第356話 ビスナ来訪

 今朝は、アグリケートハウスをでて研究所に着くと直ぐにルーサーさんの研究室を訪れた。FF機の材料を渡すためだ。ルーサーさんとは昨日の内に研究所用のFF機をどうするか話し合った。結論は、ヘンリーさんをパイロットに養成するということで落ち着いた。そうすれば、今後、色々な時に安心だろうということになった。冒険者ではないヘンリーさんなら僕たちと一緒に依頼で研究所を離れることもないからだ。


 格納庫は、砦の滑走路横に建築することにする。勿論空港としての機能も持たせるため、その空港建物も冬が明けた後作る予定だ。ただし、格納庫は空港建築よりも先に作ることにする。ルーサーさんならFF機の収納も可能だけど、飛行機も製造しないといけないから、そんなに余裕もないそうだ。出来上がったFF機を置いてい置く場所としても格納庫はあった方が良い。


 朝、ルーサーさんとの打ち合わせを終えて、研究室に戻ると、伝話がなっていた。


「はい。こちらレイです。」


「こちらは、所長のジェイソンです。おはようございます。先ほどから伝話をかけていたのですかが、今忙しいですか?」


「お早うございます。いえ、先ほどまでルーサーさんの所に行っていたものですから、研究室には今戻ったところです。忙しいという訳ではありませんよ。」


「では、昨日のFF機のレンタルの件ですが、貸出期日について不都合な日などございましたら教えて頂けたらと思っているのですが、どうでしょうか?」


「そのことなのですが、ルーサー様とお話をして、研究所用のFF機を1機、製造しておこうということになりました。マンボウ初号機とFF0号機は王室に献上しているので、この後製造した物になりますが、それを研究所用にして、パイロットにはヘンリーさんになってもらったらどうかということになりました。」


「その費用はいくらくらいになるでしょうか?」


「え?お給料以外に支払って下さるのですか?材料費ならAランクの魔石とガーディアン級のコアが6個程必要ですから金貨何枚くらいになるでしょうか?冒険者ギルドに伝話して今の相場を聞いてみて下さい。その他に、金属素材とシートになんかに使う魔物の素材の代金も払っていただけるなら、魔石とコアの代金を除いて金貨10枚程頂けると相場通りかなと思います。」


「魔石の代金が金貨20枚程としても、そんなに安くしてもらって良いのか?企画部緒に聞いた所、飛行機は金貨10万枚から金貨12万枚で引き渡しているのではなかったか?」


「そうなんですね。それは、アントニオ企画部長や所長にお任せしていますから、でも、給料もたくさん頂ているので、気になさらなくていいと思いますよ。ルーサー様も何言っておられませんでした。」


「とにかく、材料費は、相場と言わず、まとめて金貨100枚をお渡しするから、ルーサー様と分けてくれ。それに、お二方の研究室にはボーナスということで金貨10万枚づつを支払わせてもらう。少額で申し訳ないが、話し合って折半してもらいたい。」


「それでしたら、パイロットは、ヘンリーさんお願いするので、操縦を任せた日にはいくらか手当を支払っていただいて宜しいですか?それから、副操縦士と助手をして頂ける方を探してもらえると一緒に訓練できるのですが、どなたか心当たりの方はいらっしゃいませんか?」


「副操縦士と助手ですか…。それでしたら、希望者を募ってみましょう。助手は、副操縦士と兼任でも良いのでしょう?とにかく二人必要だということですよね。」


「そうですね。ヘンリーさんが何かの都合で操縦できない時に代わりに操縦してもらいこともあるかもしれないので、副操縦士と助手の候補は、最低でも4人ほどいてくれると安心だと思います。まずは、ビスナ王国に皆さんを連れて行くまでに最低限の訓練を終わらせてしまいます。それら、飛行機を収める1月後までにパイロット訓練を終わらせてしまおうと思いますからね。できるだけ早く募集をお願いしますね。」


