第269話 学校帰りのコーシェン

 朝だ。学校に行かないといけない。もうすぐ試験だからしっかりノートを取っておかないといけないらしい。前回、学校に行った時も授業は受けた。しっかり座っていたし、先生の質問にも何とか答えた。少し冷や汗をかきながらだったけど、ベルからのサポートの必要は少ししかなかった。でも、今回は、2日間行かないといけない。


 昨日、家の間に止めてあった車は、素材にすることなく、母さんが初めに貰った名刺に書いてあった事務所の前に放り投げてきた。壊れるほど乱暴に扱ったわけじゃない。車で事務所の前を走った時に、止まることなく置いてきただけだ。


 じっとひている人がいたら、急に車が現れたように見えただろう。実際、急に表れたんだけど…。そんなことをしていたから、昨日、ベッドに入って寝たのは11時近かった。だから、少し眠い。


 昨日の朝、約束していたように、通学路の分かれ道の所に待っているとベルとカラがやってきた。それから、話しながら学校に向かった。


「今日は、英語があるでしょう。レイは、ノート取るの間に合うと思う?」


「どうだろう。僕自身は、ノート何てとったことは無いけど、レイの体と脳が覚えているようなんだよね。僕の記憶というより。でも、初めての授業だから、自信は全くない。」


「もしも、ノート取るのが難しかったら、授業を聞く方に専念して。ノートは、私のをコピーさせてあげるわ。レイのアイテムボックスを使えば簡単なんでしょう?」


「ありがとう。もしもの時は頼むよ。そう言えば、ベルもアイテムボックス持ち何でしょう?使い方マスターした?」


「うん。収納とアルケミーね。それとコレクションかな…。この前砂鉄を集めようとして魔力切れになったんだよね。」


「あっ、似たようなこと僕もあったよ。成人の儀が終わってすぐ。教会の横の広場に置いてあった瓦礫を収納しようとして、魔力切れで気を失った。」


「へーっ。異世界でもそんなことあるんだ…。私、ベルが気を失った時、ビックリしたのよ。本当に。」


「私もびっくりしたもん。目を開けたら保健室に寝てたんだよ。びっくりするでしょう。」


 そのまま、いろんなビックリしたことを話しながら学校についた。授業中は頑張ったよ。寝ないように。ノートは取ることができた。体が覚えているって本当なんだね。普通にできてびっくりした。


 それから、学校では普通に過ごした。多分、普通だと思う…。帰りにベルに確認しよう…。僕もベルたちも今日は塾?には行かない。僕は、全く言ってないけど、ベルとカラは、週3回は行ってるそうだ。塾って言うのは、受験勉強を教えてもらうところらしい。受験って言うのは、高等学校に入学…。珍しかったから書いたけど、その必要はないか…。


 いつもの分かれ道でベルたちと別れる。明日も学校だ。土日は、ベルとカラは、塾のテスト会があるらしい、高校入試の模擬試験?みたいなものって言っていたけど良く分からなかった。だから、一緒に遊びに行けないそうだ。少し残念だ。


 家について鍵を開けようとすると後ろから声をかけられた。


「ええっと、私、こういうものですが…。」


 背広の内ポケットから何か手帳のようなものをチラッと見せてそういうおじさんにだ。


「え?どういう者でしょう?」


 突然声をかけられて、こういう者だなんて言われても分かるはずがない。


「こういう者って言ったらこういう者だよ。テレビなんかで見たことあるでしょう。」


 あるかもしれないけど、昨日見たテレビでは、そんな番組はなかった。わざわざ手帳を見せるシーンが出てくるテレビ番組を記憶の中からサーチするのも何だからな~。ここは、素直に知らないと言っておこう。


「知らないので、その手帳って言うのをはっきり見せて名乗ってもらえませんか。僕、今から家に入って台所の片付けをしようかなって思ってるんですけど。」


「こんな風に、手帳をチラって見せてこうゆうもんですって言ったら普通、刑事かなって思うでしょう。チラって見せられたのは警察手帳って思うのが普通でしょうが。」


「そういうもんですか…。知らなくてすみません。でも、チラッと見せた手帳って警察手帳なんて書いてなかったですよ。○△商事ってチラッと見えたんですけど違いますか?」


「そうですよ。○△商事の者です。だから言ったでしょう。こういう者だって。」


「それで、その〇△商事の方が何のご用事なんでしょうか?」


「いやぁ、ちょっとお宅にお邪魔させていただけないかなって思いましてね。坊ちゃんは、自分の部屋でお勉強していて良いんですよ。私は、お母さまがお帰りになるまでお待ちしていますからね。お気になさらず。だから、ちょっとお邪魔しますね。」


「○△商事って言ったら、昨日、家に来て、道端でオシッコ漏らして帰った情けないおじさんたちの会社じゃないですか。そんな、道端でオシッコ漏らすような人が勤めているような会社に用なんかありませんよ。」


「ええっ?!うちの社の者がそのような情けないことをしでかしたのですか。こりゃあ、面目ない。でもね。おじさんも仕事で来てるんでね。昨日の情けない連中と一緒にされたら、少々プライドが傷つくってもんなんですよ。ガキに向かって礼儀正しく接してやってんだ。早くドアを開けて、中で待たせろってんだ。客だぞ。こちとらお客様なんだぞ。」


「でも、今日は、おじさん一人なんでしょう。車で来たの?」


「この辺は、車の盗難が頻発しているって話でな。車じゃねえよ。それがどうしたんだ?」


「着替え持ってきた?」


「何の着替えだ。いってぇ、お前何言ってんだ。」


「忠告だよ。お漏らししたら大変でしょう。着替えないと…。歩いて帰っても、臭ったら嫌だと思わない?」


「だから、何の話だ?おめえがちびりたいのかぁ~。」


「まったくぅ。しょうがないな~。ちびっても知らないよ。

 …、コーシェン。」


 呪文とともに魔力の圧力を強めていく。良かった昨日コーシェンの魔術を精錬しておいて…。更に、


「コーーーーシェンーーー。」


「ひっ、ひぇーっ。」


「強がっただけはあるね。少しになっただけで、まき散らしてない。でも、これくらいじゃすまないよ。早く帰った方が良いと思うよ。お母さんはもっと怖いからね。」


「ひっ、ひっ…。」


 後ずつ去りしながら、逃げようとする男。完全に気力を奪われ、立ち上がることができない。腰が抜けたようだ。


「○△商事の方は、どなたも来なくていいからね。上の方に重々お伝えください。では、さようなら。」

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