第250話 飛行機実験とゴーレムメイド

 朝起きるとラジコン飛行機の精錬式がホームスペースにコピーしてあった。昨日の内にコピーが終わっているかなって思ってたのだけれどラジコン飛行機がなかなか買えなかったのかな。


 一つの精錬式には、モーター部分もついていたけど、最初の精錬式で作った飛行機はモーター部分が空になっていた。昇降舵や方向舵、補助翼を動かすコントローラにつながってる部分も組み上げてあったからそこをコアでコントールできるようにつなげば良い。


 プロペラをゴーレムコアに繋いで回転翼と同じような動きができるようにする。プロペラを回転させるコアと昇降舵や方向舵や補助翼をコントロールコアが操作できるように可動部分を作っていく。後は、プロペラを回転させているコアとコントロールコアをミスリル導線で繋ぐ。これでコントロールコアがプロペラの回転も制御できるようになる。


 スムーズにこちらからの指示を伝えることができるようににシエンナに使役してもらう。まず、シエンナに飛行機の各舵の動きとそれに連動した動作を理解してもらわないといけない。昇降舵が上下すると、飛行機本体がどのように動くのか。同様に方向だの動きと本体の動き、補助翼の動きと本体の動きだ。このラジコンは、初心者向けらしいから細かい操作はできないけど、それでもかなり複雑な操作が必要のようだ。


 発泡アルミで、軽量で丈夫な機体を作って飛行実験開始だ。


 プロペラを回し始めると直ぐに飛行機が動き始めた。方向舵を動かし、飛行機の向きを変える。徐々にスピードが増し、ふわりと機体が空中に浮いた。


「速すぎて難しいです。とにかく、上空に上がってみます。」


 くるくると工房の中を回っていた飛行機だったが、シエンナの一言で結界を越え、上空に上がって行った。


「とにかく忙しいです。真っ直ぐ飛んでいてもあっと言う間に遠ざかっていきます。」


「上空を大きく旋回しておいてくれ。ドローンで追いかけてみよう。」


「シエンナを中央で操縦はアンディーで良いかい?僕を一番後ろに乗せてくれる?」


「了解だ。」


「じゃあ、俺とミラ姉で後を追う。」


「じゃあ、出発する。」


 アンディーが離陸し、その後をロジャーが追ってきた。


 実験用飛行機は、上空を大きく旋回している。


「シエンナ、もう少しゆっくり飛んでも大丈夫だと思うんだ。できるだけゆっくり飛んでみてくれる?墜落しないぐらいゆっくり。」


「分かりました。ドローンの回転翼のイメージで魔力を駆動に流していました。もう少しゆっくりですね。」


 かなりのんびり飛行できるようになった。飛行も安定している。


「プロペラが一つなのにあんなにゆっくりでも浮いていることができるんですね。不思議です。」


「じゃあ、動きのコントロールを練習してみよう。」


「高度をスムーズに変えながら上下移動を繰り返してみよう。そうだ。じゃあ、進路を左右に変えながらスラローム飛行だ。」


 シエンナは、僕がイメージしたような飛行をコアに支持し再現することができた。プロペラの回転数を抑えたことでコントロールに余裕ができたようだ。


「じゃあ、スピードテストだ。どの位のスピードが出せるのか。シエンナ、最高スピードでこのまま真っ直ぐ。アンディー頑張って追いかけて。」


「「了解」」


 飛行機とドローンの追いかけっこが始まった。小さい飛行機だけど前方に進む力は、ドローンの比じゃない。揚力は翼が生み出しているから、プロペラは全て前に進む力に使われている。ドローンは、どんなに急いでも水平方向のスピードには限界がある。


 水平方向にプロペラを付けたらもう少しスピードアップが図れるかもしれないけど…。バランスが崩れてダメだろうな。兎に角、飛行機は、早かった。


 一個のコアで作った試験機にしてはスピードが出ていた。このドローンと変わらないくらいのスピードだった。問題は着陸だ。結界を切って工房の中に入った後、できるだけスピードを落として着陸したのだけど、見事にひっくり返った。人が乗っていたら大怪我だけで済まないかもしれない。


 その後シエンナは、何度も離陸と着陸の練習をしていたけど、今日一日では難しかったようで、上手く着陸できたのは50回中9回だった。それでも、最後の方は、3回連続でうまく着陸出来ていた。


 僕も地球に戻って飛行機の勉強をもう少ししておこう。このままじゃあ、有人飛行はだいぶ先のことになりそうだ。


 午前中、飛行機の実験をして軽い食事をした。こっちの世界は昼ご飯の習慣が根付いてないようだけど、僕は、お腹がすくから食べたい。


 それから、メイドゴーレムの製造実験だ。家事を担当するゴーレムだから、細かい作業ができないといけない。また、掃除の意味がしっかり分かって、人が快適に生活出るように家を整えることができないといけないことになる。


