第368話 ビスナ観光準備?

 朝だ。所長から会議室を借りたから朝食後に集まるように言われている。集まるの研究員と僕たちアグリケートメンバーだけだ。今は、いつも通りの朝食の時間だ。ミラ姉はいつも通り幸せそうに様々なメニューを口に運んでいる。ここの宿も朝御飯は食べ放題メニューだ。お酒は出ないけど、充実している。まあ、朝ご飯だとその後普通は出かけるから食べ放題にしても無茶な食べ方をする人が少ないというのもあるのだろう。流石に、むミラ姉の食べ方を普通の食べ方とは言わないと思う。でも、幸せそうだから良いと思う。


 2時間程時間をかけて朝食を終えて、会議室に行くと既にほとんどのメンバーがそろっていた。


「よし。これで全員揃ったな。今から、空港建設のスケジュールと王宮との取引、家族の観光計画を確認していく。では、ロイド研究企画部長兼空港建設責任者に空港建設の日程と仕事分担を発表してもらうから聞いておくように。アントニオ、頼む。」


「空港建設は2滑走路の建設する。舗装の厚みは1mだ。まず、1mの深さの穴を土魔術で地盤の強度を上げる様に強化魔術をかけながら掘る。飛行機・空港班の土属性を持つ者は全員それにかかる。空港班以外の土属性魔術を持つ者もだ。全員の属性は把握しているが、新たに土属性を発現した者も参加してくれ。アンディーは除くがな。穴掘りと土魔術による強化が終わったら、コーラルゴーレムの石化液でさらにそこを固める。ここまでしておけば、臨時滑走路と言えど10年近く使用することができる物になるだろう。コーラルゴーレムはモノレール班が持っている物と空港班が持っている物を全て使うから使役している研究員は今日の午後から工事参加してくれ。ここまでで質問がある物はいるか?」


「すみません。モノレール班のコーラルゴーレムを使役しているローランドです。午後からどこに行けば良いのでしょうか?空港の場所を知らないのですが…。」


「おう、そうだった。空港建築予定地をまだ発表していなかったな。空港予定地は、王都の北門からまっすぐ2kmほど進んだところだ。そこに、45mの幅で3000mの滑走路を建設する。現場までは、宿からバスで結んでもらう。運転はトラック班とバス班に担当してもらうことになっている。移動用のトラックは観光用も含めてええっと何台持ってきているんだ?」


「それは、バス班から後ほど答えさせてもらいます。まずは、話を進めて下さい。」


「そうだな。場所については今言った通りだ。他に質問はないか?」


「はい。資材置き場について質問です。」


「おう、どうしたレイ。資材ということは、石材のことか?」


「はい。」


「それは、現場に行って決めたいと思う。レイの提案が通って滑走路はL字に設置されることになった。風上になりやすい方が合流地点だ。その方向も現場で確認してもらうことになっているからその設置場所を確認して置き場を決めてくれ。」


「了解しました。それでは、僕たちは何時くらいに飛行場に行ったら良いですか?」


「石材を持っているのは、誰だ?」


「僕とロジャーです。」


「二人だけなら昼からでも良いぞ。お前たちアグリゲートには、他のお願いもしないといけないからな。」


「そのお願いと言うのは一体何なのでしょうか?」


「ちょっと待ってくれ。滑走路建設についてもう少し詰めて話しておきたいからな。」


「はい。そちらの方からしてもらって大丈夫です。」


 ミラ姉も今回はおとなしく引き下がった。


「それでは、その後の仕事について確認していく。穴の補強が終わり次第石材を使用した滑走路の舗装を行うことになる。40cmずつ2回舗装し、最後に30cmの厚みで舗装する。水はけをよくする為地面から10cmは高くしないといけないからだ。これに参加するのは、土属性を持つ者の内、ストーンクワクマイヤーを使用できる者だけだ。ストーンクワクマイヤーを使えない者は、石材の粉砕を手伝ってくれ。1cm以下の大きさの小石にしてもらわないといけないから大変だと思うがよろしく頼む。」


「その、ストーンクワクマイヤーを使用できるのは今の所と企画部長だけなんでしょう。そんなに簡単にできるようになる物なのですか?」


「そうさなあ。やってみないと分からない。兎に角全員やってもらう。直ぐにできなくても、石材の粉砕やマジックバッグを使った石材の移動なんかをやっていたら使えるようになるかもしれないぞ。期待している。」


