第328話 マギ・ライトプレーン
朝9時には、ベルとカラが来ていた。年末まで宿題を終わらせるという名目で僕の家に集まっている。玲とベルは終っている。アイテムボックスがあるから、検索で見つけるのが速い。ベルも教科書や資料集は全てデータ化していると言ってた。辞書と問題集をデータ化したらが何かと便利だったらしい。
玲は、何でもかんでもデータ化している。サーチに時間がかかるようになっていないか心配してたら、ベルが理解さえ進めば、絞り込みができるから大丈夫だって言ってた。
今日の本当の目的は、ライトプレーンをマギモーターで完成させることと、8人くらいが乗れるドローンを作ることだ。そんな話をしながらいつもの廃校に向かう。車の中で話しているうちに、ドローンでこの車ごと空を飛ぶことができるようになったら便利だっていう話になった。車なら、暖房はあるし、音楽聞いたり、テレビ見たりの便利機能が使えるってことで、最終目標は、お父さんが乗っている車ごとドローンで運ぶことができるようにすることになってしまった。
「この車だと、少し重すぎるよね。この車とおんなじ形で、マギモーターで動くコピーを作ったらどうかな。」
「でも、レイの精錬コピーじゃ電子機器は、コピーできないから、カーナビやテレビは勿論、その他様々な物も全部付け替えないといけなくなるぞ。」
お父さんが心配そうに忠告してくれる。その心配は当たっているんだよね。
「玲君のお父さん、この車に着けているそんな部品とバッテリーは、そのままコピーした車に移して、この車のカーナビなんかを新しくしたら良いですよ。ねっ。そうでしょう。」
「カーナビ類だけで良いよな。それなら、買い替えしてもべらぼうな金額にはならないと思う。」
「でも、発電機は?マギモーターで発電するにしても、発電する部品を取り付けないといけないでしょう。車の電気って何で作ってるのかな?それって、レイはコピーできる?」
「プログラムで制御してなかったらレイのコピーで何とかなるはずなんだ。ただ、材料がそろっていればだけどな。まあ、車の発電部品については、調べとく。この車を直接抱え上げるのか?できれば、この車に似たものにしておいてほしいな。どうせ、飛んでいるところを見られたらまずいんだからさ。」
「でも、乗り込んだり、人目のないところまで移動したりしないといけないんでしょう。それなら、飛んでいない時は、車の方が良いんじゃないですか?」
「わかった。それについては、玲とも話していて、正月明けに中古車を買いに行くことになってるんだ。それに、乗り物の材料にするためにスクラップ車も購入するから、その後で良いかな。君たちが言ってる空飛ぶ車の計画は。」
「「はーい。楽しみにしてます。」」
そんな話をしながら、廃村の中の廃校に到着した。ここのところ良く来る場所だ。今回も、壊れかけの校舎近くにコテージを作る。今日は、お母さんは参加していない。お弁当を作ってくれたけど、家で、おせち料理の準備をするそうだ。大掃除なんかは、したよ。手伝った。本当にメイがいたらいいのにって思ったけどね。
まず、ベルに素材を渡して、マギモーターを後1台作ってもらった。それを昨日の模型用のモーターと入れ替えて電池の代わりに溶岩プレートを使う。次にミスリル導線と溶岩を材料にして、魔力量の流れ調整できる装置を作って操縦席に取り付けた。本当は、MIやIPUをベルに錬金してもらってコントロールの補助ができるように取り付けたいところだけど、プログラムのスキルがなくて取り付けても役に立たせることができない。こんど、そのプログラムも何とかしてこちらに転送できるようにしないといけない。
次に、朝早くお父さんが、ライトプレーンのサークルの先輩の所に行って借りてきたパラシュートの精錬コピーを行う。その先輩は、スカイダイビングもやっているらしくて、このパシュートは、いつも使っている物だそうだ。信頼してコピーして使用できるようにする。アイテムボックスの中には、とにかくたくさんの布やナイロンロープ、ワイヤーなんかが素材として入っていた。玲が頑張って集めたらしい。
「このパラシュートがあれば、数百m上空から落ちても、怪我をしないんだよね。」
「そうだぞ。でも、ある程度の高さになった時、この紐を引いてパラシュートを開かないといけないらしい。4~5百メートルなら直ぐに紐を引かないといけないかもな。一般的には900mから1300mくらいで紐をひいてパラシュートを開くって教えてもらったからね。」
「それからさ。ドローンの錬金術式が届いていたから、渡すけど、僕たちが飛行実験をしている間にその術式をアイテムボックスの中に入れてデータのコピーをしておいてほしいんだけど良いかな?カラは、僕たちが離陸するまで、ちょっと手伝ってほしいことがあるんだけど、大丈夫?」
「なに?良いわよ。どうせ、力仕事なんでしょう?」
お父さんはカラを連れて、飛行機の方に行った。プロペラの回転数が十分に上がるまで飛行機を固定する役目の説明と準備だ。運動場の一番端に杭を打ってもらっている。僕は、ベルと一緒にコテージに入って行った。
まず、素材をベルに渡す。発泡アルミやその他の金属。ミスリル。精錬てミスリルを抜いた溶岩プレート、木材、グリス、皮に似たビニール素材。玲が素材として集めた物は殆ど渡した。次に、錬金術式を記述した数十万枚の紙。これが、ルーサーさんがMIとIPU、小型マギモーターで制御したドローンを錬金した時に使用した錬金術式の全てだ。初め少ないようだったけど、どんどん増えてこの量になった。
「ベルの熟練度で、このすべての錬金術式を使用したドローンを一挙に作ることができるとは思えないけど、トライアンドエラーだから、挑戦してみてよ。まず、収納とコピーからだよ。作る時は、イメージが大切だから、僕が作って外見だけでもイメージできるようにしてからだよ。じゃあ、宜しくね。」
「レイ、ちょっと待って、今から、これ全部収納してコピーしないといけないの?」
「一人で?」
「いや、飛行実験が始まったらカラが何もすることがなくなるから戻って来て手伝ってくれるよにういっておくよ。だから、頑張ってね。」
「うぇ~っ。はーい。頑張りまーす。」
何か、ベルはテンションが急降下していたけど、大丈夫かな…。ルーサーさんも何ステップにも分けて作っていたドローンなんだから、そんなにすぐにできる物じゃない。頑張れ!
