第252話 母さんの魔力操作

「ええっと、今12時7分か…。さっき夜の8時だったから時差は7時間53分。夜まで長い。」


「何ぶつぶつ言ってるの。お帰り。」


「あっ、ただいま。レイは、学校、何とかなったみたいだね。」


「そうね。楽しかったって言ってたから、大丈夫だんっんでしょうね。それと、あんた、向こうの世界で何か調べ物頼まれてなかった?」


「本田さんの職業のこと。流石に無理だった。王都に行ってたし、教会に行く暇なかったんだよ。早く分かってたら、王都の図書館で調べられたかもしれないけど、その時は、日記呼んでいなかったからさ。」


「さっき、何をぶつぶつ言ってたの?」


「時差。さっき晩御飯食べたところだったからね。今、向こうと日本の時差は7時間53分なんだよ。さっき夜になったばかりだったのに、また、昼に戻ったっていうか、夜を飛び越してきたって感じかな。」


「それは、大変ね。それでさ、レイがね。化粧水と乳液の瓶を作ってくれたの。これで劣化なく保存できるんですって。」


「ポーション瓶だね。僕も作れるようになったはずだよね。」


「ところでさ、その魔法陣って言うのは私が書いても効果があるのかしら?」


「本当は、魔石の粉を水に溶いて、魔力で溶かしたインクで書くんだよね。こっちの世界には魔石がないから、溶岩を砕いて魔力で溶かすか、溶岩に直接刻まないといけないのかな…。でも、材料があるなら精錬したらできるからね。僕は作れると思うけど、母さんが作るならどうしたら良いんだろう。」


 一度溶岩で作った瓶に魔法陣を刻んでみたらどうだろう。ポーション瓶の魔法陣ってかなり単純だから母さんでも刻めるかもしれない。ミスリルで彫刻刀かニードルを作ってみようかな。


「試してみようか。今からさ、僕が溶岩でポーション瓶の外側を作ってみるから、母さんがミスリルニードルで魔法陣を刻んでみてよ。魔法陣は、紙に複写した物を出すから、それを見て刻んでみて。ミスリルニードルをまず作るね。」


「アルケミー・ミスリルニードル」


 僕は、木の柄にミスリルの針を付けたものを作った。


「アルケミー・ボトル」


 溶岩を材料に黒くて光沢のある石の瓶を作ってみた。化粧水なら一月分位の領が入る大きさだ。


「コピー・魔法陣」


 紙にポーション瓶の魔法陣を写して取り出し、母さんに手渡した。


「只の星型にしか見えないんだけど、それであってるの?」


「あってるよ。初級ポーション瓶だからね。魔力を瓶の中で回し続ければいいんだって。その星形に沿って魔力が回り続けて瓶から抜けていかないなだってさ。」


 母さんは、瓶の底にニードルで魔法陣の星型を掘り込んでいった。あまり力を入れていないように見えるんだけど、魔法陣は、くっきりと彫り込まれていた。やっぱり母さんは、魔力の使い方が上手なんだと思う。


「最後に、母さんの魔力を流し込んでみて。ぼんやり光ったらうまくいっている証拠だよ。」


「うぁ。光ったわ。不思議ね。電気も何も通したわけじゃないのに。」


「じゃあ、上手くいったようだね。手で彫り込んで魔法陣を作ることができる人初めて見た。」


「何となく、魔力の通し方も分かったわ。この前のバッグ貸してくれない。物入れる練習してみるから。」


「ああ、マジックバッグのこと。いいよ。素材は何で作る?この前は、ブランドバッグが良いって言ってたけど、手持ちの古いブランドバッグを修理してマジックバッグに加工しようか?」


「古いので良いのよね。壊れていてもいいの?〇ーチの壊れたバッグ。捨てきれずに持ってたんだ。それって直して改造できるの?」


「やってみるよ。ちょっと貸してね。リペア。アルケミー・マジックバッグ」


「どうかな?」


「何これ。新品みたいじゃない。それに、壊れていた所治ってるし、傷もなくなってるよ。こんなの荷物入れに持ってったら、目立ってしょうがないわ。ちょっと待って、もう少し目立たないバッグに仕掛けをして。」


 次に持ってきたバッグは、母さんが普段使いにしていた大き目のバッグだ。少し重いけど、たくさん入るから車で移動する時にはこれが良いなんて言ってたものだ。


「リペア・アルケミー・アイテムバッグ。」


「これでいい?」


 修理して、出来上がったバッグを母さんに手渡す。


「ここの溶岩プレートにさっきの魔力を登録するのよね。そして、充填ね。分かってきたわ。何か入って行ってる。」


「あれ、もう、入ってるって感じがしないわ。満タンになったのかしら。」


「何か収納してみたら。そうだな…。そこにある雑誌なんてどう?少し重そうだけど収納したら重さを感じなくなるよ。」


「分かった。入れてみるわ。ええっと、溶岩プレートの方にスイっとね。入った。重くならないは。これって便利ね。どの位の大きさのものまで入るの?」


「ええっと、父さんのゴルフクラブっと、スイっと。私の美顔器っとスイっと。イスなんてどうかしら。この口から入らないから無理よね。椅子っとスイッと。入っちゃったわ。不思議ねぇ。」


