第231話 国王陛下献上用バッグ試作

 朝一番でダイアリーを確認した。玲からの返事がある。今回は、精錬式まで送ってきた。ビジネスバッグとキャリーバッグ。それにリュックサックの3種類だ。リュックサックもこっちの世界の物と違ってたくさんのポケットやファスナー何て言う楽に開け閉めできる仕組みがあって便利そうだ。早速、研究企画部長に見せて製品化の方針を立ててもらうことにした。


 献上品にできるような製品になりそうなのは、ビジネスバッグと王子殿下用にリュクサックではないかということになり、バッグ開発班に渡された。アンディーは今日はそちらには参加しないで例の物開発チームに入るそうだ。例の物って何だろう。秘密開発事項ということで僕も教えてもらっていない。


 僕は、ジャイロモノレールの開発チームに参加することにした。今日から人が乗れるくらいの大きさのモノレールづくりになる。前回試作した模型を拡大すればいいかというとそういう訳にはいかなかった。あのまま大きくするだけだと、ジャイロと駆動部品だけで人が乗る場所を作ることができない。さらに、単純に拡大すると重くなりすぎて高い場所を走らせると危険すぎる。


 対応方法として人が乗ることができる空間を確保するために、駆動コアは、前と後ろしか付けない。異世界の蒸気機関車を参考にした。乗客を乗せる客車には、ジャイロを二つ付けるだけにする。車輪には、ブレーキと走り始めや坂道時の補助を行う小さい駆動コアは付けるけど、基本的には、先頭の車両に引かれる形をとる。


 最後尾にも動力車を付けるのは、バックの必要性があるときに使うのと方向転換をしなくても上りと下りを入れ替えることができるようにするためだ。異世界の新幹線を参考に構造を考えた。


 各客車の長さは25m、幅を3m、高さを4mとして、車輪の直径は300mmで試作してみた。レールは完全な円だけどその半分は固定されている。カーブの角度などによっては、固定部分が真下にならない構造になり、強化魔術などで強度を補助する。


 運転席は一番前についていて、操作盤を通してゴーレムに支持を出す形式だ。ゴーレムとの使役契約は必要ないが、魔力登録はしないと動かすことができない。


 ゴーレムには、モノレール運行において様々な情報が与えられ、列車ゴーレムが処理するものと運転士の指示に従う領域を曖昧に分けている。最重要事項は事故を起こさないことだ。運転士の指示があっても事故の危険性がある場合は、運転士の指示に従わなくても良いと言う風にコアには記録している。


 一つのモノレール車両は、ゴーレムコアを前後の駆動車両に牽引する車両ブラス4個分を合成して、各部品用に切り分けていくことにした。客車が4つだったら4+4+2の10個のコアを合成してジャイロ駆動及び制御の為に20個、駆動の為に2個、そして、ジャイロモノレール車両全体のコントロールの為に1個の23個に分割する。


 この時、駆動用の二つに全体の4割のコアを割り当て、コントロールコアが1割、残りの4割が12個のジャイロの駆動とコントロール。そして、最後の1割が、客車の車輪のコントロールと予備駆動に割り当てられる。スピードが足りないようだったら合成するコアの数を増やせばいい。


 まずは、ジャイロの数と回転数が足りるのかを確認しないといけない。コアの合成と分割は、僕が行った。ゴーレムコアの合成分割用の精錬窯は、今製作中だ。それができると色々な者が作れるようになる。


 車両の揺れは、気にしなくていいと思う。その軽減のためのモノレールだしジャイロだ。ただし、レールには切れ目、隙間が必要だから、その揺れを軽減する仕組みは付けている。スプリングの仕組みを使った軽減装置だ。自家用車のサスペンションを参考にして作ってみた。


 ジャイロは直進時には安定しているのだけど、カーブを曲がる時に、直進時と同じままだと脱線方向に力が働いてしまう。そこで、カーブの時には、ジャイロをコントロールして車両の傾きを変えてやる必要がある。このコントロールもジャイロにつけたコアが行う。


 それぞれの車両のほぼ中央にに取り付けられている2つのジャイロは、逆回転で連携して車両の傾きコントロールを行う。そして、そのジャイロは、車両が固定され、完全に停止する時以外は回転し続けいる。各駅での停車中もだ。その為、運行中のモノレールは、かなりの量の魔力を消費することになるはずだ。


 その魔力を賄うために、運賃は、魔力とお金の両方で支払うことにする。子どもや事情があって魔力で支払えない場合は、お金だけでもしょうがないが、ほぼ魔力だけで支払うことも可能だ。しかし、全額は不可ということにしておく。身動きできないほど魔力を振り絞って払い、病気になられても困るからだ。


