第259話 魔石集めの指名依頼

 今日は、11月21日。今の時刻は午後8時。異世界は、午前6時20分になってるくらいかな…。レイは、もう起きているかな…。ダイアリーに明日の予定を書いておく。明日は、こちらの時間で午後9時43分過ぎ、向こうの時間で午前8時に転生をしようと思っている。


 僕は、明日、学校に行って、家に帰ってくるのが午後4時過ぎ。それから、風呂に入って仮眠する。向こうに行くと朝になっているから仮眠しておかないと体が持たない。レイには、頑張って早起きしてもらおう。できるだけ早く起きてこちらで、早めに眠くなるようにしておいてもらわないと気持ちと体のアンバランス、時差ぼけが大変なことになる。


 24日、25日とレイがこっちに来ることは、本田さんたちには伝えている。明日、もう一度学校でのサポートをお願いしておこうと思う。明日から、お互いの異世界転生の間は、学校の方は大きな行事や予定はない。レイがやりたいなら、本田さんたちとどこかに出かけても良いと思うけど、無理にとは言わない。出来たら本田さんと上村さんにスキルの使い方を教えてもらえると有難い。一応そのこともダイアリーに書いておこう。




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 昨日は、王国―帝国ルートの開通式で大変だった。一番大変だったのは、所長だと思う。今回の功績を持って帝国からも褒賞を貰うことになったそうだ。その功績は、森の賢者に与えられるべきものだと初めは固辞する姿勢だったが、森の賢者を守るためと国王陛下に頼みこまれて、自分の功績とすることをやむなしと引き受けてくれた。


 そういう訳で、所長と企画部長は二人とも帝国に行っている。ロイヤルドローンで、連れて行ってもらい、二人とも帝国で叙勲することになってしまったらしい。企画部長は、ゴーレムトラック開発の功績で叙勲することになったということだ。


 輸送ルートとゴーレムトラックは、帝国と王国の繋がりをより深いものにした。そこに、ゴーレムバスも投入されようとしているらしい。ゴーレムバスが、帝都と王都の間を定期的に運行することになれば、両国の交流は、より活発になることだろう。


 昨日のことを思い出しながらそんなことを考えていた。


 そう言えば、もうすぐ王室との魔術契約の日だ。ダイアリーを確認しておかないといけないな。そう思ってダイアリーを開くと玲からの転生スケジュールの書き込みがあった。


 ホンダさんとカミムラさん…。ベルとカラのことね。でも、錬金魔術師のことは、まだ、良く分からない。オートマンの開発を切りのいいところまで終わらせたいと研究所には、来ていないからだ。もう少ししたら何かわかるかもしれなかから、それからかな…。


 明日の朝、8時に転生予定だね。今日は、久しぶりに1日フリーだ。


 食堂に降りて行くと、今日は、久しぶりに全員揃っていた。昨日は、全員揃って魔の森の王国―帝国ルート開通式に出ていたからパーティーハウスで朝食を揃って食べるのは久しぶりだ。開通式の打ち合わせをしたり、帝国までティモシー様を護衛したりとばらばらに動くことが多かった。


 今日のロイヤルドローンの護衛は、ファルコン・ウイングのメンバーが行っている。大樹の誓のメンバーは、瘴気の森の近くに魔物の群れがいるから討伐して欲しいとの依頼を受け、昨日の夜、向かった。Sランクパーティーに依頼するほどの群れではないと大樹の誓に声がかかったようだ。そして、大樹の誓は、他のSランクパーティー以上の実力がある。


 まず、昨日の夜呼び出されて、今頃は多分、討伐を完了していると思うんだけど、そんなに早く移動できるパーティーは居ない。今までなら、どんなに急いでも瘴気の森まで2週間はかかっていた。近場にSランクパーティーがいても大樹の誓ほど早く駆け付けることはできない。


 という訳で、今日は、久しぶりに僕たちだけがパーティーハウスに残っているという訳だ。


「ねえ、みんな。久しぶりに全員揃っているから、ダンジョンに行ってみない?森のダンジョンは、僕たちの後、次階層を攻略したパーティーは居るのかな?」


「町の冒険者ギルドに聞けばわかると思うけど、居ないんじゃないか。次階層は、雪と氷の階層だったら、装備がないと攻略は無理だろう。」


「でも、海の階層や鍾乳洞の階層に比べれば、攻略しやすいよ。防寒装備さえあれば、攻略可能だと思うんだけど。それに転送の魔石はかなり出回っているんだろう?内のアグリゲートのメンバーが小遣い稼ぎに行ってたじゃない。あの2パーティーだけでも組み合わせ次第で一日10個くらい集めることができるんじゃない?」


