第236話 叙勲式とフォレス・アグリゲート

 早朝。僕たちは、王宮に向かっている。自主的にではない。呼び出されてだ。叙勲式に合わせて様々な手続きがいるのだそうだ。その為に王宮執事長が朝早く宿に来てくれた。わざわざ。勿論、宿の方にも連絡があってたから、昨日、夕食から帰って来た時に伝えられてはいた。明日は、早朝から準備がありますからねと。


 それにしても、早すぎるだろう。早朝と言っても、まだ暗い。夜が明けていない時間だ。今日は、冒険者としての叙勲式だから、服装は、冒険者服。全員一番上等な物を準備していた。それを着て王宮に向かったんだよ。だって、着て来いって言われていたから。


 王宮についたらすぐに、その冒険者服を脱がされた。下着だけにされて、浴場に連れていかれた。もちろん、男女別たよ。男性陣全員裸に向かれてごしごしと清められている。きっと、女性陣はもっと大事に扱われていると思うけど、男性陣には扱いが荒い。まあ、全員冒険者で、ほとんど全員が身体強化を持っているから少々乱暴に扱われても怪我したりすることは無いんだけれど、何か嫌だ。僕は、身体強化ポーションを飲んでいたから良かったけど、飲んでなかったらきっと怪我していた。プンプンだ。


 そんな風に少し不機嫌になっていると、とってもいいにおいのする香油を塗られたり、マッサージされたりしてなんかとってもリラックス気分になってきた。この扱いの高低差は何なんだ?


 暫くして、真新しい下着と着心地の言い部屋着を渡された。清められてようやく王宮の中で呼吸するのを許されたようだ。そんな感じかな…。


 あてがわれたへの中でくつろいで居ると部屋の中に軽い食事が用意され出した。まだ、太陽は上っていない時刻。早い時間に起こされたから少しお腹は空いているけどそこまでではない。


『コンコンコン』


 ドアがノックされた。


「どうぞ。」


 返事をすると、ドアが開き、ロジャーとアンディーが入ってきた。


「レイ、お前大丈夫だったか?凄い勢いでごしごしされただろう?」


 ロジャーが心配そうに聞いてきた。


「痛かったよね。身体強化ポーション飲んでなかったら怪我してたかもって思うよ。」


「そうだろうな。俺も、身体強化かけたもん。」


 そんな話をしているとドアがノックされミラ姉とシエンナが入ってきた。


「レイ、大丈夫だった?」


「ええっ、そんなに聞いてくるってことは、女性陣も凄い勢いでごしごしされたの?」


「まあ、それなりにすごい勢いだったわ。男性陣とは比べることはできないけどね。さっき、すれ違った、ボフさんたちがすごかったって言ってたから、少し心配になってね。」


「みんな部屋を出てうろうろしてるの?」


「そうね。軽食を食べ終わったらラウンジでおくろぎくださいって言われたからね。レイは、まだ、軽食食べ終わってないんでしょう。」


「そう言えば、まだ、食べ終わっていなかった。もう少し食べようかなって思ってたんだった。」


「軽い食事だけど、食べていた方が良いみたいよ。みんな軽食を食べ終わったらこれからのことを説明してくれるって言ってたわ。」


 僕は、少し急ぎ気味な軽食を食べ終わって、食器なんかを片付けてもらうように頼むとミラ姉たちと同じように、しばらくラウンジでおくつろぎくださいって言われた。急ぐ必要はなかったのかもしれない。


 暫くと言っても僕がラウンジに移動すると直ぐに集合がかけられた。集合と言っても会議室のような場所にではなく、ラウンジの端の方にある説明を受けるための小さな観覧席のような場所にだ。席の前にはステージのようなひな壇がある。僕たちが今座っている席は、そのひな壇をよく見ることができるように傾斜が付いている。そんな席に座るのは初めてだ。


「私は、王国の内務を任されているノエル・メレディス・ベニントンと申します。今回の叙勲式についてこれからの流れと、皆様にしていただくことをお伝えいたします。」


 ノエル内務卿から伝えられたことを簡単に言うと、僕たちは、今回、王国の守護者たる英雄として叙勲されるからしい。国難の魔物ヒドラを討伐した英雄なんだそうだ。その働きを称え、国家の英雄に勲章を与え、広く知らしめる式らしい。


 つまり、こいつらが、ヒドラを倒して国を救ってくれた奴らです。王国は、それを認めて国民に広く知らせるとともに褒美を渡すから、みんなも知っておくようにっていう式なんだそうだ。しかも、全員に男爵位を叙爵するといっている。


 その上、王都に僕たちフォレス・アグリゲートのアグリケートハウスを下賜してくださるのだそうだ。その家を維持する為の人員もこれから先、10年は、王宮が責任を持つという太っ腹ぶりだ。


