっ!もしかしたらお化けかも…。いや、妖怪かも!」
「じょ、冗談でしょ!嫌だよ…。幽霊ってお家の中に入ってくるんでしょう。」
「だから、魔力反応があるんだって!だから、幽霊じゃないと思うよ。強いて言えば妖怪じゃないかな。霊体じゃなくて物理体だと思うんだけど…、良く分からない。」
「何々?どうしたの?何か盛り上がっているけど何があったの?」
「玲君が幽霊がいるって言うの!」
「だから、言っていないって。幽霊じゃなくて、魔物でもない物。強いて言えば妖怪かなって言ってたんだ。」
「妖怪って、お伽噺か子どものしつけのための訓話みたいなものでしょう。」
「そういう物じゃなくてさ。魔力反応がある生き物?うーん、違うな…。魔力体かな。なんかさ。富士山って魔力が濃いと思わない?」
「そうねぇ…。確かに、魔力は、濃いかもしれないわね。結界の効果も他の所よりも強い気がしたし。」
「とにかく、魔力反応があった場所にみんなで言ってみない?きっと何か発見があると思うんだよね。」
「でも、せっかく料理の準備が終わったんだよ。結界を外してこのコテージを置いておくわけにもいかないし…。」
「それなら大丈夫。丁寧に収納するからさ。だから一緒に行ってみよう。」
「そうね。その魔力反応って言うのも確かめておいた方がいいよね。…、じゃあ、行きましょうか。」
「行きましょう!何か冒険しているって感じだよね。」
「う…うん。じゃあ、先に出て見張りをお願い、結界を解除したらすぐに収納するからさ。」
外から結界を操作する方法を見つけないとなんか不便だな。向こうみたいに魔力を使って遠隔操作できる物作れたら良いんだけど…。ゴーレムコアなんて地球には多分、存在しないし…。なんかいい方法ないかな。あっちに行った時、ルーサーさんに聞いてみようかな。錬金術式がもらえたら本田さんに作ってもらえるかもしれない。
本田さんと上村さんに先に出てもらった。ちゃんとサーチで周りに人がいないことは確認しているけど、目視確認をしてもらう。
「大丈夫!人眼はないみたいよ。」
上村さんの合図で結界を消して、外に出ると素早く、約束通り丁寧にコテージを収納した。
「こっちだよ。」
僕は二人をさっき魔力反応を確認した風穴の方に連れて行った。
「ここ。中に魔力反応があるの分かる?」
「何となくだけど、確かに魔力を感じるし、その魔力は動いているわね。」
「村上さん、土魔術でこの風穴の入り口を広げてくれないかな。風穴の中が崩れないように、丁寧にだよ。」
「了解。丁寧ね。なんか私がまるでガサツみたいに聞こえるんだけど…。まあ、良いか。丁寧についでに階段も付けちゃおうかな。」
そんなことを言いながら風穴の入り口を広げてくれた。オマケに階段も作っている。でもこの後ちゃんと元に戻してもらわないといけない。後々騒ぎになったら困るからね。
「今日は~。」
「ベル!よそんちにお邪魔しているわけじゃないんだから、今日はって…。」
ベルの挨拶に応えるように魔力の塊が僕たちの方に近づいてきた。害意や敵意は感じられない。
よく目を凝らしてみるとぼんやりと何かが居るのが分かる。分かるけどはっきりとは見えない。なんかもどかしい。
「えっ?どうしたの。もしかしてお腹が空いているのかな…?」
本田さんが魔力の塊と話をしているようだ。コミュニケーション取れているの…?そして、本田さんは自分のポケットから何かを取り出した。カロリー○○○。袋から取り出すと、ぼんやりとした魔力の塊の方に差し向けた。
えっ?そのカロリー○○○が、空間に吸い込まれて無くなっていった。食べられている?すると、ぼんやりとしていた魔力の塊が少しだけはっきりと見えるようになってきた。タヌキか?
「あなた、ムジナさん?なの。」
本田さんがそのタヌキと話している?
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