第363話 アグリゲートの反省会

 夕食は、アグリゲートメンバー全員が一緒に取った。今日の反省会を兼ねてだ。


「ツナマンダーは、強かった。これって言う弱点も見つけられなかったし、ドローンがないパーティーだと、津波って言う魔法もあるから厄介だよね。」


「津波って何だ?」


 僕が、冒険者ギルドで調べて来たことを話すと、ロジャーが聞いてきた。


「津波って言うのは、高さが20m程もある高い波みたいだよ、それを岸に向かって放つらしいんだ。その威力は凄まじくて、もしも、湖岸に村や町があったら全滅してしまうほどらしいんだ。ただ、ツナマンダーは、川や湖にしか現れないから大きな被害が出ていないだけで、海に現れたら大変なことになるって書いてあった。」


「津波って言う魔法も持ってるんだ。ドローンに乗り換えていて正解だったんだな。」


「そうね。水属性っぽかったし、もしかしたら水が湧き出てくるんじゃないかなって思ったからドローンに乗り換えたんだけど、ドローン以外で対策するならどんな方法があるんでしょうね。」


「入り口から1km程の所からツナマンダーが現れたから、そのあたりを氷魔術か強力な炎の魔術で攻撃するって言うのはどうだ。水がなければ、津波も起こすことができないんだろう?」


 アンディーのアイデアだけど、試してみる価値はある案だと思う。


「次に試してみようよ。安全を担保するためにドローンに乗って出現地点上空から攻撃するってしたら、案外あっと言う間に討伐できるかもしれないぞ。」


「俺も、ヒューイの案に賛成だ。出現場所に物理攻撃だけじゃなく様々な属性の攻撃をしてみて有効な魔術を調べてみるのも良いかもしれない。」


「じゃあ、明日も森のダンジョンに潜る?」


 ミラ姉がみんなに聞いているけど、反応は今一薄い。確かに今日だけで各パーティー金貨を100枚ずつ稼いでいる。一人頭にしても金貨20枚だ。稼ぎとしては、一月ゆっくり暮らすことができる金額なのだからそんなに毎日ダンジョンに潜る必要もない。アグリゲートの運営費は、月に金貨百枚程度。ほとんどがメイドや執事、コックの皆さんに支払う人件費だ。


 運営費に関しては、メインパーティーの僕たちが金貨30枚。他の二つが金貨20枚を負担してくれている。でも、家賃として金貨5枚ずつを僕たちに支払ってくれているから実質僕たちの支払いが一番少ない。アグリゲートへの依頼は、毎月1つか二つは受けている。それぞれ、パイロット育成やダンジョン調査など稼ぎが大きい物が多く、各パーティーかなり貯金が増えている状態だ。


「アメリアさん。明日からしばらくは、パーティーで活動しないか?アグリゲートでの活動だとどうしても自分たちがやりたいことよりも成果が中心になってしまうからな。それに、ここ2カ月ほどアグリゲートへの依頼ばかりでパーティーでの活動ができていまいんだよ。勿論、俺たちがSランクになったのはアグリゲートありきなのは十分、分かっている。装備や移動手段もアグリゲートで準備してもらったものばかりだしな。だから、ここで一度自分たちの実力を確認しておきたいと思うんだ。」


「俺たちも、そう思ってたんだ。それに、俺たちが今まで踏破を目指していたダンジョンもあるんでな。王都の近くのダンジョンなんだが、今の装備を使わせてもらえば、最深まで踏破出来る気がするんだ。未踏破ダンジョンの中では、比較的浅いダンジョンだからな。」


 ファルコンウイングは、僕たちの先輩パーティーだ。テーマにしているダンジョンがあるのは何の不思議もない。僕たちがDランクパーティーになりたての頃には、Cランクパーティーとして活躍していたパーティーなのだから。