 そんな、運用方法なんかを話し合いながら、モノレールの車両づくりを進めて行った。車両の骨組みは、殆ど、発砲金属で作り、できるだけ軽くした。まずは、駆動車両1両と客車1両を完成させた。


 次に、完成させないといけないのがレールだ。実験用だから地面に敷設しても良いのだけど、これからの実験のことを考えると適当な高さの場所を走らせた方が良いだろうということになって、地上3の高さにレールを設置することになった。3mの高さがあれば、通行の邪魔にはならないだろうけど、道を横切るときは、5m以上の高さにすることになった。明日から、モノレールの敷設実験が始まる。


 車両を完成させて、工房を出ようとしている時に研究企画部長から連絡が入った。今朝渡していたリュックとビジネスバッグの試作品ができたということだった。キャリーバッグもできたけどもう少し検討が必要だろうということだった。それで、後で、二つのバッグの試作品を見て欲しいということで、そんなものの良し悪しなんてわからないけど、とにかく試作品を見せてもらうことになった。


「どうだ。試作品。まあ、キングボアの皮だからな…。高級品にはならないかな。しかし、カッコいいだろう。一応、溶岩プレートを付けているがな、容量は、そう多くない。事務机の中身全てくらいかな。書類や小物、小銭入れ位を想定してみた。旅行に行く時もこれ一つで大丈夫ってくらいの収納にすることはできるが、溶岩プレートを大きくしないといけなくなって重くなる。今の重さで1.2kgこれなら普段持ち歩いてもそう負担にはならないだろう。」


「カッコいいです。国王陛下に似合いそうだと思います。もう少し高級な魔物の皮を準備すると良いのですね。ちなみに何の皮だと国王陛下にふさわしいと思いますか?」


「うむ、ドラゴン。ギリギリ許せるものでワイバーンかな…。」


 研究企画部長の目は確かだ。ドラゴンの皮なんて大樹の誓の皆さんが持っているはずはないけど、ワイバーンの皮なら今日ドロップしたかもしれないな。


 次にリュック。これは、スノーミラージュの皮でできていて白くてかわいい感じだ。でも、活動的な外観だから男の子用…、子ども用って感じだ。


「これもな…。容量は、ビジネスバッグの半分くらいだ。もう少し高級感のある皮でもよかったんだが、王子殿下に送るとなるとな…。ブリザードディアかグレートウルフ当たりの皮でも良いかもしれんな。」


「これも良い感じです。うちのアグリゲートパーティーがこのバッグにあった素材を手に入れることだと思います。この試作品頂いて良いのですか?」


「おう、大丈夫だ。これと同じものをいくつか作っているからな。良い素材が手に入ったら冒険者ギルドを通して、研究所に卸すように言っておいてくれ。研究員の次の給料を倍増するためにな。」


パーティーハウスに戻ると、大樹の誓とファルコンウィングのメンバーは、それぞれのパーティーハウスに戻っていた。それで、タブレットで連絡して、今日作ってもらった試作品を見てもらうことにした。


会議室で、皆さん出来上がった試作品のビジネスバッグとリュックサックをじっくり見ている。


「この素材としてワイバーンの皮を準備すれば良いのですね。」


「研究企画部長はそう言ってた。ワイバーンの皮なら献上品としてギリギリ大丈夫だろうって。王子殿下とお揃いの皮でも良いかもしれないよ。」


「我々は、ジャイアントワームの糸で生地を作ってそれをバッグに加工していただくようにお願いしてもらって宜しいですか?」


「生地作りも研究所に依頼するの?」


「かなりの量、採集してまいりましたから、王室の女性用としては十分な量かと思いますが…。」


「ボフさん、何でそんな言葉遣いなの?」

僕が言うと、ボフさん顔を赤くして答えた。


「え?ああ。なんか、王宮での受け答えの練習をしていたものだから…。おかしくなかったですか?」


「王宮の言葉遣いとしてはおかしくなかったかもしれないけど、パーティーハウスの中では変かな…。」


全員で大きな声で笑って会議室での話は終了。今日は、みんなで食事をして明日の王都行きのことについて打ち合わせることにした。


全員お風呂を済ませて、食事に集合し、明日の打ち合わせをした。明日は、午前中にジャイアントワームの糸を研究所に預けに行って、10時のおやつを食べた後に全員で新型ゴーレムバスで出発。バスの運転手はエリックさんで、メイドの3人も一緒に行くことになった。


宿は、全員でいつもの所に泊まることにした。一番喜んだのがメイドの皆さんだ。その上、いつも頑張っている皆さんにって一人金貨1枚ずつのお小遣いを配布したから、夜遅くまで、王都行きの準備をしていたみたいだ。お給料は、一月に金貨1枚だから、今までの貯金もいくらかあるみたいだった。王都には5日間くらい滞在することになったからその間は、ゆっくりしてもらおう。





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