「で、そのマジックバッグはいくつ位あるのですか?」


「おう。これに関しては、レイが作った物の方が良いようだからな。研究室が持っているのは10個だけだ。金さえ払えば作ってくれると思うが、使ってみてアイテムボックスのスキルが生えてきたらラッキーと思って使わなくなったバッグを他の物に渡してくれ。兎に角、レイやアンディーの力は借りずに俺たちだけで1週間で終わらせるぞ。」


 アントニオ企画部長の鼻息は荒い。でも、僕たちもそうしてもらいたい。冒険者を止めるつもりは全くない。僕たちの冒険者としての歩みは始まったばかりだ。そして、研究所主体の仮滑走路建設は、今日始まったばかりだ。試行錯誤は許される。それが、この研究所の最大の特徴だ。まあ、実験しながら仕事を請け負っているなんて普通じゃ考えられないかもしれないけど、その技術が誰も知らない物だから試行錯誤していることさえ気付かれない。


「次に、工事に関わらない研究所員の動きについて確認しておく。最初の3日間は、王宮魔術師と王宮魔術研究所と魔術研究会に参加してもらう。主に、研究所で作成した魔道具の販売説明会というものになるだろう。トラック・バス・モノレール・カジュアルバッグ・家庭用魔道具これは、冷蔵冷凍魔道具・給湯魔道具・魔道コンロなどの溶岩製品だ。家庭用魔道具については、研究が終了しているから錬金・精錬チームで担当してくれ。営業はしなくていいぞ。全て国営商会が担当する。後は、今日から研究会終了までの同行者の観光についてだ。これは、所長から説明があるから、この会議終了後、同行者にはそれぞれが伝えるようにしてくれ。滑走路の建設現場には、10時に宿の前に回したバスで向かうから、第一陣は準備をしてロビーに集合する用にしておいてくれ。」


「では、私から同行者のここ3日間の動きについて伝えます。まずは、王都観光とクルージングのグループに分かれます。クルージングはシエンナさんに操縦をお願いして最大人数は20名です。護衛は、大樹の誓とアンディー殿にお願いしますね。それから、こちらは女性陣中心にかなりの人数になるかもしれませんがビスナ王都観光、多分ショッピング中心だと思います。アメリア殿とファルコンウィングに護衛をお願いします。バス班とトラック班のドライバー担当者は、運転の担当割を作ったら担当以外は、観光に参加しても構わないですよ。それから、申し訳ないですが、ルーサー様は、私と一緒に王室との懇親会に参加お願いします。ヘンリーさんもどうこう願って宜しいですか?」


「ちょっと待ってくれ。どうして儂たちなのだ?主席研究員は、儂とレイ殿ということになっていたはずだが?」


「レイ様は、こちらでは冒険者として登録済みなのです。そんなにたくさんの立場で紹介すると後々面倒なことになると思いまして外させてもらっています。」


「まあ、そう言うことならしようがないか…。儂とヘンリーで参加させてもらう。懇親会などと言っても今後の道具のやり取りについての要望を聞く会なのであろう。国営商会に任せておけばよいのではないか?」


「エヴァンズ財務卿も同席なさいますから、そのような話はそちらが引き受けて下さると思いますよ。懇親会は11時から王宮で開かれる予定です。9時半には王宮からの迎えが来ると思いますから準備をお願いいたします。」


「ねえ、ロジャー、昼まで時間が空いちゃったね。どうする?」


「ジェイソン様、俺たち昼まで時間が空いたんだけど王都観光していても良いかな?」


「はい?ええっ、お二人なら護衛の必要もないでしょうから、ご自由に過ごしていただいて結構ですよ。そろそろ、色々な店も開きますし、市場の方も賑わう時間になるでしょうからね。」


「有難うございます。じゃあ、魔道具屋に行ってみようか。」


「おう。前回は、砂漠の町で回って面白そうなものがあったからな。今回も回ってみよう。そう言えば、ミラ姉たちは、どこに行くつもりなんだろうな。それに、昨日の晩餐会では途中で姿が見えなくなったけどどこに行ってたんだろう。後で聞いてみるか?」


