第229話 ジャイロモノレール模型

 研究所の僕の研究室にいる。ここにいるのは、アンディー、僕、そして、見習い工学魔術師のエヴィだ。まず、ゴーレムバイクの車輪をレールにはまる凹状にしてレールの上を走ることができるか試してみる。丸いレールの上にゴーレムバイクを乗せてみた。これだけで安定してレールの上を走ることができるなら別にジャイロ装置など必要なく、丸いレールの上にゴーレムバイクの車輪駆動をもった車両を乗せることで、モノレールが完成だ。


 結論。無理。


 やっぱり、ゴーレムバイクは、細かくハンドルを操作することでバランスを保って安定した走行を行っていた。それは、進む方向も微妙に調整しているということだ。しかし、レールに車輪の方向が強制的に決められている線路上では、微妙なバランスを取ることができず倒れてしまった。


 研究所のメンバーと実験の結果を確認して次の実験の方向性を決める。ここで、二つの方向性がきめられた。一つは、「レールを改良することでゴーレムバイクが細い線路の上を走行することを可能にする。」もう一つは、「どんなレールの上でも走行可能な車両を作る。」この二つは両立する必要はない。まあ、レールの改良がどんなレールの上でも走行可能な車両の走行安定性を高めるかもしれないけれど、ド力が成功すれば何とかなる。


 僕は、どんなレールの上でも走行可能な車両づくりに参加した。アンディーは、両方の開発プロジェクトに参加しているが、エヴィは、線路の改良、その改良した線路に合わせてゴーレムバイクの車輪の作成を行っている。僕は、ジャイロモノレールの開発のチームだ。


 そもそも、ゴーレムバイクの改良を考えるならハンドルの自由度が大切だ。ゴーレムバイクは、ハンドルを自由に調節することで倒れることなく移動することができている。しかし、レールの上でその自由度を認めることは難しい。ゴーレムバイクが低速で移動する時どのくらいハンドルの自由度が必要か測定すると人が乗っている時は、30度近くの自由度が必要だった。高速での移動時でも直線コースでないときは、1~4度近くは、揺れていた。しかし、レール上でその自由度を確保することは難しい。


 僕たちは、ジャイロというのを使って2輪の車両が細いレール上で安定して走行できる方法を模索していた。ジャイロの固定と傾きの制御はドローンとほぼ同じだ。ただ、ジャイロを二つ逆回転させて取り付けた方が安定するというような記述があった。そのまま信じて取り付けてみた。駆動車両は、ジャイロの駆動と車両を駆動させるためのコアが必要になるが、客車の車両は、ジャイロを取り付けるだけで大丈夫なはずだ。


 カーブの時は、遠心力と重力の合力と逆方向直線状に車両を傾けることで脱線することを防ぐことができる。そのことをコアにできるだけ正確に伝えた。二足歩行するゴーレムをコントロールすることができるから重力や遠心力を感じてコントロールすることが可能なはずだ。この時、シエンナを呼んでおけばよかったと心の底から感じた。


 僕たちは、まず骨組みだけの車両模型を作ってジャイロや駆動部品を取り付けた。大きさは、昨日と同じ長さ1m。高さ40cm程。それを今回は地面の上2cmの所に置いた丸い線路の上にセットした。


 車輪の前後につけた車輪は中央に丸い凹みをつけて丸い形の線路にひったりとはまる形にしておいた勿論半円一番外側は、少し開かせている。コアに魔力を注ぎ出発させた。コアは使役しているから近くにいる時は、命令で魔力の使用量を調整でできる。つまり、スピードを上げたり、落としたりできるということだ。


 そして、このレールの良い所は、切り替えの単純さだ。ほんの小さな装置、進む方向を切り替える装置で進行方向を切り替えることができる。だから、その切り替え装置は、人がしっかり管理できる場所に設置しないといけない。この切り替え装置は、エヴィが自分で考えたものだ。エヴィが考えたものは、進行方向はモノレールの方から操作する物だった。僕たちはその装置を使って強制的に進行方向を変えるようにしてみた。


 このジャイロモノレールだと、一本のレールを支えるだけで良く、しかも、レールの上をモノレールが進行するので丸いレールの上に乗るかレールを破壊する以外にモノレールの進行を阻害する方法がない。


 △の頂点にレールを設置。これだと単純な構造の橋脚で丈夫な建築物を作ることができる。金属は、伸びる。しかし、常に引いておくことで、強度を増すこともできる。マウンテンバイクの車輪を支えるスポークのように。あのスポーク構造は、押して車輪を固定しているのではなく、引いているのだ。


 丸い1本のレールなら、そのような強化構造も利用することができる。短い距離で引き合う構造をつなぎ合わせることで、細くてもぶれにくい強固なモノレールを作ることができると思う。


 1mのモノレール模型は、簡易計測時速200kmのスピードで8の字2000mのコースを問題なく走ることができた。これから、このモデルを実用サイズまで大きくして実験をする必要がある。


 そこまで、試行錯誤で作り上げて、一日が終わった。時速200kmで走る模型を作ることができたのだから、この後はスムーズかなと思ってパーティーハウスに帰って行った。


 ダイアリーを開くと、返事が来ていた。男性用のバッグもあるが、どんなのが献上品としてふさわしいのか分からないということだった。そこで、もう一度、王子様が止まりに行ったり、町に出かけたりするときに持って行くバッグと国王陛下が、仕事用として使用するバッグという二つのリクエストをしておいた。


 国王陛下も普段使いのカジュアルなバッグでも良かったんだけど、そんなのを利用しそうな雰囲気じゃないからお仕事用だ。王子殿下は、お洒落バッグというより、お出かけの時に自分が持って生きたものを入れていくためのバッグとして考えて欲しかった。


 夕食の後、アグリゲートのメンバーが僕たちのリビングに集まってきた。今日の採集成果を報告するためだ。


 ファルコンウィングの皆さんは、王都の近くにある中級ダンジョンまで行ってきたそうだ。そこの第18階層でジャイアントワームの糸の採集をやってみたと報告してくれた。柔らかくきめ細かな生地に織り上げることができる糸で生成りの色が虹色の高級生地になるということだった。以前は、1匹のジャイアントワームを狩るのに1時間近くかかったそうなのだけど、今回は、1匹2分もかからなかったと驚いていた。流石、Sランクパーティーだ。


 大樹の誓の皆さんは、ロックバレーダンジョンの6階層に行ってみたけど碌な素材は手に入れられなかったとぼやいていた。それで、明日、10階層に転移して良いかと聞かれたからみんな全然大丈夫と答えておいた。明日は、大樹の誓とファルコンウィングの皆さんで10階以下を狙うということだった。






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