第234話 救援活動と治療報酬

 僕たちが、会敵した時には、商隊の防衛線が瓦解する時だった。沢山の魔物が防衛線の中になだれ込み、護衛の冒険者たちに襲い掛かっていた。魔物の後ろを、盗賊たちが守っており、脱出口が確保できない。


「シエンナ、防衛線が破壊された場所にオットーを移動させて。防衛線を立て直して、盗賊と魔物を分断するように配置。」


「了解。ソーディー、ガーディー防衛線の近くにいる魔物を排除して!オットー、突っ込むわよ。」


「デッキの上の近接部隊。防衛線の中の魔物を排除して!一匹残らずよ。」


『了解。』


 アンジー、ドロー、シェリー、ヴェル、ロジャー、アンディーが突入した。次々に魔物を屠っていく。後続の盗賊にはルーさんがアローレインで牽制している。盗賊から矢が放たれるけどガーディーの盾と、オットーが左のゴーレムハンドに持っている盾を越えてくることは無い。ボフさんと、サムさん、ヒューブさんとオーさんは、最少の出力に設定した魔石ライフルで盗賊の手足を打ち抜き、無力介してく。盗賊に対して容赦ない。


 僕と、ミラ姉は、防衛線の中に駆け込み、負傷者の救護だ。ミラ姉は、次々にアンチドートとヒールを連発しながら怪我人を再生していく。僕は、上級ポーションを振りかけて、飲ませて救助していった。


 15分程で、魔物は全て倒され、盗賊たちは戦闘不能になっていた。護衛の冒険者に亡くなった方はいないようだ。


「あなた方は…、今、王都で噂になっている。聖女様のパーティーでしょうか?」


 まずい。ミラ姉がブチ切れるパターンだ。


「ありがとうごさいます。本当に。ありがとうございます。」


 商隊の隊長と護衛冒険者のリーダーと思われる人たち3人がミラ姉の前で頭を深々と下げている。


「このご恩は、必ずお返しいたします。聖女様、私たちは、聖女様のしもべでございます。聖女様にお会いできた…。この不運な出来事も、幸運だとさえ思えます。それに、仲間は、大怪我はしましたが、誰も命を落としていません。これを幸運と言わず、何と申せばよいのでしょう。ありがとうございます。」


「野盗にしかも、魔物使いを有する野盗に襲われるなんて不運以外の何物でもないと思うがな…。まあ、間に合って良かった。それで、怪我人なんだが、このまま、商隊と一緒に1週間以上かけて王都に向かうのは難しいだろう。うちのパーティーにはアイテムボックス持ちが何人かいるからな。それに入れられる荷物は王都まで運んでやって良いぞ。怪我人は、後で来るゴーレムバスに乗っていくがいい。」


「本当でございますか。何から何まで有難うございます。しかし、この馬車は、殆ど空なのでございます。羊などの生き物を地方の村に運んだ帰りでしたから。生き物はアイテムボックスに入れることができませんから…。」


「それで、空なのだな。しかし、この人数で空の馬車を運ぶなど割に合わないだろう。」


「いえいえ、馬車は空ですが、私たちにもアイテムボックス持ちとアイテムバッグ持ちが居りますからね。アイテムバッグは、ロックバレーの道具屋で購入した物ですが、大変役に立っております。」


「そう言うことか。では、馬車もそのアイテムバッグなりに入れて、王都までバスを使って利用するか?」


「馬車は、馬が居りますから無理です。最低人数で警備しながら王都まで戻りますので、怪我人の移送をよろしくお願いいたします。皆さんはしばらく王都にいらっしゃるのですか?王都に到着したら、お礼に参りたいのですが…。」


「暫くと言っても5日程だからな。お主らが王都に到着したころには、もう砦に戻っていると思うぞ。お礼ならギルド経由で支払っておいてくれ。一人銀貨1枚だ。それは、治療代な。盗賊の討伐褒賞は、私たちで頂いてよいのか?」


「勿論でございます。私たちが皆さんに救援依頼料を支払わなければいけない立場ですから。」


「それなら、依頼料はいらない。しかし、救援報告だけはしておいてくれ。ギルドポイントは、フォレス・アグリゲートに付けるように伝えてくれればそれで良い。」


「と、言うことは、今回の救援料は、たった銀貨10枚で良いということでしょうか?」


「そう言うことになるな。治療したのが10人だからな。」


「そ、それは、あまりに少額…。私たちの気持ちが…。」


「依頼されて、救援したり治療したのならもっと頂くよ。しかし、勝手に救援に駆け付けて治療したのだからな。そんな状況で高額な救援料を吹っ掛けたらやらせ救援と思われてしまうだろう。そう思われたくないだけだ。気にしないでくれ。」


 男前のミラ姉は、そうずばりと言い切って救援料として、金貨1枚を受け取っていた。話が終わった頃には、ゴーレムバスが到着したから怪我人の10人を乗せて、馬車は2台にまとめてそれぞれの馬車を馬6頭ずつで引くことができるようにアンディーにくびきを改造してもらっていた。残りの4台の馬車は、アイテムバッグの中に入れたようだ。


 冒険者8名と商人6名という小規模となった商隊は王都に向かって馬車を走らせていった。


 僕たちもバスに乗って王都に向かったけど、シエンナとアンディー、ドローさんとソイさん、シェリーとヴェルの6人は、盗賊の移送の為の牢屋付きの馬車を3台王都まで移送する役を引き受けてくれた。近くの町じゃあ盗賊の人数が多すぎて無理だろうということで王都まで移送することになったからだ。


 牢屋付きの馬車は、とにかく安定性が悪い。時速100kmも出すと転倒する危険がある。かなり改造して、時速100kmは出せるようにしたけど、ここから王都までだと2時間以上かかる。大変だけど、頑張って欲しい。


 僕たちが王都について、2時間以上遅れてアンディーたちが宿に着いた。3時間近かったかもしれない。王都について盗賊を衛兵に引き渡すときにも色々あったらしい。何しろ、ここ一月に数件の被害届が出されている懸賞付きの盗賊団だったらしい。


 懸賞金は、金貨100枚。その検証受け取りの手続きにも時間がかかったと言っていた。この後、討伐証明を持って冒険者ギルドにもいかないといけないそうだ。それは、ミラ姉たちにお願いすると言っていた。当のミラ姉は今お風呂中で、この後冒険者ギルドに行かないといけないなんて言ったら機嫌が悪くなるかもしれない。それは、アンディーが伝えることになった。


 お風呂上がりのミラ姉にアンディーがさっきのことを伝えたら、怒ることなんてなくボフさんとヒューブさんと一緒に出掛けて行った。髪は少し濡れていたけど、機嫌は悪くならなかった。報奨金が出たのなら、みんなでご馳走食べに行きましょうなんて言いながら出かけて行ったから、大丈夫だ。


 夜は、みんなでご馳走を食べに出かけた。冒険者ギルドに行く前に宿のカウンターでレストランの予約をお願いしたんだそうだ。シャルたちも一緒に食べに出かけた。みんな幸せそうに食べていたよ。本当に美味しいレストランだし、一部屋を貸し切っていたから、マナー何て気にしないでいつも通りの楽しい食事だったからね。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る