「そうだね。それに、僕たちが知らない場所で面白そうな場所をしているかもしれないからそれも聞いてみようよ。」


 ミラ姉は、シエンナを伴って所長と話をしていた。観光クルーズの行先についてだったんだと思うけど、地元の冒険者に観光クルーズの案内を頼むということで話が付いたらしい。その手続きは、研究所と言うか国営商会の人がしてくれて、10時30分に港に行けば船着き場なんかを教えてくれて、案内の冒険者もそこに来てくれるということだった。至れり尽くせりだ。


 ミラ姉たちの話が終わってロジャーと一緒に話に行った。


「ミラ姉、お早う。」


「えっ?どうしたの。さっき一緒にご飯食べたじゃない。」


「ああ、そうだけど、聞きたいことがあってさ。」


「何?改まって聞きたいことなんて。」


「あのさ、今日午前中時間が空いてロジャーと二人で王都観光をしようと思うんだけど、どこか面白そうなところを知らないかなって思ったのと昨日はどこに行ってたのって聞きたくてさ。」


「面白そうなところって言ったら、前装飾品や洋服を見にお貴族様エリアのお店に行った時に、魔法書の店を見つけたわよ。ロジャーって放出系の魔術を持ってないから出来たら欲しいなんて言ってたでしょう。もしかしたら無属性の放出系魔法か魔術に関する本があるかもしれないわよ。その他には、貴族エリアの魔道具屋には、高級な物がいくつもあるって聞いたけど、何があるかは知らないわ。それに昨日何処に行ってたかだったわね。それは、内緒…。なんて…、嘘。テレーザ様のあっ、ヴィンターハルター卿の所よ。晩餐会でお会いして、自宅にご招待されたの。まあ、お忘れになっていた化粧品と砦で買ったてさしあげた高級化粧品を持って行っただけなんだけど…。とっても歓迎されて、晩餐会で食事を食べた後だったのに、美味しかったわ。甘味が沢山準備してあったの。」


「そうなんだ。美味しい甘味が食べれて良かったね。でさ、ミラ姉たちは、王都観光ってどこに行くの?」


「所長に聞いたんだけど、二つに分かれるみたい。貴族外のお店に行くグループとそれぞれ持って来た自転車で王都内を色々回るグループ。こっちも冒険者に案内を頼むことにしてもらったわ。そうそう、マウンテンバイクじゃなくていいから街乗り用の自転車を10台くらい作ってくれない。アントニオ企画部長が企画設計したシティーサイクルって言うのがあるらしいんだけど、それを借りて精錬コピーできないかな。王都じゃ銀貨3枚で販売しているらしいわ。依頼した冒険者を走らせるのも悪い気がして。それとね。カジュアルマジックバッグも荷馬車半分容量で良いから30個くらい作ってよ。金貨2枚で販売できるくらいの質の物。これもアントニオ企画部長にコピー元を借りてあげるから。」


「現物があればコピーできると思うよ。作りもそんなに複雑じゃないから時間もそんなにかからないと思う。現物が手に入ったら部屋まで持ってきてくれる?」


「了解。シティーサイクル10台とカジュアルマジックバッグ30個だね。現物の用意頼んだよ。」


 部屋に戻って10分程したらミラ姉たちが自転車とバッグの現物を持ってきてくれた。


「ごめん。観光班の皆さんに注文を取ったら自転車は10台のままでいいんだけどカジュアルマジックバッグが50個になっちゃった。予備も含めて55個作ってくれない。お願い。」


「はーい。マジックバッグと自転車いくらで販売するの?」


「案内の冒険者には貸し出すだけよ。お金は取らないわ。販売は自転車銀貨3枚でバッグは金貨2枚ね。ウッドグレン王都じゃあ、カジュアルマジックバッグは、一番安い物で金貨20枚くらいみたい。でも、今回作ってもらうのは、もっと普段使いのバッグだから金貨2枚で良いわよね。」


 今回作るのは、出し入れ口がとっても小さい。ある程度魔力操作が上手でないと大きな物は到底入れられない肩から掛けることができるポーチに近い物だ。それでも、そんなにたくさんの人が欲しいと言っているのなら頑張って作る。


 30分近くかけて、シティー自転車とポーチを作り上げてミラ姉に渡した。さあ、僕たちも町に出かけよう。



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