 細かい作業ができるゴーレムとなると指先は適度に柔らかくないといけない。食器や食材を持ったり、簡単な調理もできるようになったら素晴らしい。まあ、今必要なことは、部屋の掃除と片付けができること、空気の入れ替えや簡単な家屋の補修もしてくれると助かる。


 その内、調理ができたり、接待ができたりするゴーレムが作れたら凄いと思うのだけど…。まずは、お掃除ゴーレムだ。


「シエンナ、今から、小さいゴーレム。シエンナ位の大きさのゴーレムを作るから、掃除の仕方を教えてくれないか。埃を落として床を掃いたり、水拭きをしたりする方法なんだけど、できそうかな?」


「はたきの使い方を教えるのは難しいかもしれませんね。ゴーレムは力加減があまり上手じゃありませんから。できるだけ軽くて柔らかいはたきを使わせてくださいね。」


 シエンナに言われたようにできるだけ軽く薄く作った布をはたきの先にしてシエンナと同じくらいの大きさのゴーレムに持たせてみた。


「あなたはメイよ。今からはたきの使い方を教えるわ。」


シエンナに使役されたメイドゴーレムはメイと名付けられた。メイドのメイ。少し安直な気もするけど覚えやすいからいいか。


情報共有ではたきの力加減をメイに伝えるシエンナだけど、本当に苦労しているようだ。軽く、ゆっくりと繰り返しながら自分も手を振っている。工房の壁には、そう物がないから良かったけど、パーティーハウスだったら飾り皿の何枚かは割っていたかもしれない。初めは、壁に穴が開くんじゃないかと思える位勢いよくはたいていた。


はたきの調整がうまくなって、壁に穴も開かないようになったら、床を掃く練習だ。これも、あんまり勢いよくすると床の物が飛ばされたり壊されたりしてしまうから、しっかり回りを見て、優しく掃き残しがないように箒を使えないといけない。これもしばらく練習してイスや絨毯を壊したり破いたりしないで使えるようになった。


次は、拭き掃除。階段や、壁、窓の周りなんかは埃がたまりやすい。シエンナも細かい掃除なんかほとんどしないから大雑把だ。ある程度力加減ができるようになったらパーティーハウスに連れて行ってもらってメイドの皆さんに指導してもらった方が良いかもしれない。今度来たばかりのメイドの皆さんにお願いするのは心苦しいから、以前からいたメイドの皆さんにお願いしてもらおうかな。


メイがある程度、掃除ができるようになったら、もう一体コピー精錬でメイドゴーレムを作って、情報共有でシエンナに教えてもらったことを共有させる。コピーしたメイドゴーレムはメアと名付け、メイが家事スキルを身に着けて戻って来るまで工房が汚くならない程度にハウスキーピングをしてもらうことにした。


王宮に頼まれた記念品を作る為にコア採集にしばらく来ないといけないって言ってたから、時々工房を覗いてもらうことにする。今日は、夜の8時過ぎに地球に戻る。後3時間程度しか時間はない。


「もう、今回の転生でしないといけなかったことってないよね。今回は、僕の用事って言うより、レイの練習の方が大切だったからね。うまくいったようで良かった。」


この後、お風呂に入ったり、夕食を食べたりして時間をつぶした。


「あっ!大事なことを忘れる所だったよ。」


「どうしたんだ?」


「依頼終了証に評価とサインを書き込んでなかった。」


「ミラ姉、終了証を出してくれない?」


「そうだったわね。金貨27枚を不意にするところだったわ。じゃあ、評価とサインをお願い。勿論A評価よね。」


「はい。勿論です。途中で討伐依頼もこなしたし、まあまあの収入になったね。」


「そうね。魔石と皮の収入もあるはずだからかなり高額になるはずよ。」


「そろそろ時間だ。また来るね。みんな元気で。」


「玲も元気で。地球で美味しい物見つけたら教えに来てよね。」


「元気で。メイの教育は任せて下さい。シャルたちにお願いするだけですけどね。」


「じゃあな。地球で面白いことがあったら、次に来た時に教えてくれ。ケーブルカーとトラックは次に来る時までには完成させておくからな。」


「頼んだよ。アンディーが手伝ってくれるなら大丈夫だね。」


「じゃあな。次は、ダンジョンに潜ろうぜ。」


「うん。楽しみにしてる。またね。」


僕はベッドに横になりダイアリーを開いた、ケーブルカーのこと飛行機の実験結果、ゴーレムメイドのことを書いた日記の用紙をホームスペースにコピーした。そして、ダイアリーを開く。意識が日記に吸い込まれていく不思議な感覚だ。


「また来るね…。」


‐⁂‐⁂‐⁂‐⁂‐⁂‐⁂‐⁂‐⁂‐⁂‐⁂‐⁂‐⁂‐⁂‐⁂‐⁂


「ただいま。」


「お帰り。楽しかった?」


ミラ姉が尋ねてきた。


「うん。地球に友だちができた。楽しかったよ。」

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