第230話 魔力操作と身体強化
朝、またレイからのバッグリクエストが来ていた。男性用のデザインを送って欲しいということだけど、そんなこと急に言われても無理だ。知識もないし、実物も持っていない。持っているバッグといったら登校用のバッグとリュック位だ。
父さんに聞いてみたけど、似たようなものだった。持っているバッグを出してくれたから、リペアして精錬した時にできた精錬式をホームスペースにコピーしておいた。ボストンバッグっぽいものと旅行用のキャリーバッグ、父さんのビジネスバッグ。キャンプ用のリュックサックもついでにリペア、精錬コピーをして、ホームスペースにコピーだ。
バタバタとそんなことをしていたから遅刻しそうになったけど、遅刻前に教室に走りこんだ。廊下は走らなかったよ。走ったらとっても怒られるからね。
今日の2時間目は、体育だ。日曜日からポーション断ちしているからそろそろ効果はなくなっていると思うんだけど…。
1時間目の国語は何事なく過ぎていよいよ2時間目の体育だ。本田さんは続けてピッチャーをすることなくセカンドに入った。セカンドとファーストの距離ならゆっくりとぼるをトスしてあげるようにすればファーストが怪我をすることは無いということでそうなった。僕は、ショートだ。
二遊間を二人で守る。鉄壁の二遊間ができた。どんなヒット性の当たりも止めた。人がジャンプで届くはずだと思える高さの打球も取った。本田さんも似たような守りをしていたから、高いフライや1塁ベース上と3塁ベース上の当たりくらいしかヒットにならなかった。
3日間もポーションは飲んでいないのに、
昼休み。僕たちは、裏庭のバスケットコートの所に来ていた。3on3が流行っていた頃には、昼休み中にたくさんの人だかりができていたが、今は閑散としている。
「上村さん、ダンクシュートやってみてよ。」
「ええっ、私が…、無理に決まってるじゃん。私は女の子。女子なんだよ。日本人でダンクシュートする女子は一人しかいません。わたし、二人目になんかなりたくないよ。」
「へー、日本女子の選手にもダンクシュートする人いるんだ。だったら、きっとカラにもできるよ。私がパスするからやってみて。」
「ベルも3年間バスケ部だったんでしょ。あんただってやっみればいいじゃん。」
「カラができたらやってみるよ。だって、私は、レギュラーじゃなかったし、2年生の夏の大会からレギュラーだったカラからやってみるのが筋ってものでしょう。」
「何訳が分からない理屈言ってるの。まあ、無理と思うけど、やってみるわ。」
「成功するイメージで体使わないと危ないからね。リングに頭ぶつけないように気を付けてね。」
「玲君からアドバイス受けるなんて信じられないけど、ダンクシュートの先輩だからね。気を付ける。」
それから、本田さんのパスを受けてダンクシュートは、1回目から成功した。誰も見てなくて良かったと思える位見事なダンクシュート。誰か見てたら、また噂になったかもしれない。
本田さんもやってみた。できた。上村さんよりも少しぎこちなかったけど、僕なんかよりもよっぽど上手なダンクシュートだった。昼休み、日本で二人目と三人目の女子ダンクシューターが誕生したのを知っているのは、当の二人と僕だけだった。
やっぱり、二人ともポーション効果は続いている。僕は、最近筋肉量も増えてきたし、継続的な効果があっても当たり前だと思うんだけど、二人は初めて飲んだのが前の日曜日。ポーション効果というより、自前の身体強化の魔術なんじゃないか…?二人とも魔術回路を活性化してるのか…?