「了解しました。今日にでも募集を貼りだそうと思います。」


 所長と話をした後、僕たちは、工房に向かった。フォレスポインター機を製造するためだ。昨日の内に、細かい部品は精錬しておいたから、機体の精錬をしてコントロールコアや調整コアを各パーツに取り付けたり配線して操縦席からコントロールできるようにしないといけない。それに、これだけ大規模になるとイメージを細かいところまでしっかりと作ることができないため、精錬コピー1回で完成させるなんてことはできない。


 機体を精錬した後、必要なパーツをチェックしていってもらいながらない物はパーツの精錬を行い。出来上がったら機体と同時に一旦収納して、パーツをセッティングしては、きちんとできているかをチェックするという作業を繰り返して完成させていく。フォレスポインター機はもう何機も作っているから、飛行機製造班のメンバーもかなり慣れてきた。飛行機製造は、毎日行っているわけではないので、臨時的に招集されるけど、チームワークはばっちりだ。


 ルーサーさんに聞いた所、FF機も似たような製造過程を取っているそうだ。只、必要な精錬部品は、すでにできているから、その部品に錬金魔術で作った部品を足して組み上げるだけだ。その為、機体部分は、割とすぐにできるそうだ。その後、細かな部品を取り付けるのは、FF機も同様で、その組み立てにはチームで関わってもらうことになる。フォレスポインター機と同じメンバーが組み立てに当たると言っていた。


 今日は、僕の方が先に工房に入ってしまったから、ルーサーさんは研究室で錬金部品を製造しているようだ。でも、フォレスポインター機は、1機作ればいいだけだから、今日中には終わると思う。FF機がこれから主流になると思うけど、どの飛行機でも、僕とルーサーさんの他にもシエンナがいないと飛ばせる飛行機にならないのが頭が痛い所だ。


 早く錬金釜や精錬窯を完成させないといけないのと、シエンナにしてもらっているゴーレムコアの情報コピーや送信ができる魔道具を作らないといけない。もしかするとそれが一番難しいかもしれない。


 午前中の作業の流れができた頃、ミラ姉たちがビスナ王国の使節団の皆さんを王都から連れてきた。飛行場には、ゴーレムバスを迎えに送った。歩けない距離ではないのだけれど、研究所で作っている製品の紹介がてらだ。所長と企画部長は勿論、僕とルーサーさんもお迎えに着いて行った。


「研究所にようこそいらして下さいました。フォレス・ポイント研究所、通称森の賢者の研究の所長を務めさせていただいておりますジェイソン・ブラウンと申します。そして、本研究所の研究企画を担当するアントニオ・ロイドです。隣に居りますのが筆頭錬金魔術師ルーサー・ノートン、筆頭精錬魔術師のレイでございます。」


「初めまして、私共はビスナ王国から交易使節団として訪問させて頂ております。本日は、様々な卓越した魔道具を輩出されております物賢者の研究所で有益な話し合いができることを期待しております。私は、使節団団長エアハルト・ゴットフリート・ゲルツ。そして、こちらに居りますのが外務交易担当のテレーザ・ゲルトルート・ヴィンターハルターです。」


「ゲルツ卿とヴィンターハルター卿でございますね。宜しくお願い致します。では、ゴーレムバスにて研究所までご案内いたします。レイ殿エスコートをお願いしてよろしいか?」


 運転席にはアンディーが座っている。研究所までは、数百mしかないのだけど、モノレールを見学してもらって研究所に入ることにしたため、10分程のドライブをしてもらうことになる。


「では、宰相閣下と大臣から先にお乗り頂いて宜しいでしょうか?通路が少々狭くなっておりますのでお気を付けください。尚、荷物は魔道具系以外は、乗り口横の荷物入れに入れて頂ければ、バスをお降りになられる時にお渡しいたします。マジックバッグになっておりますので、魔力が生きている魔道具は弾かれてしまいますからお気を付けください。ゴーレムタブレットも、手に持って乗車お願いいたします。」


