第265話 魔物型の試作飛行機

「どうせなら、カッティングスカイ型の飛行機の模型は人が乗れる大きさで作ってみないか?5人乗りが良い。俺たち全員が乗れる大きさだ。中央に操縦者。後方に2席2列の狙撃手席でどうだ?」


「でも、形のイメージができいないから精錬で機体を作ることができないよ。」


「大丈夫。発泡アルミを作ってくれればアンディーが作る。中央が居住空間、羽の左右にゴーレムエンジンを2台ずつ乗せるだろう。着水することを考えると、プロペラは、翼の上方に取り付けないといけないな。つまり、デッキ上にプロペラを付けるような感じだ。プロペラとプロペラの間に魔石ライフル。機体中央先端にもだ。翼左右に横向きに魔石ライフルだ。多分、後方からこの飛行機を襲撃できる魔物はいないからな。」


 僕は、発砲アルミニウムの塊を出した。アンディーがロジャーのアイディアを形にしていく。人が乗り込む中央部分の厚みが1.5m程、更に膨らみの上にアルミの床が貼られ、その下には、車輪の収納スペースが作られた。その厚みの為、床は50cm程そこから上がることになる。


 大型の旅客機タイプになった時は、車輪が収納されている時は、格納庫の蓋は閉まるようにすると思うけど、小型の施策は車輪を半分出したままで機体の中に水が入ってこないように車輪部分とは分けて取り付けてある。それは、地上で進行方向を制御する前輪も同じで内部から操作できるが完全に外に出ている。


 翼の左右に取り付けたフロート兼車輪も外に出したままだ。空気抵抗は少し大きくなるかもしれないけど、試作機だから大丈夫だろう。


 操縦桿は、ドローンと似ているけど、操作しないといけない箇所がいくつもある為かなり複雑だ。エレベーター、エルロン、ラダー、プロペラの回転速度。着陸時は車輪の方向。それを操縦桿とペダルで操作しないといけない。ただし、コントロールコアが基本的な制御をするから墜落しないで目的まで行くだけなら殆ど操作はいらない。思い通りに飛行機を動かそうとするとそれだけの操作をしないといけないと言うだけだ。


 作り始めて2時間位で機体の形ができてきた。全長8m、全幅9m、高さは、車輪を含めず1.5mだ。後は、ゴーレムコアを融合分割して飛行機を飛ばすためのをしないといけない。動力となる回転駆動コアは、ドローンとほぼ同じだただ、作りはドローンよりも単純だ。只回転数の上げ下げができればいいだけで微妙な角度のコントロールはいらない。


 回転駆動コアを4台取り付けて、ミスリル導線でコントロールコアにつなぐエルロンやエレベーター、ラダーの制御もコントロールコアを通して行う。それぞれに駆動・制御コアを取り付けてある。そして、コントロールコアの制御を行うのが操縦席だ。操縦桿、ペダルを使ってコントロールコア経由で各パーツを操作する。


 次は、機体内部。上昇すると気圧が下がってしまうから、密閉した上に気圧のコントロールもしないといけない。空気を取り込み、気圧だけでなく温度も管理する。これは、ドローンにも付けている仕組みだ。


 操縦席と狙撃手席だけの機体内部だが、ドローンよりも機体内部の角度が大きく変わる多能性がある為、シートベルトでしっかり固定されるようにしておく。さかさまを向いても落ちないようにだ。


 内装まで完成するのに4時間以上かかってしまった。今、午後2時だ。工房の外に出て、無人の試験飛行から行う。僕たち5人が乗った時よりも大きな重りを各シートに括り付けて実験飛行を行うことにした。


「シエンナ、マンボウの使役をお願い。」


「マンボウ…?ですか?分かりました。あなたは、マンボウ。今から試験飛行を行うわ。状況は全て送ってちょうだい。頑張ってね。」


「マンボウ、離陸しなさい。」


 マンボウは、100m程走り、ふわりと浮かんだ。凄く短い距離で離陸できた。


 それから30分程度色々なアクロバティックな飛行をしながら、着陸と離陸を繰り返した後、一度飛行を止めて、中の確認をした。重りはシートに固定されたままで、中は壊れたところもないようだった。