「内務卿、私たちは、王都で過ごす時間はとても少ないと存じます。そのような私たちの為に、王都にアグリケートハウスを用意していただくなど、もったいないことだと存じますが…。」


 ミラ姉は、へりくだって行っているのではなく、ほとんど使わない拠点なんていらない気がすると言っているのだけど、伝わったかな…。


「そう申すな。お主たちがフォレス・ポインター砦に立派な拠点を構えていることは知っておる。しかし、これからは、王都にも拠点が必要になると思うぞ。お主らは、必要な時だけ利用すればよい。お主たちがいつも利用している宿よりも美味しい食事を作ることができるコックも雇っておる。王都での生活の方が砦での生活より心地よいと感じるようになると思うぞ。まあ、楽しみにしておくのじゃな。」


 それから、叙勲式の進め方や、それぞれの挨拶の仕方等事細かに説明されて、セリフを忘れてた時の為に取り出して読むことができるカッコいい式辞用紙を準備してもらった。全員、叙勲式の時に一言ずつ挨拶をしないといけないそうだ。


 叙勲式は、とっても緊張したけど、滞りなく終わった。流石、ティモシー閣下だ。僕たちが今回の働きで頂いたもの。

 男爵位、これって全員って言うのが凄すぎる。なんか変だ。

 王都のアグリケートハウス。これもあまり使わないと思うんだけど…。今、改装中ということで、一月後に引き渡されるのだそうだ。

 報奨金、アグリゲート全体に、金6000枚。

 それと、各パーティーには、国宝級の防具が各自に送られた。これからも、この国の守りの要となれというメッセージだそうだ。


 そのお礼の記念品として、ヒドラの魔石を送った。本来、ヒドラ討伐の褒賞としての叙勲だから記念品なんかはいらないらしいのけど、ヒドラの魔石を持っていても使い用がないから献上する。国なら、火山噴火の予防にも使えるし、これから大量に必要になる魔力を貯めることにも使える。


 式典が終わって、ティモシー様ができれば、3人乗りドローンを何台かとゴーレムバス(改)を可能なだけ譲ってくれないかと譲ってくれないかと言ってきた。ドローンなら可能だけど、バスは、研究所に注文して欲しいと答えておいた。


 それと、僕たちが乗っているアグリゲート用ドローンも1台注文したいそうだ。ロイヤルドローンだけでは外交と内政の両立が難しいとぼやいていらした。


 アグリゲートのメンバーと話し合って、国に対する叙勲の記念品として3人乗りドローン4機とアグリゲート用ドローン級を1機、渡すことにした。砦に帰ったらしばらくは、ガーディアン級のコア集めの日課を復活させないといけないことになる。


 こうして、フォレス・アグリゲートの存在は、王国内に広く知られることになった。今までは、僕らの名前を知っているのは、王宮関係とロックリザードの討伐関係者と町のギルドの皆さんくらいだったけど、今回の叙勲式で、多くの人に知られることになってしまった。


 これから先、面倒なことにならなけりゃいいんだけど…、なんて思いながら、久しぶりの王都での休暇を楽しむつもりだ。


 余談だけど、バッグは、研究所長と研究企画部長が叙勲式のすぐ後に、王室に献上した。王室の皆さんは、ドローンやロイヤルカーができたことで様々な場所に一泊や二泊でお出かけになることが増えたらしく、大変喜ばれたそうだ。


 今までだったら、ちょっと地方に行くだけでも1週間以上かかることが当たり前で、そんなに王宮を開けられないという理由でめったに王室の方が地方に向かわれることは無かったのだけど、1泊や2泊で国外まで行くことができるようになったからね。


 ゴーレムバスが国内を走り回るようになれば、他の貴族の方も同じように短期間の遠出をすることになるだろう。そうなると高級バッグの需要は、爆発的に増加する。2泊から3泊の衣服を入れることができる見た目のお洒落なバッグが売れないわけがない。


 そんな、皮算用は、多分、現実のものになるだろう。僕が、ゴーレムバス(改)の王宮からの要望を、所長と研究企画部長に伝えた時の二人の鋭く光った目がそう言っていた。所長たちは、研究所に一足先に帰ると言っていたからな…。バスを何台くらい王宮に収めるつもりなんだろう。バスは、運転手の訓練もいるからね。すぐに運用できるようにはならないと思うけど、王国の交通革命は、始まったばかりだ。






【後書き】


第6章 フォレス・アグリゲート発足編 いかがでしたか?

 フォレス・アグリゲートは、発足直後から大変有名になってしまいました。

異世界編も少し話が進みましたが、地球の方が進展具合が急です。

もう少し、異世界の話が中心になると思いますが、地球編もそろそろ動きがありそうな…。


次は、王国で超有名になってしまったフォレス・アグリゲートへの指名依頼が中心になるかな…。お楽しみに。


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今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

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