第239話 ショートタイム転生

 朝起きて、ダイアリーを見ると最近の出来事が細かく書いてあった。向こうの世界でも、もうすぐ11月になるのか…。でも、一月ひとつき35日なら、こちらの月がすぐに追い抜いてしまうな…。


 王室との魔術契約は、何時にしたらいいのだろうか…。今年は、11月3日も23日も連休にならない。レイに学校に行ってもらえばどうにかなるけど、いきなり学校に行くのはハードルが高い気がする。もしも、学校に行ってもらうなら最低でも上村さんと本田さんたちには会わせて、サポートを頼んでおかないといけない。


 二人に合わせる日は、今週の11月3日から5日にかけてしかないだろう。本田さんの誕生日の次の日、3日の朝、レイに転生してもらって、二人と合わせる。父さん、母さんのサポート付きでだ。だから、二人がいる所で転生する必要がある。その後、レイと学校での過ごし方の打ち合わせをして金曜日だけ学校に行ってもらう。何か不都合なことが起こったら早退だ。そこんところは、本田さんたちに重々、お願いしておく。学校の友だちの名前や教室なんかは、僕の記憶を参照できるはずだから何とかなると思う。


 王室との魔術契約を11月の23,24,25,26のどれかにしてもらえれば、学期末試験ともかぶらずに、レイには2日間だけ学校に行ってもらえばいいことになる。


 王室の皆さんやレイたちの都合で、この日程で行けるかどうか決まるけれど、一応こちらの日程情報としてダイアリーに書き込んでおこう。ちなみに明日。向こうのカレンダーで言うと明日の夜が、こちらは11月1日の朝になる。だから、今日から数えるとレイと本田さんたちを会わせるのは、向こうの3日後の夜20時46分だ。


 王室のと魔力契約の日程は、その時、直接打ち合わせをして決めて良い。タブレットで通話できるようになったなら、可能なはずだ。そんなこと考えて一応、次の転生日をダイアリーを書き込んだ日の三日後の19時00分にしても良いかと提案することにする。急な日程設定だけど、都合が付くようだったら、本田さんたちにも相談しないといけない。


 朝の間にそんなことをダイアリーに書き込んむ。レイが、ダイアリーを操作していたら、望まぬ転生になってしまうから、ベッドの上に寝転がっての作業だ。レイもこの時間にダイアリーを操作しているなら同じように用心しているはずだ。そう信じてバタバタと日記のページをホームスペースにコピーして、リペア…。




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 あっ、部屋と違う場所。違うベッドの上。朝の忙しい時に…。転生してしまったよ。隣を見るとロジャーが…、居ない。慌てるな、思い出すんだ。レイの記憶を探って…。そ、そうだ、ロジャーとアンディーは、もうすぐ部屋に戻って来るはず。飲み物を買いに行ったんだ。僕の分も買って来てくれるって言ってたから、すぐに戻るはずだ。


 良し、丁度良い。ロジャーとアンディーに事情とこれからの予定を話して、出来たら、今日の早い時間にレイに結果を書き込むように伝えてもらおう。王都にいるなら王室との日程調整もしやすいだろう。


「レイ、ジュース買って来てやったぞ」


 ロジャーが戻ってきた。アンディーも一緒だ。


「ありがとう。でも、僕、レイじゃなくで玲なんだよ。思わぬ転生になっちゃって、向こうでレイも慌ててるだろうから、用件だけ伝えて戻るね。実は、王室との魔力契約の日程なんだけど、今日から数えて、24日後から27日後の間にできないかなと思うんだけど、王室の都合を聞いていて欲しいのと、契約に長い時間が必要なら、レイに向こうの世界で過ごす練習をしてもらわないといけないからさ。そのサポート役の僕の友だちと顔合わせをできる日があまりなくてね。それを急で申し訳ないんだけど、今日から3日後の夜8時46分くらいに、3日間ほど転生する時間が取れないか確認して欲しいんだ。僕が、こっちに来て、レイが向こうに行く時間ね。その間は、こっちのレイは、どこかに行ってもらわないとつじつまが合わなくなるけど、できそうかな?」


「おっ、森の賢者様か。3日後なら、貴族の皆さんとの魔術契約も終わっているから大丈夫だと思うぞ。レイだけ王都に残って用事を済ませるということにしておけば、向こうにレイが不在になることは全然大丈夫だと思う。森の賢者様を案内したり、警護するのに俺かアンディーが一緒の方が良いか?」


「そうだね。どちらか残っていてくれる?じゃあ、レイに宜しくね。そして、向こうの僕の友だちはホンダスズさんとカミムラエリさんっていうんだ。二人は、ベルとカラって呼び合ってるけどね。向こうの僕の記憶を探ってくれたら分かると思うけど、それも伝えておいて。じゃあ、戻るね。」


 僕は、二人に伝言して、大急ぎでホームスペースを開いた。何枚かの日記の用紙が広げてある。ダイアリーを開くと、そこに、意識が吸い込まれていった。


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「玲、遅刻するわよ。まだ、寝てるのー?」


 下から母さんの声が聞こえる。無事に戻ることができたようだ。大急ぎで、朝食を食べて、文字通りバタバタと学校に向かった。人目がない所では走ったからいつもくらいの時間には学校に着くことができた。


 学校に着いて、一番に本田さんに11月3日の都合を聞いた。前の日に家族で誕生パーティーするけど3日は特に予定はないと言うこと。それで、3日の朝、9時位に上村さんと一緒に家に来てくれるようにお願いすると、カラに確認して返事するけど、たぶん大丈夫だと言ってもらった。


 これで、こっち側の準備は終了だ。


 あっ、父さんと母さんにもお願いしないといけなかった。

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