第251話 ゴーレムメイドの帰還

 ここは…。賢者の工房か。久しぶりに来た。…、目の前に見知らぬ2体のゴーレムが立っていた。シエンナ位の大きさのゴーレムで手足も細く小さい。力仕事向きのゴーレムでないことは直ぐに分かった。


「あのゴーレムは?」


「メイとメア。教育中のゴーレムメイドです。」


 シエンナが教えてくれた。ゴーレムメイドか…。服も何もつけていないからメイドには見えなかったな。


 アンディーに生地を渡してメイド服を作ってもらおう。アンディーは洋服も作れるのかな??


「ねえ、アンディー、生地を渡したらメイド服作れる?」


「おう。大丈夫と思う。このゴーレムメイドたちの服か?」


「シャルたちとお揃いの服か?」


 ロジャーが面白がってに話に乗っかってきた。


「うん。そうしたら可愛いと思うんだけど。」


「そうですね。きっとかわいいと思います。シャルたちもお揃いの服のゴーレムメイドなら喜んで教育してくれるんじゃないでしょうか。」


「レイも魔力登録しておかないと、言うこと聞いてくれないわね。」


「そうだね。玲と僕は、魔力が違うらしいからね。」


 シエンナにお願いして、僕も魔力登録をしてもらってゴーレムメイドに指示ができるようになった。


「どうして、ゴーレムメイドが2体もいるの?」


「メアは、当面この工房のハウスキーピングの為で、メイは、パーティーハウスで、シャルたちにメイドの仕事を教えてもらうためよ。メイもメアもまだ、ハウスキーピングが上手とは言えないのよ。生まれたてだからね。」


「それと、シャルたちが冒険者の学校に行くことになったんだけど、新しいメイドの皆さんは、ずっとパーティーハウスにいてくれるか分からないでしょう。シャルたちの代役にゴーレムメイドたちを使ってもいいかもしれないわよ。代役とはいかなくてもお手伝い位ならできるようになるんじゃないかしら。」


「そうだね。使役者から全く離れた場所のゴーレムには、警護くらいしかさせたことないけど、家事なんてできるようになるかな?」


「メイとメアなら頑張ると思います。」


「シエンナに使役されたメイなら、逐次シエンナからの指示も受け取ることができるしね。メイと情報共有しているメアは、メイからのいろいろ情報を受け取ることなるだろうから完全に使役者から離れていることにはならないからね。そういう意味じゃ、シエンナの家事スキルが上がるとメイたちの家事スキルも上がるんじゃない?」


「それって、私に対するプレッシャーですか?そりゃあ、私は、ミラさんみたいに料理も上手じゃないですよ。家事もテキパキこなすって言うのは苦手ですし…。でも、それと、メイたちとスキルを関連付けられたら…。それとも嫌味ですか?」


「今のは、レイが悪いと思うぞ。家事スキルを勉強するのは、メイとメアなんだから、シエンナが家事を上手ならないとメイとメアの家事スキルが上がらないなんて言ったらシエンナが困るぞ!」


「そうだ。今のはレイが謝らないとな。」


「そうよ。レイ。謝りなさい。」


 そんな、みんなで責めなくても良いと思うんだけど、でも、分かりました。僕が悪いよね。


「ごめん。シエンナ。悪かった。謝るから許してくれる?」


「大丈夫です。この際だから私も家事上手になるように勉強します。もう、怒ってませんから、大丈夫ですよ。」


「許してくれてありがとう。仲直りだ。」


「何やってんのよ。まったく。はいはい。仲直りしてください。じゃあ、そろそろパーティーハウスに帰りましょうか。レイが王都から戻ってこないけどってアグリゲートのみんなも心配してたわ。王都で合流して今まで賢者の工房で実験していたってことになってるからね。メイと一緒に帰ったらみんなびっくりするけど信じるでしょうね。まあ、似たようなことをしていたわけだから、地球とこっちに分かれてはいたけどね。」


「その前に、この生地でメイド服作ってみて。ボタンやリボンなんかも作ったからさ。」


 僕は、白と黒の生地とボタンをアンディーに渡した。アンディーはあっと言う間に生地を裁断したり接合したりしてメイド服を作り上げた。シャルたちとお揃いのメイド服。赤いリボンを頭につけたのがメイで首に巻いたのがメアだ。魔力登録をしたから僕たちには違いがはっきり分かるけど見た目は全く違いが分からない。リボンで区別するのは良いかもね。


