第262話 転生前夜

 午後7時に目を覚まし、メアが作ってくれた夕食を食べた。美味しくないことは無かったよ。かなり上達したんだと思う。材料は、新鮮なんだけど…。美味しんだよ。


 そう言えば、5日程前に新しいラジコン飛行機の精錬式がホームスペースにコピーされていたんだった。開通式のバタバタですっかり忘れていたけど、一度精錬してみようかな。


 まず、モーターや受信機を外した機体を精錬コピーする。機体は、前回と同じく発泡アルミニウムで作った。前回の飛行機の3倍ほどの大きさにしてみた。小さくて軽いラジコン飛行機は、地球でかなり飛ばしたからな。受信機が取り付けられる部分につながる可動部品が増えている。モーターにつながる線は今までなかった。エレベーターとラダーは前回の初心者用ラジコン飛行機にもコントロール用の接続パーツはあったけどエルロンのコントロールパーツが新たについている。


 玲が送ってくれている飛行機の操縦方法ついての本を読むと、飛行機は、エルロンで右旋回左旋回を行うのだそうだ。初心者向けのラジコンはラダーで行っていた。さらに、左右のエルロンを下げることで速度を落としても大きな揚力が得られるとも書いてある。


 ゴーレムコア2個を合成して、それからエンジンになる部分を3分の1の大きさで切り分け、3分の1をコントロールコアにした。残りの3分の1を送信器=コントローラーにして地上からリモートコントロールできるようにした。まず、コントローラーと本体の動きを関連付ける。地球で言うプログラミングのような手続きだ。エンジン部分となるゴーレムコアには、回転運動ができるようにパーツをいくつも切り分けて軸を飛行機の前方へ伸ばし、プロペラを取り付けた。ゴーレムコアに回転運動を生み出させる方法は、ドローンとほぼ同じだから簡単に作ることができた。


 エンジンパーツとコントロールコアをミスリル導線で繋ぎ、コントロールコアから制御できるようにした。前回の飛行データを初心者用飛行機の模型ゴーレムから新飛行機模型ゴーレムに転送する。


 これで口頭命令だけでも簡単な飛行はできるようになったはずだ。大きさを変えているから多少データ補正の時間が必要だろうけど、多少壊れてもすぐに修理できるから大丈夫だ。


 コントローラーの形を少し変えたり、コントローラー操作から反応までの時間を小さくなるように調整したりしていたら午後10時近くになってしまった。


「ロジャー、模型飛行機を飛ばしてみるけど見に来ない?」


 ロジャーは、明日から玲に付き合って行動するからと時差ボケ対策に付き合ってくれている。多分、この後も寝るんだろうけど、玲が寝不足に負けて寝てしまっても、ロジャーがフォローできるから大丈夫だろう。


「おっ、おう。で、どこで飛ばすんだ?外は、夜になっているぞ。ダンジョンの中でも夜は魔物の活動が活発だから、外に出たら危ないと思うぞ。工房の庭は、少し狭い気がするけどな…。」


「操作性が上がったはずだから、工房の庭でもテスト飛行くらいできると思うんだ。飛ばしてみるから外に飛び出そうとしたら捕まえてくれない。捕縛用の網を作るからさ。」


 ロジャーなら縮地を使って空中を移動できるから、操作ミスで飛び出ろうとした飛行機を網で捕縛できると思ったんだけど、無理かな…。用心の為に、模型飛行機とコントローラーの予備を作っておこう。


 捕縛用の網は、大きめの虫取り網にした。3m程の長さの棒の先に直径2mくらいの輪を取り付けて、それにジャイアントキャタピラの糸で編んだ網を取り付たものだ。それをロジャーに渡してテスト飛行の開始だ。


 エルロンを目一杯下げて、プロペラの回転数を上げていく。エレベーターは、水平状態。機体が大きくなった分、スピードを上げないと機体は浮き上がらないはずだけど、エルロンの働きで揚力が大きくなり、小型の飛行機よりも少ないスピードで浮揚した。更に、プロペラの回転数を上げ、急上昇させる。左右のエルロンの角度を変え、旋回飛行に移る。


