第263話 異世界転生と電子機器

 体を揺すられている。


「うっ?何?」


 目を開けると、メアが僕の体を揺すっていた。ああっ、時間か…。7時だ。朝食を済ませて、転生準備をしておかないといけない。カメラ機能は完成しなかったけど、模型飛行機を広い所で飛ばしてみたかったな…。向こうでも、飛ばすことができるから大丈夫か。


 顔を洗い、食事が終わった頃ロジャーが起きてきた。


「お早う。もう朝食は済ませたんだ…。俺も急いで食べるからな。」


「急がなくても大丈夫だよ。後30分くらい時間があるからね。今のうちに、連絡事項をダイアリーの紙に書いておくよ。模型飛行機のカメラ機能が完成できなかったことも書いておかないとね。」


「そうだな。やっぱ、アンディーは凄いな。改めて感心したぜ。」


「魔術工兵ってすごい。まあ、アンディーがめっちゃ器用だってことも関係あるのかもしれないけど…。」


「そうだな。メア、俺の朝ご飯も準備できてる?」


 ロジャーがメアに聞くと、メアはコクリと頷き、朝食の配膳を始めた。ロジャーは出てくる皿から順に平らげて行く。早い…。


「そんなに急がなくていいから、先に部屋に行ってるから食事が終わったら来てね。」


 僕は、部屋に戻ってダイアリーペーパーを精錬して昨日のことを書いて行った。ここ2週間近くのことは既に記入しているから大丈夫だ。玲の方は、ラジコン飛行機が届いたこと以外、特に変わったことは無かったようだ。玲が体験したことは、向こうに行って記憶をサーチすればだいたいわかる。まあ、必要な時以外は記憶のサーチはしない。一応、僕と玲は、違う人格だからね。


 ダイアリーに模型飛行機のことを書き込み終わった頃ロジャーがやってきた。


「もうすぐ時間だな。準備は終ったのか?」


「うん。準備って言っても特に何も必要ないからね。気持ちの準備位だよ。」


「じゃあ、頑張って。楽しかったら良いな。」


「ロジャーも、森の賢者をよろしくね。」


 ホームスペースを開き、ダイアリーを開いてさっき書いたダイアリーペーパーをリペアしようと…。意識が吸い込まれていく。日記の中に吸い込まれるような…。


「おっ。転生終了か?」


「ん?…。」


「ようこそ、森の賢者様。ここは、賢者の工房ですよ。」


「あっ、ロジャー。今晩こんばんは。」


「こっちは、朝だぞ。お早う。」


「あっ、そうだった。お早う。」




 ******************************************************************************************************************************************



「レイ、いらっしゃい。今晩こんばんは。」


「お母さん。今晩こんばんは。」


「レイ、今晩こんばんは。模型飛行機は届いたかい?」


「はい。5日程前に、でも忙しくて飛行実験したのさっきなんですよ。もう少しテスト飛行したかったな…。」


「明日、テスト飛行に行ってみよう。ラジコン飛行機の練習場を探しておいたからね。インストラクターもいるようだから、しっかり教えてもらおうな。僕も一緒にだけどね。勿論、申し込み済みだよ。」


「はい。お父さん。宜しくお願いします。」


「レイ、明日は休みだけど、明後日から学校でしょう。ラジコン飛行機の練習も良いけど、本田さんたちとの打ち合わせなんかはしなくていいの?」


「お父さん、ラジコン飛行機の練習って何時から予約してるんですか?」


「あれれ、なんか変だと思ったら、言葉遣いがまた元に戻っているぞ。親子会話なんだから、普通にな。家族だぞ。」


「あっ、そうで…、そうだった。ええっと、予約何時にしてるの?」


「昼、13時から2時間の練習教程だ。初心者の操作はできる人って言う条件の講習コースだから少し難しいかもしれないな。」


「前回来た時にかなり練習してるから、大丈夫だとは思うけど…。それじゃあ、ベルに連絡できるのは、午前中か15時より後になるんだね。」


「そうね。明後日から2日間学校で会うんだから、何か計画するなら、学校ででもできるでしょう。明日は、明後日の朝の打ち合わせくらいで良いんじゃない?」


「わかった。じゃあ、朝しっかり起きれたら、朝のうちに連絡を取って、起きれなかったら、ラジコンの講習が終わって電話してみるよ。」


 もうすぐ、12時になる。これから外に出るなんてできないけど、眠くない。夜遅くまで起きていたから、少しは眠いけど、その前に寝たからな…。


 そうだ。アルミ缶があれば、精錬して発砲アルミニウムにしたら、ラジコン飛行機の機体を作ることができる。お父さんたちと一緒にリビングに降りて行って、テレビの前に座った。