 やっぱり母さんは、魔力操作がうますぎる。普通イスなんか入れることできない。最初は、バッグの口よりも大きな物は難しい。それなのにうちの母さんと来たら…。スイッとスイっと何て言いながら何やらなにやら入れて言っている。後で、取り出すの大変になっても知らないよ。


 後で、ネットで飛行機の作りについて調べてみよう。組み立て説明書には、初心者向けのラジコンって書いてあったから、初心者向けじゃなかったらもっとコントロールしないといけないパーツがあるかもしれない。


 今日は、もう出かけないで飛行機のこと調べよう。でも、久しぶりに図書館に行ってみようかな。


「ねえ、母さん。飛行機のことって詳しく書いてある専門書なんてあるかな…。」


「そうねぇ。航空力学何ていう分野があった気もするけど、ネットで概要を調べてみて図書館で本を探してもいいかもね。お昼から図書館に行ってみる?」


「お願いして良い?それから、ブランデンブルグ協奏曲ってどんな曲なのかな。2楽章って言うのがとっても短い曲なんだそうだけど。」


「2楽章は知らないけど、ブランデンブルク協奏曲ってコマーシャルなんかでも良く使われている曲よね。ネットで検索したらたくさんあるんじゃない?」


「お帰り、玲。レイ、帰っちゃったんだ。」


 母さんとそんな話していたら父さんがリビングにやってきた。レイに頼まれてラジコン飛行機をネット注文していたんだそうだ。昨日はかなり探し回ったけど、初心者向けの簡単な物しかなくて、操作性があんまりよくなかったからもう少ししっかりしたラジコンを探してくれと頼まれたんだって。


「レイと一緒に飛行機を飛ばしに行ったんだけどな。あのラジコンは、2チャンネルリモートコントロールモードだから飛ぶには飛ぶんだけど、着陸があまりに難しくてな…。まともな着陸ができなかったんだ。調べてみたら、モーターコントロールやラダー、昇降舵、フラップ何かをコントロールできる4チャンネルリモートコントロールモードって言うのが本格的なラジコンらしくてな。レイの転生に間に合うように調べていたんだけど、購入手続きの途中で時間になっちゃて。まあ、ネット購入だから到着まで何日かかかるんだけどな。」


「あれ?そう言えば、そこに置いてあった僕のゴルフクラブは?」


「あれ、邪魔だから片付けちゃった。」


「片付けたってどこに?」


「このバッグの中。」


「えっ?…、そんなバッグに入るはずないでしょ。」


「今から使うの?」


「使わないけど、どこに片づけたの?」


「使わないなら出さなくていいよね。」


「ええっ、ええ?本当にバッグの中なの?」


「本当に。」


「本当に?」


「本当だよ。母さん、マジックバッグを使うことができるようになってさ。父さんも使ってみる?」


「使ってみるって、そりゃあ、使える物なら使ってみたいよ。」


「ラジコン飛行機を注文してくれたお礼に、使い方練習に付き合ってあげるよ。」


「本当か?ええっと普段使っているバッグをマジックバッグにできるのかい?」


「できるよ。母さんのバッグも二つマジックバッグにした。」


「フフン。これとこれ、両方ともマジックバックよ。良いでしょう。」


「なんか新しくなってないか?」


「うん。リペアしたからね。父さんのバッグもリペアしてマジックバッグに改造しようか?少しだけ重くなるけど、中に入れたものの重さが無くなるから結局軽くなると思うよ。」


「その前に、使うことができるようになるかどうか試したいんだけど、母さんのバッグで試せないのか?」


「ええっ。女性のバッグの中引っ掻き回そうって言うの。それは…。いくら夫婦って言ってもねぇ。」


「ええっ。まだ、何も入れてないだろう?そんな意地悪言わないで試させてよ。」


 そんな、夫婦漫才なやり取りの後、父さんの魔力操作練習をした。僕の右手から出た魔力を父さんの左手で受け取って、父さんの右手から僕の左手に返すと言う練習。30分程で魔力を出すことができるようになった。それで、母さんのバッグに魔力登録をして、自分のゴルフクラブを取り出してみて練習とお試しは終了。


 魔力登録は、母さんが許可したり取り消したりできた。登録は分かったけど取り消しの方法は良く分からない。バッグの情報から自分以外の情報を削除すればいいって言ってたけど、やっぱり良く分からない。


 父さんが持ってきた普段使いのバッグをリペアして溶岩プレートにマジックバッグの魔法陣を書き込んで合成。父さんの魔力で満たせば、使うことができるようになる。母さんみたいにバッグの口よりも大きな物は入れることが難しかったようだけど、バッグの中に入れることができる物はすんなり収納出来ていた。ゴルフクラブもいれることができていたよ。


 お昼ご飯は、外食。ファミレスで食べた。それから家族で図書館に行って、夕方までそこで過ごした。図書館から帰ってくる途中、20分位で寝てしまった。家について起こされたけど、フラフラになりながら御飯とお風呂を済ませて、8時30分には寝たよ。


 次に、異世界に行くのは16日後か17日後だ。


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