 8の字旋回やエレベーターを使った急上昇、急降下など思ったように機体が動く。地球で操作した時よりも簡単だ。20分程テスト飛行をして、着陸練習だ。プロペラの回転数を落とし、エルロンは、目一杯下げている。ゴーレムコアがそこはうまくコントロールしてくれているようだ。エレベーターを操作し機首をほんの少し上げた角度で後輪から着地する。できるだけ優しく、前輪が着地しプロペラは回転を止め、慣性で前進していく。ラダーを動かし、進行方向を調整して壁にぶつからないようにした。


 完璧な着陸だ。前輪と後輪にはブレーキシステムを付けておいた方が良い。もう少し大きな模型にしたら車輪も飛行機から操作できるようにしておかないといけないだろう。


「レイ、俺にも操縦させてくれないか。何か面白そうだった。」


{OKだよ。初心者用の模型飛行機からのデータ補正もかなりできたみたいだから、多少操作ミスがあっても、ゴーレムコアが修正してくれると思うよ。ロジャーの魔力をコントローラーに登録するからここに魔力を流し込んでみて。」


「分かった。ここだな。」


 ロジャーが魔力を登録して直ぐに試験飛行を再開した。今度は、ロジャーの操縦だ。もしも、工房を飛び出しても上空の旋回飛行を朝まで行うようにコントローラーから指示を出せば大丈夫だろう。


 それから、20分ほどロジャーがテスト飛行を行い、着陸もうまくいった。


「ロジャー、この飛行機に写真機能を付けて、外を飛ばしてみようか。ドローンと同じように、連続写真データをこのコントローラーに送信する用にしてさ。」


「タブレットに送信できるようにできないのか?そうしたら、俺もお前も同時に見れるぞ」


「うーん。ロジャーと僕のタブレットにこの模型飛行機からのデータを受信できるアンテナを付ければいいんだよね。違うコアもミスリル導線で繋ぐことでデータをやり取りできるんだから…。」


 タブレットが少し大きくなるかもしれないけどできる。まず、ゴーレムコアを3つくらいあれば十分だな、合成する。


 データ受信用のアンテナコアは、小さくていいから僕の分とロジャーの分を作る。コアから分割だ。次にカメラと送信機能を持ったコアをつくる。シャッターをできるだけ早く切ることができるように…。夜間用は、カラーじゃなくていいから白黒でできるだけ鮮明に撮影できるようにフィルターを付けないレンズを付けた。昼用レンズと夜用レンズを取り付ける。


 コントロールコアとレンズの固定部品を繋いで、撮影方向を少しだけだけど帰ることができるようにした。更にコントローラーにもタブレットと同じ画面を取り付けてカメラ映像を見ながら操縦できるようにしてみた。これは、以前ドローンでもやったからその応用だ。


 ドローンは空中で停止ができるから言葉で色々指示しても十分に応えることができたけど、飛行機は停止ができない分、言語指示では間に合わないことが考えられる。上空らの映像だったらゆっくりと動くように見えるだろうけど、接近したら切り替わりが早すぎて何が何だか分からないかもしれない。


 とにかく、実験してみないと分からない。単純にもっと広い場所で飛ばしてみたいけど、夜だから難しい。でも、飛ばしたいからカメラを付けて外に出してみようって言うだけなんだけど、今後のも玲飛行機の利用方法にもつながっていくかもしれない。多分、ドローンよりも速い。


 カメラと送受信機を精錬して、模型飛行機に合成した。アンディーならミスリル導線なんかの接続なんてあっと今に済ませてしまうんだろうけど、僕とロジャーのペアだとあたふたしながらなんとかできたという感じだった。固定もねじ止めだったり、接着だったりといろいろ工夫してみたけど、ごちゃごちゃになってしまった。本当に撮影できるんだろうか…。


 カメラ機能を付けようと悪戦苦闘し始めてあっと言う間に3時間が過ぎてしまった。まだ、完成していない。夜中になってロジャーは眠そうだ。仕方がないので、カメラ付き模型飛行機の完成は、転生後、帰って来てか、玲に任せることにする。


 メアに5時には起こしてくれるようにお願いして、仮眠をとることにした。

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