 そう言えば、テレビって不思議だな…。様々な映像と音が流れ出てくる。物語や今の出来事さえそこから知らされる。向こうの世界で作ることができるとは思えないけど、不思議な道具だ。


「あのさ。ラジコン飛行機を作ってみたいんだけど、アルミ缶なんかもらえないかな…。」


「アルミ缶?いっつもあんたがアイテムボックスの中に入れちゃうじゃない。たくさん入ってるんじゃないの?何でもかんでも、素材だって言って収納してるからね。こっちの玲も。おかげで、我が家はゴミほぼ0家庭よ。生ごみでも収納しちゃうから。」


「そう言えば、先週、エナメル線やらビニール皮膜導線やらボールベアリングやとさんざん分品を買いあさっていたけど、お小遣い無くなるんじゃない?」


「それ使って良い?」


「大丈夫じゃない?それにあなたも使わなくなったら新品同様の元の部品に戻すことできるんでしょう?」


「できる…、よ。できる。そうか、部品を精錬しておけば、アイテムボックスの中に入れて、元の素材や部品に戻すことができるんだ。」


 そうだよ。元に戻すことができるから、遠慮なく使える。まず、モーターの精錬コピーだな。これで、精錬式はできた。エナメル導線の巻き数とモーターの力の関係。電池の性能と素材の関係。玲が集めていたたくさんの本から必要な情報をサーチしながら、必要な部品を作っていった。


「ねえ、お父さん。前壊れて動かなくなったタブレットってあったでしょう。動かない原因分かった?」


「うん?どうしてだ?」


「ラジコンのコントローラーも電子部品がたくさん使われているでしょう。玲が買い込んだ部品にもたくさん電子部品があるけど、それを使ってコントローラーを作ったとして動くのかなって思ってさ。」


「あああああああ!」


「うぁ、どうしたの。お母さん。びっくりした。」


「思い出したの。そのタブレットやゲーム機が動かなくなった原因じゃないかって言うのを聞いていたの。」


「何だ?そんなことが分かったのか?」


「そう。つまり、電子部品を設計図通り組み立てたのに正常に動かないんだけどどうしたてかわかるって、技術家庭科の先生に聞いたのね。そうしたら、側にいた数学の先生が、biosを組み込んでいますかって聞いてきて、それ何?て話になったのよ。」


「で、biosって何だったの?」


「何でも、プログラムで動かす設定をするプログラム?ベーシック・インプット・アウトプット・システムって言うのの頭文字らしいんだけど、データのやり取りや出力機器と処理したデータをどうやってやり取りするのか、とにかく機械が動き出すために必要な設定が書かれたプログラムらしいの。そして、プログラムだから読み書きができるんだけど、読むのは機械的に設定されていても、書き込みは後からするものだし、書き込みには、特別な機械かプログラムが必要になるから、そのプログラムが壊れているんじゃないかって…。」


「良く分からなかったけど、つまりね。プログラムを書き込んだら動くようになるかもしれないってさ。そのプログラムは、機種や機械によって違うからどうしたら動くようになるかは一概に言えないそうよ。簡単に言うと、機械は壊れてなくて、プログラムがまだ書き込まれてない状態なんしじゃないかって言ってたわ。ふぅー。」


「言いたいことは分かった。機械は壊れてないってことだね。でも、そのプログラムを書き込まないといけないってことか…。で、ラジコンのコントローラーにそのbiosってのは組み込まれているの?」


「プログラムで動くコントローラーなら組み込まれているかもね。でも、そうじゃなくて、回路だけのコントローラーならないと思うわ。」


「それに、電子機器のプログラムって電圧の高低で記憶されているから、あなたの精錬魔術じゃコピーできないのかもしれないわね。CDのように溝の深さと回数だったらコピーできたかもしれないのにね。」


 お母さんが言うように磁石のN極とS極や電圧の高低のような違いは、精錬コピーはあまり得意じゃない。物質があるやないなら明確に区別できるから、印刷なんかは、情報としてコピーができるんだけど、電子機器がうまくコピーできない理由はそこにあるかもしれない。


 やらずに悩んでいてもしょうがないから、ラジコンのコントローラーをコピーして動かしてみた。難なく動いた。よかった。単純な回路で…。


 モーターの精錬コピーもうまくいって、発砲アルミニウムの機体でできたラジコン飛行機が完成した。半導体を沢山使ってあるから同じものを向こうの世界で作ることはできないと思うけど、精錬でラジコン飛行機ができたことは、嬉しかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る