 僕も玲もは御飯を食べて転生したからお腹は空いていない。家に帰ったらもう一度お風呂に入ってゆっくりしよう。ラジコン飛行機の改造もやってみたいしね。




 パーティーハウスにメイを連れて帰ると大騒ぎになった。確かに、所長と研究企画部長には見せたいゴーレムがあるとはタブレットで連絡はした。していた。でも、アグリゲートハウスの前にほとんどの研究員で押し掛けるほどのことなんだろうか?


「レイ様、後ろにいるのがゴーレムメイドですか?」


 僕を見かけた時のブラウン所長の第一声だ。


「はい。森の賢者様と一緒に開発しました。でも、家事スキルはまだまだです。これから、うちのメイド見習いのシャルたちと一緒に家事スキルを身に付けないといけません。だから、メイドゴーレムというより、メイド見習いゴーレムといった方が良いかもしれません。」


「おい、レイ、と言うことは、学習するゴーレムなのか?自分だけで家事をこなすことができるようになるゴーレムだと言うのか?」


 今度は、アントニオさんが食いついてきた。確かに学習するゴーレムともいえるのかな…。でも、多分だけど、これってシエンナあっての学習機能じゃないかな…。これから実験をしないとはっきりしないけど。


 多分だけど、ゴーレムからの情報をシエンナが受け取って、ゴーレムがその場に応じた行動をとれるような指示を組み上げていっているような気がする。だから、情報共有で他の同じような機能を持ったゴーレムに転送できるんだと思うんだけど…。まあ、これは、仮説だ。実験で確認することはできるかもしれないけど、これからの課題と言って良い。でも、シエンナがいるんだから、それで良い気もするんだよね。学習できる物はできるんだ。


「あの、レイさん。モノレールの線路がフォレストメロウまで完成しました。明日の朝、試運転です。レイさんもちゃんと来てくださいよ。ジャイロモノレールの初走行実験何ですからね。研究班全員、乗り込むんですから。寝坊したらだめですよ。」


 後ろの方から叫んでいたのは、ジャイロモノレール部門のリーダーだ。錬金術師でジャイロモノレール開発を引っ張ってくれた。名前…ええっと、グレンさん。


「分かりました。もしも、来てなかったらどなたかパーティーハウスに迎えをよこしてもらって良いですか。必ず行くつもりです。9時に工房ですよね。」


「工房集合は8時ですよ。ジャイロモノレールの機体のチェックをしますからね。最終チェックですから。宜しくお願いし須磨。」


「了解です。」


 と言ってみたものの、さっき起きたばかりなんだよね。何時に寝れるか…。明日の朝、少しだけ自信がない。


「ただいま。」


 久しぶりのパーティーハウスだ。ミラ姉姉たちは、今朝普通に仕事に出かけただけのようだけど、僕はなんか久しぶりに帰って来たって感じだ。シャルたちと別行動だったのってたった3日間だけなんだけどなんかずいぶん前だったように感じる。


「お帰りなさいませ。その…、お連れになっているゴーレムは、一体どのような経緯で我々があずかることになったゴーレムなのでしょう。」


「タブレットで、連絡していたように、家事スキルを教育してもらいたいんだ。シャルたちと一緒にね。できるかな?」


 僕がエリックさんに言うと、少し困ったような顔をしながらも、


「承知いたしました。新しくこの家に来たメイドへの教育もございますから、しばらくは、シャルたちにメイドゴーレムの教育は任せてみましょう。シャルたちも随分メイドの仕事ができるようになっておりますから。復習がてら、ゴーレムメイドへの指導をするのも勉強になると存じます。いいな。シャル、アリア。」


「「はい。畏まりました。」」


 メイドゴーレムの指導の為、シャルとアリア、エリックさんとドナさんの魔力登録を行った。新しく来たメイドの皆さんは自分たちのことで精一杯だということで、魔力登録は後で行うことになった。これで、明日から、ゴーレムのメイド教育が始められる。


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