第260話 雪原ダンジョンの次階層入り口

 エスに乗り、雪の中を走る。1時間程で一番近くの次階層入り口に到着した。エスのスピードには雪原の魔物はついてくることができない。1体だけ、雪の穴の中から飛び出してきたブリザードミラージュを避けきれず、エスが体当たりすることになってしまった。後方で、跳ね飛ばされたミラージュの魔石が転がるのが見えたけど、そのままにしてきてしまった。


 次階層入り口。入り口の前にいる魔物は1体。ブリザードベアか大型のスノーベア。白い大きな熊だ。体長は、四足の状態で3m以上あると思う。立ち上がったら10mを越えるんじゃないかと思える位の大きさだ。


「シエンナ、一旦ここで止めてくれ。」


 ロジャーが指示を出した。


「ミラ姉、奴はこちらに気が付いてるかもしれないけど、まだ攻撃してくる気配はねぇ。ここで一気にけりを付けることができるように、俺とアンディーを上にあげてくれ。そして、ミラ姉とレイ、シエンナは、最高出力のファイヤーボールを魔石ライフルで打ち込んで欲しんなだけど、その作戦でどうだ?」


「あなたたちが物理系の最大出力攻撃を上から、私たちが魔術系の最大出力攻撃をするのね。その作戦でいってみましょう。物理系の攻撃をするならぎりぎりまで近づいた方が良いわね。奴に攻撃の気配が見えた時を攻撃開始の合図にしましょう。初撃は連射の利くロジャーでいくわ。それに続いて全員攻撃よ。できるだけロジャーに遅れないように攻撃していきましょう。」


 エスには、シエンナがコントロールできる前方の魔術ライフルとフロントガラス下につけた前方の魔術発出口がある。僕とミラ姉は、フロントガラスの下につけた魔術発出口を開き、魔術ライフルの銃口を突き出した。


「ロジャー、アンディー準備は良い?」


「OKだ。」


「シエンナ、白熊の気配を探りながらゆっくり前進して」


「了解です。」


 ミラ姉の合図でエスは、ゆっくりと階層入り口を守る熊の方に近づいて行った。


 熊が立ち上がろうとした時、ロジャーが投げ斧を投擲した。


「全員攻撃開始!」


 ミラ姉の指示で攻撃が開始された。


 ロジャーの投げ斧は、振り下ろしてきた熊の前足を切り落とした。すぐ後に白いファイヤーボールとたくさんの武器が白熊を襲う。それでも、白熊は魔石になることなくボロボロになりながらも、攻撃をしてこようと左手を振り上げ、魔法を放とうとした。その時、ロジャーの投げ斧が左手も切り落とす。先ほど、僕たちの魔法攻撃を防いでいた手が無くなったことで、アンディーのウェポンバレットを全身に突き立てられ魔石になっていった。


「凄く頑丈な魔物だったね。」


 アンディーとロジャーが、魔石と白い皮のドロップ品拾ってきた。魔石はAランクの大きさは十分にあった。


 階層入り口から下の階層に降りて行った。階段になっていた。下に降りると洞窟上のダンジョンだった。サーチで次階層入り口を探ってみる。


「ない。この階層入り口から入ったところには、次階層入り口はないよ。隠し扉か何かで次階層入り口につながる通路があるのかもしれないけど…。」


 サーチで隠し扉を探ってみたけど、そんなものは見つかるはずなかった。それが見つかれば、楽なんだけどね。


「一応隠し扉もサーチで探ってみたけど、見つからない。」


「隠し扉があるのか、他の入り口が次階層入り口につながっているのか分からないわね。とりあえず、全部探してみるしかないわね。」


「片っ端から入り口を探るにもエスで走っていたら何時間もかかってしまうわ。ドローンで近くまで飛んでエスに乗り換えましょう。ドローンなら途中で会敵する可能性も低いでしょう。」


