第232話 誕生パーティーの準備

 今日の学校は、特に何事もなく無事に終わった。帰りには、明日の集合時間と集合場所を確認して家に戻った。食事を終え、風呂に入った後、誕生日プレゼント製作を開始した。


 溶岩はある。今から精錬してミスリルを抜く。そうしないと溜めた魔力があっと言う間に抜けてしまう魔道具になる。つまり、役に立たないってことだ。精錬を2回ほどして純粋な溶岩?にした。5kgの溶岩を精錬して、出てきたミスリルは12gほどほんの少しなんだけど、それが大きな影響を与える。


 2回ほど精錬を繰り返して、ほぼミスリルが出てこないことを確認して厚さ2mm、長さ25cm、幅5cmのプレートを4つ作った。台所のキッチンスケールで重さをはかると62.5gだった。素材を収納して、レイが送ってくれた精錬式に魔力を流し、精錬。10分程魔力を流し続けるとバッグができた。今度は、黄色のキャンバス地でバッグを作る。結局、二人にはオレンジと黄色のどちらかを選んでもらうことにした。オレンジが上村さん、黄色が本田さんのイメージなんだけど違うかな…。


 溶岩プレートに魔力を流し込み、収納スペースを発動させる。収納スペースの大きさは両方ともほぼ同じくらいでおよそクローゼット1台分位。バッグの重さは、600g程だけど財布やハンカチ以外は重くならないようにできる。財布だって一番底に入れると言う人なら重さはなくなる。魔力も感じられるようになっているから収納バッグの中に入れても手探りですぐに取り出すことができるようになるだろう。


 母さんに見せると私も欲しいと言ってきた。魔力操作ができないからアイテムバッグは無理だろうというと、試してみたいとオレンジ色のバッグに鉄アレイを突っ込んできた。そして、バッグを持ち上げて見せてきた。


「あれ?母さん魔力操作できるようになったの?」


「そう。できるのよ。最近、身体強化ポーション使わなくても体が軽いなーって思っていたのよね。まあ、魔力操作ができるようになったら、アイテムバッグや魔道具使い放題だからね。」


「凄いね。で、何色のバッグにする?」


「母さんのバッグにそれ付けることできない。失敗しても良いバッグを持ってくるからさ。ちょっと待って。玲は、ちょっとした傷位なら修理することができるんでしょう。」


 母さんが持ってきたのは、古くなった〇ーチのバッグだった。少し若作りのような気がするけど…。まあ良いか。


「収納スペース、バッグの一番下に作っていていい?」


「大丈夫と思うわ。それってどのくらいの荷物を収納できるの?」


「クローゼット1台分位かな…。どうして?」


「あのね。母さん、今年いっぱいで学校辞めようと思ってね。荷物を少しずつ家に持って帰って来てるんだけど…、個人情報なんかも紛れている可能性があるからなかなか処分しきれなくて一旦持ち帰って整理してから処分しよかなって思ってるのよ。玲なら、持ち帰った紙類全て白紙の紙にすることができるでしょう。お願いして良い?」


「学校辞めるって、仕事はどうするの?」


「次の仕事の目途は立っているの。なかなかハードな仕事になりそうなんだけど、楽しそうだから、大丈夫。父さんは、もう少し今の仕事続けるけど、父さんもその内止めるかな…。父さんも母さんも今までの仕事も好きだったけど、これから始める仕事もやりがいあるのよ。」


「へえー、そうなんだ。で、持ち帰った紙類を白紙にすることだったね。大丈夫だよ。それくらいすぐに終わるしね。」


「じゃあ、さっそくだけど、これだけの書類と本を白紙のA4用紙にしてくれくれない?」


 母さんが持ってきたのは、畳半畳分に5cm程に積み上げられた本や書類だった。


「収納!アルケミー・A4ペーパー10000。」


 それでも書類は4分の1も減らず、それから10万枚以上のA4用紙を作りだした。


「母さん、出来上がったA4用紙使うの?」


「当面いらないかな…。じゃあ、バッグもお願いね。バッグができたらきっと荷物の持ち帰る楽になるわね。重くならないんでしょう。」


「分かった。」


 僕は、バッグと溶岩プレートを接合して、アイテムバッグにした。


「それから、明日さ。友だちとカラオケボックスで誕生会をするんだ。その費用をお小遣いからでいいから出してもらえないかな…。」


「良いわよ。お小遣いからね。前来た二人と一緒なの?」


「そう。あの二人。二人の誕生日は4日違いなんだって。誕生月は違うけど日が近いから一緒にしようってことになったんだ。」


「他には来ないの?」


「来ないよ。受験生だし、あんまり大々的にやっちゃうと怒られるかなってことでさ。」


「そうね。この時期、小学生じゃあるまいし誕生会なんてやってたら、私じゃなくても叱りつけるかもね。」


「そんなこと言わないでよ。僕はともかく、あの二人は、学校でも成績トップクラスなんだよ。僕の色々な秘密にもかかわってもらってるしさ。」


「まあ良いわ。聞かなかったことにしてあげる。羽目を外すなんてことは無いと思うけど、あなた達は受験生なんだからね。その自覚はしっかり持ちなさいよ。」


「はーい。」


 僕は、明日の予算を確保してそそくさと部屋に帰って行った。長くリビングにいると説教されそうだったからね。


「玲。明日のカラオケボックスって予約しているの?」


 僕が部屋でダイアリーを開こうとしていたら下から声がかかった。


「カラオケボックスって予約しないといけないの?」


「一杯なら待つつもりかもしれないけど、せっかく誕生パーティーするのに入れませんでしたってのはカッコ悪くない?」


「そ、そうだね。でも、会員カードなんて持っていないし、まして予約なんてしたことないから…。」


「ちょっと待って、カラオケボックスってどこに行くつもりだったの?」


「2丁目の駅そばのカラオケだよ。」


「そこの会員カードなら持ってるわ。ちょっと確認して私のカードで予約しても良いなら予約してあげる。生徒手帳が必要かもしれないけど大丈夫よね。」


 という訳で、明日は、僕の生徒手帳と母さんの会員カードで予約することができた。集合時間から10分後に予約しておいたから大丈夫だろう。

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