第359話 アグリゲートの日常(前編)

 朝御飯を食べた後、アグリゲート全員で森のダンジョンに向かう。今日は、ゴーレムコアの採集日だ。まず、エスに乗ってガーディアンの間に向かうグループとエス2号で3階でゴーレムコアを採集するグループに分かれる。ガーディアンの間でのコア採集も含めて3階でコアを採集する時間は20分程だ。そのくらいの時間でガーディアンの間でコアを20個集め、3階で60個程採集できる。


 一度入り口に戻って転送の間に入って10階に入る。そこで、基本、二人組になって転送の魔石集めをする。アグリゲート全体で9個集められることになる。一人でワイバーンを倒すのは、ロジャーとアンディー、そしてシエンナだ。シエンナは一人って言ってもゴーレムたちを引き連れて行っているから実質一人ではない。


 ドローとアンジーとボフさんも一人で狩りたいと言っている。今日は、ヒューブさんが溶岩弾を試したいからといってシェリーさんと二人で入ったけど実質一人で片付けたと言っていた。


 同様に、実質一人で片付けたのは、ルーさん。アローレインのアローをマジックバッグの中に入れた槍に変えて発出して一瞬で終わらせたらしい。後から槍を拾うのが大変だったとぼやいていたのはオーさんだ。


 僕とヴェルさん、ミラ姉とドローさんがペアを組んで転送の魔石を手に入れた。転送の魔石以外に、アグリゲート全体で、コテージが1棟とマジックバッグが2個手に入った。効率がいい。ギルドで引き取ってもらっても金貨数十枚にはなると思う。転送の魔石を除いてだ。転送の魔石は、相変わらず金貨10枚で買い取ってもらえるらしい。


 転送の魔石を手に入れたら、それから二手に分かれる。僕たちは、コーラルゴーレムのコア採集だ。ガーディアン級のコアもたくさん欲しい。大樹とファルコンウイングには、ダンジョン探索を進めてもらうことにした。一番欲しい素材はセイレーンの魔石だ。多分このダンジョンの深層階の階層ボスなんだと思う。初回限定サービスで浅い階に出てきたらしかった。


 初回限定サービスって言うのは良く分からないのだけれど、長い間見つからなかったダンジョンで見られる現象らしい。本来なら魔素が薄く、そんなに高ランクの魔物が発生するはずのない浅い階層に深層階層の魔物が出現する現象。誰も侵入せず、澱んでしまった魔力がもたらす現象であろうという説明がギルドにあった本の中に書いてあった。


 ファルコンウイングと大樹の誓の合同チームなら一度戦ったことがあるセイレーンくらいなら余裕だろうということで、先の階層探索をお願いする。


 僕たちは、洞窟に入ると階段を探した。階段から島に出て、フィートで海を渡って階層入り口に行くためだ。カニが出てくると嬉しかった。ドロップする蟹の肉が半端なく美味しかったからだ。カニだけは、凍らすか、焼くかどちらかで倒した。まあ、どっちで倒してもダンジョンに吸収されてからドロップ品が出てくるから同じなのかも知れないけど、美味しいカニの肉を手に入れるためには細心の注意を払うべきだ。


 20分程洞窟の中をエスで走ると扉が見えた。モンスターハウスのはずだ。中には、たくさんの鎧半魚人がいるはずだ。


「この前どうやって突破したっけ?」


「力業でいましょう。ドロップ品も欲しい物ではないですから扉を開けて一目散作戦です。」


「それなら、シエンナにお任せだね。」


「はい。お任せください。」


 ゴーレムハンドで扉を開くと反対側の扉まで群がる鎧半魚人を押しのけて進んでいった。扉を開き、外に出ると、アンディーとロジャーが追いすがってくる半魚人たちに向かって後ろの魔術発出口から魔石ライフルを出し、最大火力のファイヤボールを連射し始めた。ファイヤボールを避けて半魚人が下がった瞬間にゴーレムハンドを後ろに回して扉を閉めた。


「ソーディーとガーディーを外に出していたらもっと楽だったですね。」


 それから、階段を上って島に上陸だ。島の階段前には、アーマードライノが待ち構えていた。こいつらは、急にコースを変えることができない。だから攻撃を避けるのは簡単なんだけど、とっても硬いから正面から攻撃してもちっともダメージが通らないっていう魔物だ。


「正面の振動のみに反応するんだったよね。兎に角、アーマードライノの正面に入らないことだよ。横から頭を攻撃したら良いんだからね。」


 気付かれないで、フィートを出すことが出れば、そのまま離陸で切るかもしれない。今は、階段の方に頭を向けている魔物が居ないことが幸いだ。でも、少しでも階段から離れるとどれか氏らの正面になってしまうようだ。