そんな疑問を抱き来つつ、昼休みと午後の授業を終え、今日も三人で帰っていた。
「玲君のポーションを飲んだ次の日くらいに、私少しおかしなことがあったのよね。」
突然の告白。上村さんからだ。
「どんなこと?」
僕が聞くと。
「お腹の下の方が暖か~くなって…。」
「女の子日が早くやってきたってこと?」
「違うわよ!痛くなったんじゃないし!暖かくなって、なんか手の平からボワッて光が出てきた気がしたのよね。そんな気がしただけかもしれないけど…。変でしょう。ポーションにそんな効果あるの?手から光を出すなんて効果。」
「そんなのあるわけないよ。傷を治したりする時に光を出すことはあるけど…。もしかしたら、魔術回路が活性化したのかもしれない。」
「魔力回路?活性化?」
上村さんはキョトンとしている。何のことやらの話しだ。
「この辺に公園か何か座って話せる場所ないかな。もしかしたら、本田さんも関係あるかもしれないからさ。」
僕たちは、帰り道から少しそれた場所にあった公園に寄った。小さな公園でベンチと滑り台、砂場くらいしかない場所だ。ベンチに二人にかけてもらい、僕は立ったままだ。
「前、僕ができる不思議な力について話したことあったよね。」
「あの手品みたいな力と異世界の話ね。うん。聞いたよ。」
「その手品みたいな力は、東洋医学で言うと丹田と言う場所にある魔術回路っていうのに魔力を循環させることで発揮できるようなんだ。これって科学的でもなんでもなくて経験的にだけどね。沢山の魔力を底に流し込むと何となくそのあたりが熱ーくなって手の平の当たりから不思議な現象が現れるんだ。例えば、あの小さな草見ていて。
エアカッター。」
雑草の根元の土が跳ね上がって、小さな草は根元から切れて跳び上がってポトリと落ちた。
「凄い。手品?」
「ちょっと違うけど、不思議な力。この力を発動するのが魔術回路なんだ。僕の場合は少し違うんだけど、それは、今回は置いておこう。」
「それで、玲君のその不思議な力と、私のお腹の当たりが熱くなった話は、同じものの働きって言いたいの?」
「そう。それでちょっと試したいんだけれど、僕が無属性の魔力を渡すから受け取ることができるか試したいんだけどいい?」
「魔力を渡すの?なんか厨二病って言われそうだよ。わが右腕に宿りし魔力よなんてやるんやじゃないでしょうね。」
「まあ、厨二病っていやあそうかもしれないけど…、上村さんは右利きだよね。」
「うん。そうだよ。で、魔力を受け取るってどうするの?」
「じゃあ、両手を出して、右手は僕の左手の上、左手は僕の右手の下に広げてみて…。そう、そのまま待ってて。今から無属性の魔力を送るね。」
「なんか温かいものが伝わってきたよ。」
「それ、それが魔力だよ。無属性の魔力は、大抵誰でも操作できるんだ。その魔力を右手の方に回して…。」
「できた。体の中を通っていくのが分かるわ。何となく感じることができる。右手の平から玲君に返すのね。」
「そう。右手から送り出してみて。そう…。戻って来たよ。しばらく魔力を循環させるね。ぐるぐるぐるぐるだよ。」
「暖かい。なんか。熱いと言うより暖かくてリラックスできる感じね。」
「上手に魔力を操作で来ている証拠だよ。じゃあ、その魔力を下腹部、月曜日に上村さんが熱くなったって感じた辺りに流し込んでみて、魔力の流れを下の方に下げていく感じで。」
「魔力の流れを下に下げて、下げて…。熱くなった辺りまで下げて…、魔力が…、魔力がぐるぐる回り始めた。暖かい魔力が回っているわ。そして、広がって…。身体強化…。」
「やっぱりか…。身体強化って言うイメージが言葉じゃないけど明確な身体強化っていう何かが頭の中に現れたんじゃない?」
「そう。文字でも音でもない身体強化っていう何かが見えた?そんな感じ。」
「凄い!カラ、魔法を使えるようになったの?」
「これって魔法なの?」
「まあ、向こうでは魔術って呼んでるけどね。魔力操作が上手なったらきっと属性魔術が使えるようになると思うよ。それに本田さん、他人事じゃないよ。多分、本田さんも身体強化使ってると思う。」
それから、本田さんにも魔力操作を教えて身体強化の確認をした。魔術が使えるのが僕だけじゃなくなったのは良かったのかな…。
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