運動場に戻ると、カラがロープを握って、どうやったら合図に合わせて、飛行機に絡まないようにロープを外せるかを試していた。僕を見つけると、親指を立て、合図を送ってきた。多分、大丈夫だって言うことだろう。
僕は、飛行機の後部シートに乗り込んで魔力を流し込むための注入口に手を当て、溶岩プレートに魔力を流し込んで言った。
「お父さん、魔力羽容量いっぱいに流し込みました。」
「そうか。ありがとう。じゃあ、一度下りて、パラシュートを付けてくれ。使い方を説明するからな。」
「はい。分かりました。」
僕が下に降りると、さっき、コピーしたパラシュートを背中にかるって固定していった。最後にお尻から太ももを通して腰の辺りで固定すれば、パラシュートの装着は終了だ。
「ないとは思うけど、もしもの時は、この紐を引いてパラシュートを開くこと。ゆっくり落ちて行って命は助かるはずだ。決して無理はしないが、万が一の為だ。いいな。」
「万が一、飛行機に何か異変があって、空中に飛び出した時に使うということですね。」
「そう言うことだ。」
「了解しました。」
「ねえ、二人とも、それって何ごっこ?」
「え?」
「いや、あのな。ただの確認だよ。ごっこじゃない。」
「そ、そうだよ。確認だよ。」
「じゃあ、テスト飛行に行こうか?」
「そうだね。魔力は一杯になってる。どの位持つかも試験しないといけないけど出力が落ちてきたらそれが限界ということにしよう。その時は直ぐに、魔力を補充するからね。」
「頼んだ。じゃあ、乗り込んだらプロペラをし始める。ブレーキ開放は、上村さんが飛行機の移動開始を感じた時にするからね。ブレーキをかけているのに少しでも飛行機が移動し始めたら合図して教えてくれ。準備ができていたら、僕が手を上げる。そしたら、ロープをほどいて出発だ。多分、かなりの力がロープにかかってくると思うけど大丈夫かな…。できるだけロープが離れたことを確認してブレーキを解除しようとは思っているけど、気を付けてくれ。」
「大丈夫です。身体強化は、使っていますから、ご心配なく。」
「魔力を流す。プロペラ回転開始。魔力量を増やしていくぞ。」
プロペラは、どんどん回転数を上げていった。僕は、後方のカラの方を見ていた。
「お父さん。カラが手を上げたよ。」
「了解。こっちも準備OKだ。」
お父さんも手を上げてカラに合図を送った。カラは、ロープを解いて飛行機を自由にした。
「ブレーキ解除。」
『ガタガタガタガタ…ガガガガガガガ…』
飛行機のスピードが上がり、車輪が立てる音が聞こえなくなった。
「離陸成功。70m程で離陸で来たな。なかなかいいぞ。エルロンとフラップを戻す。機首を上げて高度を上げていくぞ。」
お父さんが操縦かんを引いて機首を上に向けた。高度がぐんぐん上がっていく。
「模型のモーターを改造した物と上昇の速度がずいぶん違うな。高度計は、パラシュートに付いているから確認してごらん。もう、1200mになっているよ。」
それから、20分程、テスト飛行を行ったけど、魔力が切れる様子はなかった。この辺りに1000mを越える山はほとんどない。そんなところまで飛んで行ったら、誰かに見つかってしまうかもしれない。
「かなり寒いね。」
「そうだな。厚着してるけどやっぱり寒いな。実際体験すると、ライトプレーンって移動用の道具じゃなくてレクレーション用の道具だな。寒すぎる。」
「そうだね。夏用の道具なのかな。」
「暖かいまま空を飛べたら良いな。」
「やっぱり、車に取り付けるドローンって良いのかもしれないな。」
「冷暖房完備だものね。」
それから、少し震えながら、学校の運動場に着陸した。カラは、直ぐに乗りたがったけど、お父さんが寒がって、コテージの中でしばらく休憩をすることになった。
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