「シエンナ。エスを降りよう。小回りの利くマウンテンバイクで奴らを誘導して一匹ずつ仕留めていくことにしよう。」


「レイは、私の後ろに乗りなさい。ゴーレムバイクじゃあ、安全運転すぎてアーマードライノを躱すことができないかもしれないわ。」


「了解。宜しくお願いします。」


 僕は、ミラ姉の後ろに乗せてもらう子にした。4台のマウンテンバイクで階段から散会していく。僕は後ろの席で、立ちあがって魔石ライフルを構えた。アーマードライノ-亀の横に位置取りをできたらすぐにライフルを打つことができるようにしている。


「左側の亀を狙撃して!」


「了解!」


 最大量の魔力を流し込み魔石ライフルを撃った。亀の頭が吹き飛ばされる。


「次、行くわよ。」


 僕らの方に向かって来て突進してくる亀の方にマウンテンバイクを走らせると直前で右に避けて亀と並走を始めた。


「レイ!頭を打ちぬいて。」


「了解。」


 さっきと同様に最大出力の魔力を注ぎこんでファイヤボールで頭を吹き飛ばした。


「次、行くわよ。」


 次は、僕たちの右側で草を食べている亀に向かってマウンテンバイクを進めて行った。正面にならない様に慎重に移動する。後、30m、更に近づくる


 ミラ姉がハンドサインで右手の合図を送ってきた。音をたてないようにして魔力を込め引き金を引いた。でも、小さな音に反応した亀は、頭を僕たちの方に向けた。最強のファイヤボールは、亀の角に弾かれてしまった。


「まずい。移動するわよ。」


 頭を動かして振動で僕たちの場所を掴もうとする亀、亀の正面に入らない様に横に移動していくミラ姉。突然僕たちを追うことを止め、突進し始めた。その先に、シエンナがいる。


 シエンナは、別の亀に近づこうとしていて僕たちの方を見ていない。


 ミラ姉が移動方向を変えて突進していく亀を追いかけた。シエンナまで、後50m程しかない。シエンナも気が付いたようだ。でも慌てる様子はなかった。ハンドルを突進する亀の方に向けると僕たちの反対サイドに避けるという合図を目で送って走り出した。


 僕たちが亀に追いつくのとシエンナが亀の横をすり抜けるのがほぼ同時だった。避けられてもさらに直進する亀に並走しながら、銃口を亀の頭に向ける。


 今度こそ、最大火力のファイヤボールが亀の頭を吹き飛ばした。そのまま、さっきシエンナが狙っていた亀の方に近づいて行った。そして、今度こそ気付かれる前に、頭を吹き飛ばすことに成功した。


 残りの亀は…。この島の亀の殲滅は終ったようだ。全ての魔物がダンジョンに吸い込まれていって魔石が現れた。Cランクの魔物の魔石だ。ここに落ちている12個だけでも金貨10枚以上で買い取ってもらえる価値があるらしい。つい最近までは、魔石がだぶついていて、Cランクの魔石だと銀貨2枚程度になっていたんだけど。国外でかなり売りさばいたと言っていたから、少し落ち着いてきたはずだ。


 それから、亀って言ってるけど本当は亀の魔物じゃないらしい。見た目が少し亀ににしてるからそう呼んでいるだけだ。


 それでも、苦労の割には価値が低い。かなり命がけの狩りだと思うんだけど…。


 魔石を拾ってフィートに乗り換えて海を渡ることにする。サーチで階層入り口を探っておく。シエンナは、どっちに階層入り口があるか分かってるようだったけど念のためだ。


 階層入り口から階段を上ると草原と森の階層になる。ここからは、オットーに乗り換えてひたすら階層入り口に向かって走ることになる。ガーディアンの間からの入り口に向かって走るのだけど、デッキからの狩りは今日はしないことにした。オットーの中で優雅に過ごす。お茶とお菓子を出して休憩することにした。シエンナもオットーを自動運転にして一緒にティータイムを楽しんでいる。1時間程走ると、ガーディアンの間の入り口に到着した。


 その後、コーラルゴーレムのガーディアンの間に入った。というか、階層入り口に入るとガーディアンの間の入り口に飛ばされるんだ。そこで、コアを回収して、下の階層入り口の扉を開けるかどうか迷っているところだ。


「ガーディアンの間から下の階層に行くためには、6つもコアを使わないといけないよね。それなら、このまま上まで上がってもう一度入り口から転送の魔石で10階に飛んだ方が良いんじゃないかな。」


「そうね。それなら、これからは、ゴーレム階層に行かないで帰りに3階層でコアを手に入れた方が時間のロスがなくなるわね。」


 それからは、エスで入りぐまで戻って転送の魔石で10階層まで飛んだ。転送の間から一度外に出てアンディー・ロジャー・シエンナがソロで僕とミラ姉がペアでワイバーンを倒して転送の魔石を手に入れた。ドロップ品はシエンナの時に落ちてきたアイテムバッグだけだったようだ。


 大樹の誓とファルコンウイング下に向かって行ってから既に1時間半は経っている。新しい階層にもう届いているかどうか分からないけど、今から追いかけることにする。今は、タブレットでの連絡は付かない。階層が近いと着くこともあるから少なくとも同じ階層にはいないということだけは分かる。

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