「了解よ。この後ビスナ王国からの空港建設と研究所からの観光警護の依頼が来るはずだからそれまでアグリゲートでの活動はお休みにしましょう。アグリゲートでダンジョンに挑めばそこそこの成果を出せるのは十分わかったからね。」


「そう言ってくれるとありがたい。俺たちは、初めて挑んだロックバレーのダンジョンを探索しようと思うが良いか?稼ぎもよさそうだし、まだ、10階層も踏破されてないからな。多分エリアボスとの戦いになると思うんだ。それに挑戦させてもらえないか?」


 大樹の誓は、ロックバレーのダンジョン攻略に向かうということだ。


「俺たちは、王都近くにある鉱山ダンジョンに潜ろうと思う。13階層のゴーレム階層で引っかかっていたんだが、ゴーレムとの戦い方は十分経験したからな。今なら楽勝だ。鉱山ダンジョンは、最深踏破階層が41階層ということだったから、まずは、ゴーレム階層を踏破して、転送の魔石を購入しながら40階層まで進んでみようと思う。」


「久しぶりの嘆きの鉱山ね。ゴーレム階層でかなり苦戦していたからリベンジね。」


 アンジーが気合を入れていた。


「エスは、借りたままで良いか?大樹の誓は、エスが必要なんじゃないか?」


ドローが大樹の誓を心配して聞いてきた。


「大樹の誓用の6人乗りエスを作ろうか?少し小型にして小回りが利くようにして…。どうせなら水陸両用車両にしてみようか。」


「レイ。そんな乗り物、直ぐに作ることができるのか?」


「うん!玲から資料が送られてきていたからね。少しだけ乗り心地が悪くなっても良いなら直ぐに作ることができると思うよ。」


 今考えているのは、2輪8足で、水上移動はスクリューで行うタイプの水陸両用車だ。水上では、基本デッキの上で活動することになるけど、オットーの様に内部から階段で移動できるつくりにするつもりだ。車輪を接地させる分乗り心地は悪くなるかもしれないけど、8足でコントロールできるからかなりの悪路でも移動は可能だと思う。どの程度の乗り心地になるかははっきりと分からないけど、ゴーレムバスと同様の結界系のサスペンションを使えば、無茶苦茶乗り心地が悪い物にはならないと思う。


「アンディー、手伝ってくれる?」


「おお。良いぞ。どうせなら、車輪にマギモーターを使えば八足で進むよりも高速移動が可能になるかもしれないぞ。ルーサーさんに車輪型のマギモーターを作ってもらって、それを結界サスペンションで固定するのはどうだ?」


「そうすれば、8足じゃなくて、4足でも十分になるね。スピードも含めて。」


「じゃあ、明日は、水陸両用車づくりをするよ。ファルコンウイングは、明日から嘆きの鉱山に向かう?午前中でできるように頑張ってみるけど、エスがあれば、しばらくは大丈夫だしね。」


「水陸両用車ができたらタブレットで連絡してくれ。データで送ってくれたらダンジョンを出て届くはずだから。ダンジョン内に泊まることは無いと思うから大丈夫だ。もしも出来たら夜にでもドローが取りにくることにする。」


「分かった。じゃあ、明日は、僕たちのエスを大樹に貸し出しておこうか?」


「そうだな。いや、オットーを貸してくれないか?暗闇ダンジョンはオットーの方が踏破しやすそうだから。通れないところは、マウンテンバイクを使うよ。オットーの収納は、シェリーかヴェルができると思うからな。魔力を抜いておいてくれないか?」


「シエンナ、オットーの魔力を抜いておいてくれる?」


「じゃあ、私たちは、エスで森のダンジョンに行きましょうか。14階層でゴーレムコアを採集すれば、飛行機の製造にも役に立つでしょう。ゴーレムタブレットもたくさん作らないといけないかもしれないからゴーレムコアはいくつあっても足りないわ。」


 アンディーと僕は水陸両用車づくり、他はそれぞれダンジョン探索に行くことになり、夕食の反省会を終わった。

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