第370話 滑走路建設と粉砕サービス
宿に戻って、軽い物でも食べようかと食堂に行ったけど、宿の食堂は空いていなかった。どうしようもなく、部屋で時間を潰している時にクリーンの魔導書をコピーして、ロジャーに半額の金貨15枚を支払って僕もクリーンの魔術を習得してみた。
上手くいった。クリーンを使った時、魔力が減るのと同時にアイテムボックスの中に何か入ってくるような気がするけど何が入ってきたのか良く分からない。多分汚れを収納しているんだと思う。アイテムボックスは万能すぎる。
約束の正午になってロビーに降りて行くとトラック班の見習い鍛冶師のベルトルトが待っていた。
「今日は。僕が運転担当なんです。バスは、宿の前に止めていますから乗って下さい。」
「ベルトルトはバスの運転ができるようになったんだ。」
「はい。バス研究班で色々お手伝いしていましたし、出来上がったバスの移動は見習いの仕事だったので慣れたものです。」
ベルトルトは、工科学校にも通っている。多分まだ14歳だと思っていたけどバスの運転手をしているってことは、成人したのかな…。
「ねえ、ベルトルト。君って見習い鍛冶師だったよね。でもバスの運転をしてるってことは成人を過ぎたの?」
「え?俺はもう18歳ですよ。ドワーフ族なんで、族内の成人年齢になってないんです。だから、鍛冶師はまだ見習いで…。でも、王国内だったら成人してるんで運転手だって冒険者だってなれますよ。」
ドワーフ族にしては身長が高い方だったから気付かなかったけど、もう18歳なんだ。それにしてもドワーフ族の成人年齢って何歳なんだろう。
「はい。着きましたよ。到着です。皆さん降りて下さい。」
コーラルゴーレムの使役担当者も午後からの参加だったから一緒に乗っている。バス停には、魔力切れで宿に帰る土属性を持つ研究員たちが並んで待っていた。
「皆さん、頑張ってください。では、宿に戻ります。乗車の方は、気を付けてお乗りください。」
「アントニオ企画部長ーっ。石材はどこに置いたらいいですか?」
「おおお~っ。ちょっと待ってくれー。コーラルゴーレム部隊はそこの降り口から石化を始めてくれ。」
アントニオさんの指示に従ってゴーレム部隊が担当場所を割り振って作業を始めた。石化液が振りかけられると1~2分で固まって行く。だから、石化のスピードはとっても速い。どんどんと滑走路予定地の穴を固めて行っている。
「おう。最初の石材置き場は、この辺りだな。量は適当だ。目の前の穴を30cm程埋めることができる量だ。今の所アイテムボックスを持っている研究員は一人もいないからアイテムバッグに入れることができる量ずつをこの中に敷き詰めて行くことになる。融合強化しながらだからかなり魔力を使うんだ。熟練度が足りないからな。しかも、粉砕してから敷き詰めないといけないからな。頑張らせるぞ。とにかく、30m間隔で石材費と一盛りと砂一盛りずつ置いて行ってくれ。」
「どのくらいの大きさの石材が良いのかを言って下されば、最初の方は見本がてら粉砕した石材を置いて行きますよ。分割したり砕いたりするのは慣れていますから。」
「ロジャーはどう?」
「ストレージの中で粉砕するのは無理だけど、外に出したら粉砕はあっと言う間にできると思うぞ。少し埃っぽくなるのとうるさいとは思うが、それさえかまわなければそこそこの大きさにしておくことはできる。」
「ロジャーが大まかに砕いてくれたら、僕がそれを収納してほぼ同じくらいの大きさにするのは簡単だよ。それじゃあ、まず、30m間隔に石材と砂を置いて、その後、前の方のいくつかは細かい石材に加工しておくということで良いですか?」
「そうしてくれると助かる。それは、サービスか?お前たちには石材の代金しか払うことになってないと思うが…。」
「サービスで良いですよ。これからも研究所の皆さんには空港建設をやってもらわないといけませんから、最初の工事で嫌になってもらったら困るんです。僕たちが。」
「アハハハ。そうか、お前たちが困るのか。それじゃあ、サービスをお願いしようかな。宜しく頼む。」
僕とロジャーは、一本目の滑走路予定地の端から端までに収納してきた石材と砂を置いて行った。石材は、全体の6分の1強を置いたことになる。この量で足りれば、全体量は十分足りると思う。砂は、全体の3分の1近く減ってしまった。砂がなくなったら砂漠にでも採集に行かないといけない。
石材と砂を置き終わって、前方の3山の石材をロジャーが砕いて行った。凄い勢いで投げたりぶつけたりして砕いて行く。一山の粉砕には2分もかかっていないロジャーが次の山に移った後、僕が石材を収納して、ほぼ同じくらいの大きさにしていった。それにかかる時間も2分程だった。ロジャーはとっても雑にやっているように見えるけかなり揃った大きさにしていた。
前方の3つの石材を細かく砕くのにかかった時間は8分程。
「部長、終わりました。」
「おお。流石だな。お前たちが言うようにサービス程度の時間しかかかっていない。ありがとう。助かった。」
「土属性の滑走路建設班集まってくれ。今からストーンクワクマイヤーの魔術発動の説明をする。まず、石材と砂、それとあそこのタンクに入っている水をアイテムバッグの中に収納してくれ。全て同量だ。次に、アイテムバッグの中の素材を材料にして石と砂と水を融合させながら滑走路の穴の中に入れていくんだ。その呪文がストーンクワクマイヤーだ。30cm程穴の中に溜めることができたら強化とドライをかけるんだ。それで出来上がりだ。強化とドライに自信がなかったら俺に行ってくれ。俺が仕上げをする。まあ、最初の方は、必ず終了報告をしてくれ。チェックして必要なら追加のドライと強化をするからな。じゃあ、始めてくれ。」
18人ほどの滑走路班のメンバーが一斉に取り掛かった。作業用のアテムバッグは、朝の内に20個程追加していたから全員にいきわたっている。一人当たりの担当している範囲は狭いけれど、次々に石材が流し込まれてカチカチの滑走路の基礎が出来上がって行く。暫くの間、どんどんとできて行く滑走路の基礎を見ていたけど、何もすることがない僕たちはすぐに飽きてきた。
「ねえ、ロジャー。暇だから、クルーズ船の様子を見に言ってみない?ミラ姉たちは、買い物中だからどこに行ってるか分からないし、ファルコンウイングが護衛についているなら心配ないでしょう。王都の中だし。クルーズ船って面白そうじゃない?」
「そうだな。タブレットで連絡が付けば合流しても良いかもな。」
「じゃあ、連絡してみよう。」
僕はぬブレットを取り出して連絡を始めた。
「ドローンでクルーズ船を見位にっても良いかな?もし、問題なければ、現在位置を知らせて欲しい。シエンナに送信。」
『シエンナ:大丈夫です。今の所と何事もなく釣りや海の景色を堪能しています。現在位置は港の南西おそよ50kmの地点。釣りをしながら港に向かっています』
『アンディー:俺は、1mのパンサーフィッシュを釣り上げたぞ。今の所一番の大物を釣り上げたのは、所長の息子さんだ。1m20cmのキングツーナって言うのを釣り上げた。今晩料理してもらうらしいから楽しみにしていてくれ』
なんかアンディーも楽しそうだ。
「部長。今から、クルーズ船の所に行ってきます。何か応援の必要があったらタブレットで連絡してきて下さい。」
「おっ、おおう。了解だ。観光なら楽しんできてくれ。サービス、助かったぞ。」
「はい。行ってきます。」
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