「それなら一番遠い所から行こうか。この流れならここから一番遠い場所が一番怪しい気がする。」


「そう思わせといて、実は、ここに一番近い所が正解かもしれないぜ…、まあ、それはないだろうな。ほとんどの冒険者が、歩きか何らかの乗り物としてもそう速く移動できない訳だから…、しかし、入り口から2番目に遠い場所というのも怪しいと思うぞ。」


 いくら考えても答えは出ない。近い所が不正解なら、一番遠い所に行ってみようということになった。


 ドローンで次階層入り口を目指し、入り口から2km程離れた場所にドローンを着陸させた。1機目、シエンナが操縦するドローンが着陸しようとしたとき、ブリザードウルフ5頭の群れが現れ交戦になったが、アンディーのウェポンバレットであっと言う間に魔石に変わった。その時、白い上等な皮をドロップしたから、高級カジュアルマジックバッグ白い皮をダンジョンに吸収させておいた。


 そこで、エスに乗り換えて次階層入り口に向かった。アンディーとロジャーは、暖房の魔道具を抱えてデッキに乗っていた。


「作戦は、前回と同じだけど…、今回の入り口の番人は…、何あれ?」


 白いもこもこした丸い塊がうごめいていた。


「もこもこ団子の中心に魔力の塊ができています。攻撃してください!」


 慌てて、攻撃を開始したが、膨らんだ魔力は、今にも魔法陣を形作り、攻撃魔法が放たれそうだ。


「シエンナ、ゴーレムハンドに盾を構えさせて、アンディーたちを守って!」


「了解!」


 シエンナは、ゴーレムハンドにデッキ前方に魔法の盾を構えさせ、攻撃に備えた。


「ブリザードだ!」


 もこもこ団子から撃ち出された魔法は、全てを凍らすブリザードの魔法だった。


「アンディー、ロジャー、大丈夫!?」


「ああ、何とか生きてる。こっちも攻撃をお返ししないと2度めはきつ過ぎるぞ」


 ロジャーが答えてくれた。アンディーは、ウェポンバレットを最大出力にするため魔力を込めている。ロジャーの投げ斧がもこもこ団子を切り裂くが、あまりダメージは通っていないようだ。あの団子は何なんだ。


「魔石ライフルもファイ―ボールを最大出力で連射していくわよ。」


「あのもこもこはブリザードミラージュだ!」


 何千体というブリザードミラージュの団子だ。高速で内側と外側が入れ替わっているから只の白いもこもこに見えていたけど、別々のブリザードミラージュが固まって団子になったものだ。


「とにかく連射して片付けましょう。ロジャー達も攻撃を途切れさせないように連続攻撃よ。」


 一匹一匹はそう防御陸も高くない。しかし、高速回転しているからか中心までダメージが通らない。1発の攻撃で表面の1匹か2匹を倒すだけになっていた。兎に角、魔石ライフルは連射速度アップで表面を削って、アンディーとロジャーの高火力攻撃で中心近くまでダメージを通す作戦が有効なようだ。


 2発目のウェポンバレットが、団子の中心に作られようとしていたプリザードの魔法を霧散させ、デッキの上にいる二人が凍り付くようなことにはならなかった。だんだん、団子が小さくなって中心に魔力を貯めることができなくなった頃ブリザードミラージュは、散り散りに逃げ出し、階層入り口の守護を放棄した。


 ブリザードミラージュの団子があったところには、数千個の魔石と小さいけど、高級な毛皮が数百枚落ちていた。残念ながら高級バッグのドロップはなかったが、高級毛皮は、研究所に持って行けば1枚金貨5枚以上で購入してくんじゃないだろうか。ここで拾った毛皮だけでも金貨1000枚以上は稼げると思う。


 階層入り口を降りて行く。前の入り口と同じような洞窟ダンジョンだ。次階層入り口をサーチ。親指を立て、辺りをみんなに知らせた。


「大当たり、この入り口から40kmの所に次階層入り口を見つけたよ。」


 次は、洞窟ダンジョンか…。どんな、魔物がいるのかな…。

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