「試乗してみるか?」


 何時も強気のロジャーも恐々こわごわだ。


「少し早いような気もするけど、これ以上無人の試験飛行を繰り返してもな…。シエンナ、操縦できそうか?」


 アンディーも少し自信なさげだ。


「大丈夫と思います。」


「よし。試乗実験してみましょう。」


「もうすぐ2時過ぎてしまうだろう。どうせなら外に出て草原から離陸してみないか。そして、湖に着水してみようよ。」


「そうね。全員揃っているから何かあっても対応できるでしょう。やってみましょか。草原からの離陸と湖への着水と離陸。」


 僕たちは、エスに乗って外に出た。草原に出ると直ぐにの試乗実験を開始だ。シエンナが操縦。前の席に僕とロジャー。後方席にアンディーとミラ姉だ。


「離陸します。シートベルトはきちんと閉めていますか。」


「「「「はい。」」」」


 ガタガタと機体が揺れる。草原は、凸凹が激しい。でも、翼の左右に取り付けてある車輪はその衝撃をうまく吸収している。


 お尻がズンっとなるようなお腹の中に空間ができたように変な感じがして、マンボウが離陸した。


「離陸しました。上昇します。水平飛行になるまでしばらく押し付けられるような感じがすること思いますが辛抱してください。」


 身体がシートに押し付けられる体全体が押し付けられる体が重くなったようなそんな変な感じがしばらく続いた。


「水平飛行に入りました。しばらく安定した飛行ができると思います。」


 立ち上がって歩き回るほど広い空間はないけど楽に座って入れる。


「シエンナ、どうして上昇する時の変な感じや水平飛行になった時には、それが無くなるって分かってたの?」


「情報共有で色々な情報が流れ込んでいましたし、ドローンで飛行する時も大体同じような感じでしょう。」


「後、15分程でグリーンレイクに到着します。グリーンレイクで着水実験を行って良いですよね。」


「ええっ、もうグリーンレイクに到着するの?めっちゃ早くない?」


「早いですね。でも、到着です。もう一度シートベルトをしっかり占めて下さい。着水実験をします。」


「エルロンを目一杯落として、プロペラの回転数もぎりぎりまで落とします。失速ぎりぎりまでスピードを押さえて、ゆっくり、もうすぐ着水です。」


『ザザザッザザ~ッ』


 白いしぶきが目の前の視界を真っ白に染めた。


「着水成功です。一度、プロペラを止めてみます。」


 プロペラが止まると、急に静かになった。チャプチャブという湖の波の音。風はそう強くないようだけど少しずつ流されているのが分かる。


「風に流されて行っていますね。船着き場の方に移動しますか?それとも離陸して砦に一度戻りますか?」


「水面からの離陸実験もしておこう。それがうまくいったら一度砦に戻ってモノレールを見て見たいんだけど良いかな?」


「良いわよ。水面からの離陸は確認しておきたいし、王都へはロジャー達だけで行く予定だったからね。戻りましょう。」


「じゃあ、離陸後、砦に戻ります。シートベルトの確認お願いします。」


 水面からの離陸もうまくいって、30分後には、砦のモノレール駅にいた。


「凄いね。ジャイロモノレール。線路は、どこまでつながっているの?」


「昨日かな、ロックバレーの拠点までつながったって言ってたような気がする。」


「じゃあ、乗ってみようか。」


 魔力で、乗車料金を支払いモノレールに乗車した。出発後5分でフォレストメロウの駅に到着し、そこで5分間停車した後、10分でロックバレーに到着していた。今まで、1日掛かりだった移動が、停車時間も含めて20分になったんだ。


 ロックバレーと砦の運用実験で必要な魔力量や運賃の適正価格なんかを割り出そうとしているらしい。その上で、まずは、王都―ロックバレー線から着工する用てなのだそうだ。いつ完成予定かは今のところ未定。来年の10月にできると良いなって言うくらいの話のようだ。


 その運用実績を見て様々な線が作られていくようになるだろうということだった。それにしても、モノレールって時速200km以上出そうだって言ってたけど、それってドローン並みだよね。


 ロックバレーでモノレールを降りて、僕とロジャーは、王都に向かって出発することにした。時間はまだ午後3時30分だけど、気になることは大体確認した。明日から魔力を沢山使うみたいだから、今日は、少し控えめにしておこう。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る