「転移の魔石は初めは1個金貨100枚で買い取りだったから10個集めたら金貨1000枚だぞ。そんなの小遣い稼ぎって言うのか?」


「まあ、大金だけど、あのパーティーならその位は稼ぐことができるって話だよ。でも、一日で10個もギルドに持って行ったら1個の値段が下がりそうだね。」


「そんなことより、町の冒険者ギルドに連絡して11階層が攻略されたか聞いてみましょう。攻略されてなかったら、今日は11階層以下の攻略に向かうことにしましょうか。もしも、攻略されていたら、ロックバレーのダンジョンに行ってみましょう。あっちは、まだ、10階層の入り口に入ったばかりだから。」


 ミラ姉が行動予定をまとめて、シエンナが町の冒険者ギルドに森のダンジョンの攻略状況を聞いてみた。まだ、攻略されていないそうだ。ワイバーン階層の転送の魔石が金貨120枚で販売され、1個金貨100枚で買い取られると言うことは知れ渡っているが、未だに挑戦するパーティーは居ないそうだ。


 3パーティー位で挑戦して、3ローテすれば完全に元は取れるのだけど、町のAランクパーティーでも苦戦し、フォレス・アグリゲートのメンバーがいなければ攻略できなかっただろうという話が広がってますます挑戦者がいないとギルマスがぼやいていた。


『FAG:転送の魔石を1個金貨10枚で卸してもらえたら、複数のパーティーで挑戦しようと言うものたちが現れると思うのだが、その指名依頼受けてもらえないだろうか?』


「転送の魔石を1個金貨10枚…。5人で行って一人1個ずつ手に入れたとして、1回の転送で金貨40枚…。その位貰えるなら良いかもね。魔石ライフルを使って使役ゴーレムと一緒なら心配いらないわよね。」


 という訳で、森のダンジョンの11階層を攻略する前に、転送の魔石を5個、手に入れなければいけなくなった。


 エスに乗って森のダンジョンに向い、ダンジョンの1階の転送の間から10階へ降りた。一人目は、アンディーがゴーレムと一緒に入って行った。そして、1分もしないで出てきた。前のワイバーンと同じ奴だったそうだ。ドロップ品無し。転送の魔石1個目。次は、ロジャー。インディーと一緒に入って行ったかと思ったら、すぐに出てきた。コテージと転送の魔石を手に入れたそうだ。


 次は、僕。ガーディーと一緒に入った。魔石ライフルのファイヤーボール1発で倒すことができた。転送の魔石だけ。その次がシエンナ、ソーディーと一緒に入ってすぐに出てきた。コテージのオマケが付いたそうだ。アイテムバッグの中に入れてきた。最後にミラ姉。コテージと回復ポーションがドロップした。勿論、転送の魔石もだ。


 あっと言う間に全員が転送の魔石を手に入れ、下の階へ降りて行った。寒い。白い雪原がどこまでも続いている。エスに乗り、次階層入り口をサーチする。ここから約100km程離れたところに一つ。反対側にも…、こちらは120km程の距離の所に1つ更に、100kmの入り口を12時の方向だと居ると9時の方向にここから150km程離れた場所と4時の方向に200km程離れた場所に1つの階層入り口があるようだった。


「ここから一番近い入り口を12時とすると次に近いのが6時方向にあって、次が9時、一番と遠いのが4時の方向にあるよ。」


「普通なら、一番近い入り口に向かうわよね。」


「何も目印のない雪原なんだから近くからでいいかもしれない。階層入り口の守り手が近い方が強いとかはあるかもしれないけど、一見なくちゃ分からないからな。」


「そうね。じゃあ、エスにそりを付けて出発しましょう。」


「了解。じゃあ、みんな一度エスを降りて。収納してそりを付けるから。」


「寒いけどしょうがないわよね。」


 エスにそりとカンジキを履かせて、雪道対応にして出発した。



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