第355話 研究所の冬期休暇

 アントニオ企画部長の道路作りの後、研究所に戻り、今後の打ち合わせを詰めておくことにした。


「では、今回の仮滑走路の新設は研究所で受けて頂くということで宜しいのですね。」


「それは、良いのだが、お前たちを雇うからな。変な依頼を受けるんじゃないぞ。研究所からは、俺と今モノレールの線路建設に携わっているコーラルゴーレム使いを3名連れて行く。お前たちは、石材採集と運搬を担当してもらおうと思っている。それは、引き受けてくれよ。それから、臨時の雇われパイロットの依頼は、受けてくれないよな。研究所の作業員とその家族を移送するためのパイロットなのだが、お願いしていいよな?」


「家族の皆さんも連れて行くということは、仕事の他に休暇的な意味合いも持たせるということですか?」


「それは、交渉次第だとは思うのだがな。できれば、今回参加してもらう作業員には、特別休暇を与えようと思う。勿論、手当とどちらが良いかは聞くつもりだが、コーラルゴーレムの使役をしてくれている研究員も長く休暇をまともにやってなかったからな。本格的な冬になったら、仕事ができなくなるからと無理をさせていたし、雪が降り始めたら長めの休暇を取らせるつもりだった。その休暇と家族への恩返しもかねてと思っているのだが皆、休暇を喜んでくれるかな。そこは、少し心配だな…。」


「ビスナ王国は、冬の間は、こちらに比べるとずいぶん暖かいですし、きっと喜んでくれると思いますよ。ビスナ王国の使節団の皆さんも作業さえきっちり行えば、喜んで、観光許可を出してくださると思うのですが…。」


「それから、観光地への移動もお前たちが世話してくれないか?お前らのバスかドローンがあれば、色々なところに行くことができて素晴らしい観光ができると思うんだがなあ。」


「でも、フィートだとどんなに詰め込んでも20人も乗ることができませんよ。まあ、フィートとキュニを使えば、35人位は移動できますが…。ゴーレムバスを使えば50人近く移動できますね。でも、砂漠の旅は無理かもしれないですが…。」


「お主らは、高速艇も持っているのであろう?色々ありすぎて何をして楽しんだらいいのか迷ってしまうぞ。」


「あの…、ずっと、僕たちのアグリゲートかパーティーを雇っておくつもりですか?観光の為に…。僕たち、一応ですが、この国ではSランクパーティーなんですけど…。」


「そ、そうだったな。まあ、硬いこと言わず、送り迎えだけで大丈夫だからな。宜しく頼む。お前たちも一緒に休暇を楽しめばいいだろう。同じ研究所仲間なんだから。なっ!」


「おいっ、アントニオ企画部長、なんかとっても楽しそうに話をしているが、研究所で仮滑走路の新設を請け負うなら、お主に責任者として行ってもらうのだからな。他の者はともかく、観光などする暇はないと思うぞ。」


「何言ってるんだ。工事責任者は、所長に決まっているだろう。俺は、作業員としていくんだぜ。お前の所の家族も連れていくんだよ。たまには、家族サービスもしておかないと、家に帰ったら部屋がなくなっていることになるぞ。」


「ぬぐ。しかし、研究所はどうするつもりなのだ。」


「新年と冬季の長期休暇にすればいいんじゃないか。王都に戻るなり砦やフォレストメロウの町で過ごすなりできるようにすればいい。とにかく忙しく根を詰めすぎたからな。たまには、休憩も必要だ。それに、もしも、希望者が居たら、ビスナ王国観光に連れて行けば良いんじゃないか?そいつらは、仮滑走路新設中には、観光でもするように言っておけば良いのだから。」


「あの…、それなら、エリックさんにバスの運転を頼みましょうか?エリックさんかドローに運転を頼めば、観光地でも護衛もしてもらえるので安心だと思うのですが、それとうちのメイドゴーレムを連れて行けば、色々と心強いのではないでしょうか?」


「アグリケートハウスのメイドさんたちには、きちんと休暇を与えた方が良いと思います。里に送ってあげるようにしてメイとメアを連れて行けば、観光地でも困ることは無いと思いますよ。」


 シエンナも冬の長期休暇の案に乗り気のようだ。


「なるほどな。では、今日、研究員に冬の休暇について提案してみることにしよう。ビスナ王国への休暇旅行の参加希望者数次第では、使節団と気合を入れた交渉をしないといけないかもしれないからな。」


「研究員の皆さんを食堂かどこかに集めて話し合いをなさるのですか?」


「所長、食堂が良いだろうな。各部署の部長に電話して、4時に食堂に集合するように連絡する。ジェイソンも一緒に連絡してくれよ。俺一人で魔伝かけまくるの嫌だからな。」


「わかった。私が、2階部署に連絡する、アントニオは1階部署に連絡してくれ。申し訳ないが、レイ殿たちで工房に連絡に行ってくれぬか。全員出席が無理なら、代表数人でも良いから必ず各部署2名以上出席するようにと言ってくれ。休暇のことだと言ってもらって構わない。」


「了解しました。その会議は、4時から始めるのですね。僕たちも出席した方が良いですか?」


いや、レイ殿たちは、外してもらっていた方が良いだろう。今回は、こちらからアンデフィーデッド・ビレジャーへ指名依頼する形になるかもしれないからな。裏話を聞いて依頼を受けにくくなってもらったら困るからな。」


「分かりました。では、工房に連絡したら、アグリゲートハウスに戻りますね。明日の交渉と営業は頑張ってください。それでは、失礼します。」


 僕たちは、工房に行って、所長たちから休暇について話があるから食堂に集まるようにと伝えた。工房では、どの部署も忙しそうにしていたけど、休暇の話と聞いて、サッと仕事を終わらせる段取りを付けたみたいだった。皆ん出席するらしい。そりゃそうだよ。やっぱり休みは欲しい。


 伝言がきちんと伝わったことを確認して、僕たちはアグリゲートハウスに戻って行った。


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 部屋でゆっくりしていると所長から連絡が入った。研究所は、仮滑走路新設の依頼を受けた場合、全員で滑走路新設に取り組み、その後7日間の休暇期間を取ることになったそうだ。その参加者は、研究員86名で、その家族の参加者は、不確定だけど、90名以上になるだろうということだった。ここまでが、アントニオさんのゴーレムタブレットでの通話連絡で確認で来たこと。その後所長から連絡が入っていた。


『ジェイソン:FF機を砦からビスナ王国1往復と王都から砦経由でビスナ王国まで1往復の貸し切りを頼みます。日程は後日連絡しますが、その貸し切りの日は別日か別時間でも構いません。乗車名簿は、私たちがで作成しますが、飛行機の準備とパイロットの手配を頼みます』


 本当に海外観光旅行を計画するようだ。ジェイソンさんからの連絡は、仮契約的な意味合いなのだろうか?そのままミラ姉に転送しておこう。FF機は、一応作ることはできるが、手持ちにはない。研究所用に一機作っておくのも良いのかもしれない。既に、5機分の材料の準備はできている。これは、ルーサーさんと要相談だ。


 この日、この世界初の海外観光旅行の計画が立てられているのかもしれない。ジェイソンさんたちは、どのくらい具体的な海外旅行の計画を立てているのだろう。どんな結果になるのか、少し楽しみだ。

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