 宰相閣下が乗車されると護衛騎士がそれに続き、ヴィンターハルター卿が乗車される次の護衛騎士が乗り込むという順番で乗車が済んでいった。その後に、今日一緒に回る王国の皆さんが乗車した。全員乗車したことを確認して、ルーサーさんと僕所長の順に乗車して最後にアントニオ企画部長が乗り込んだ。


「ただ今より、当研究所が開発いたしましたいくつかの魔道具を紹介しながら研究所を目指したいと思います。」


「最初にお見せいたしますのが、モノレールという陸上の高速移動の為の魔道具でございます。陸上といいましても、地上20m程の高さに敷設されたモノレールという物の上を走行いたします。」


 アントニオ企画部長は、ゴーレムバスが走り出すと直ぐにモノレールの説明を始めた。


「右に見えておりますのがフォレスポインター砦、通称フォレポイ砦でございます。左手に見えてきましたのがモノレールの実験線路でございます。この線路は、10m程の高さしかございませんが、徒歩で3時間程の距離にありますフォレストメロウの町までつながっております。そこから王都に向けて現在レールの敷設工事を行っている所でございます。まずは、本線まで参ります。」


 15分位バスで走るとフォレストメロウの町が見えてきた。


「アントニオ殿、先ほど徒歩で3時間の距離と言われたが、見えてきたのがその距離にあるという町なのか?」


「左様でございます。この町の先から右に大きく曲がっているのが本線でございます。さらにまっすぐ伸びているレールは、フォレストメロウから更に1日程歩いた距離にあるロックバレーの冒険者学校までつながっております。」


「して、その徒歩1日の距離にあるロックバレーからフォレストメローまで何時間程で到着するのだ?」


「いや、時速200km程の速度で走っておりますから、ほぼ20分程で到着いたします。お乗りになりたいですか?しかし、今回の取引とは直接関係ございませんから、試乗は、後日ということにいたしませんか?」


「う、うむ。そうだな。お主らの研究所の技術力を確認するためと思ったが、他にも見るべきものがあるのであれば、モノレールの試乗は後日、機会があればということにいたそう。」


「では、モノレールの本線下を回って、砦に移動したいと存じます。」


 本線は、実験線路よりもずっと高くなっているからその下を回った時、ビスナ王国の使節団の皆さんは驚きの声を上げていた。それから、バスは砦に向かって走った。10分程で砦について、研究所ではなく工場の見学をして頂いた。高級家用魔道具工場だ。冷蔵冷凍魔道具や冷風魔道具に温風魔道具、魔道コンロに高級アイテムバッグなど、現在、砦の魔道具工場の主力製品だ。


 その後、大型魔道具のゴーレムバスとゴーレムトラックの製造工場も見てもらった。高級アイテムバッグを見た時は、ヴィンターハルター卿が目を輝かせていたけど、トラックとバスを見た時食いついてきたのは、ゲルツ宰相閣下だった。


「今まで見て頂いたのが、研究所が工場生産にまで至った主力製品でございます。更に、研究所では、まだ、開発中ですが、ゴーレムタブレットは、この研究所で製造の注文を承っております。ただし、ゴーレムタブレットは、国の許可がないと販売できませんので、その交渉は終了しているということでお話しさせていただいております。」


「うむ。先日までの会議の中で、ゴーレムタブレットの購入契約はできている。しかし、その仕様と納品時期については研究所で国や国営商会の者も一緒に詰めねばならないと聞いておる。」


「はい。その通りでございます。ゴーレムタブレットは、様々なグレードがございまして、最高級グレードのゴーレムタブレットになりますと、その材料に貴重な素材を使用しないといけないため、納品までに時間がかかりますのと高額になることを了承して頂かないといけません。それに、タブレットには、運用するために運用範囲に応じた道具が必要になります。その道具も同時に購入して頂かないといけないため、思ったよりも資金が必要なのをご了承ください。」


「そのグレードと機能というのを説明してくれぬか?」


「では、この後のお話は会議の中でということにいたしましょう。」


 所長と企画部長は、工場での話を打ち切って、研究所の方に向かって行った。


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