第336話 僕のお正月

 目を開けると、おじいちゃん家だった。炬燵の中で横になっている。時刻はまだお昼の1時30分になったばかりだ。炬燵の上には、おせち料理が並んでいた。帰った来たんだ。


「どうした?ぼんやりして。お前は、玲なのか?」


「う、うん。明けまして、おめでとうございます。」


「おっ、おう。明けましておめでとうございます。今年も宜しくな。今年は、もう少しうちにも遊びに来てくれよ。折角元気になったんだからな。」


「うん。そう言えば、この辺りに、鉱石が取れるようなところはない?」


「鉱石か…。石炭なら沢山取れるんだけどな…。鉱石はなあ。あんまり聞かないな。」


「そうか…。」


「それにしても、レイが操縦してきた、ドローンか?チラッと見せてもらったけど、凄いな。お前も操縦できるのか?」


「いやぁ、僕は、まだ練習してないから…。でも、練習したらできると思うよ。ちょっと練習してこようかな…。裏庭にドローン出して良い?」


「儂も、中に入らせてもらって良いか?」


「うん。勿論。」


「何々、おじいさん。いったい何をこそこそ話しているんですか?」


「こそこそなんて話してないぞ。玲が帰って来たからな。ドローンの中を見学させてもらおうと思ってな。」


「じゃあ、私もご一緒させてもらって良いかしら?」


「うん。大丈夫。勿論だよ。」


 3人で、裏口から、庭の方に出て行った。そう大きくない庭だけど、うちの庭の3倍くらいの大きさはある。ドローンを出しても余裕のはずだ。


 ドローンを取り出してふと困った。扉が開かない。レイの魔力しか登録してなかったら、誰も開くことができないことになる。


「母さんを呼んでこないといけない。僕の魔力登録が済んでなから開けないんだ。もしかしたら母さんは、登録してるかもしれないから。ちょっと待ってね。呼んでくる。」


 居間に戻ると母さんも炬燵で寝ていた。お酒も少し飲んでいるみたいだけど、扉を開くだけだから大丈夫だろう。


「母さん、起きて。ちょっとお願いがあるんだ。起きてよ。」


「う~ん?どうしたの?あっ…、玲か、お帰り。」


「ただ今。それでさ、おじいちゃんとおばあちゃんが外で待ってるからさ、ちょっと来て。」


「え?…、何?」


 母さんを無理やり起こして裏庭に引っ張ってきた。


「母さん魔力登録しているんじゃない?してたら扉を開けることができるはずだからさ、扉を開けてよ。僕が魔力登録して操縦できるように練習するからさ。」


「ええっ?これっておもちゃじゃないのよ。本当に空を飛ぶんだよ。あんた、練習するって事故なんて起こしたら、シャレにならないんだからね。」


「大丈夫だよ。向こうでいろんなこと経験してるから、それに無茶な飛行をしないんなら、MIが制御してくれるはずだからさ。」


「そう?本当に危ないことしない?」


「しないよ。約束する。だから、扉を開けて、おじいちゃんたちも寒いよ。」


「はい。約束守ってよ。…、どうぞ。」


 母さんが扉近くのボタンみたいなところに手を当てると1mくらいの階段が降りてきた。僕たちは、階段を上って中に入って行った。


 頭がぎりぎりぶつからないくらいの天井の高さ。みんな少し屈んでいる。4人とも乗り込んだところで、扉を閉めて結界を張ってもらった。これで、外から見られることは無くなったはずだ。次は、魔力登録。僕の魔力を登録して操作できるようにしないといけない。レイの記憶をサーチさせてもらって登録方法を確認した。


 母さんに登録用の入力口を出してもらって、そこから僕の魔力を流し込んで登録終了だ。これで操作ができるようになったはずだ。魔力タンクになっている溶岩プレートに魔力を流し込む。


「やあ、フィート・アース、僕の魔力を認識してくれたかい?」


 ライトが一度点滅した。


「あっ、母さんは、家に戻る?父さんが独りで寝てるけど…、大丈夫かな?」


「そんなに長く、家を離れるわけじゃないんでしょう?危ないことしないか心配だから一緒について行くわ。お酒を飲んじゃったから操縦するわけにはいかないからね。」


「わかった。おじいちゃん、おばあちゃん、シートベルトを締めた?今から離陸するよ。」


「おう。大丈夫だ。なあ。」


「はい。締めてますよ。」


「アース、離陸してくれ。高度は、50mまでお願いする。」


 ライトが1度点滅してアースは上昇を始めた。


「揺れないし、景色が見られるんだな。我が家を空の上から見たことなかったからな…。なかなか、良いもんだな空からの景色も。新年早々、こんな景色が見れて、今年はなんかいいことがありそうだな。」


「そうですね。良い一年になりそうですね。」


「もう少し高度を上げて、海の方に向かってみるね。」


「おう。頼む。新年の景色を楽しませてくれ。」


「天気が良くて、空気も澄んでるから遠くまで見えますね。」


 僕たちは、それから20分程遊覧飛行を楽しみ、家に戻った。お父さんは、子たちに寝たままだった。僕たちも、家に戻ってから、のんびり過ごした。お年玉は、二人分だと言って奮発してもらった。なんと1万円。今まで、お年玉なんて貰ってもそのままで、使ったことなんてなかったけど、今年は、冬休みに色々したいことがある。明日は、僕は、初詣。本田さんたちは、三社参りの2社目と3社目なんだそうだ。


 それから、夕方までおじいちゃん家で過ごして、みんなで僕の家に帰ることになった。明日、初詣の約束があったからだ。勿論、ドローンでこっそり家の前に着陸する。元旦の夜、ウロウロしている人は少ないから大丈夫だろうということになった。


 夜、7時30分、駐車場前に到着。結界を張ったまま階段を下りてもらう。離れたところから見たら不気味な光景かもしれない。何もない所から突然人の姿が現れるのだから。僕が下りるとMIに結界を消してもらい、一瞬で収納する。それから、サーチで人の気配が近くにないことを確認して、収納から車を駐車場に出しておく。これで、帰宅完了だ。なんかドキドキした。


 夜は、父さんたちはまた、宴会をしていた。僕は、気持ち的には深夜だったけど、時計は9時で限界になってベッドに入った。向こうじゃもうすぐ夜が明ける。

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