第228話 パーティー献上品の相談

 今日は、アグリケートメンバー全員で朝食をとっている。その後、叙勲式までの活動及び行動確認をするためだ。朝食後、会議室に移動して、お茶を飲みながら打ち合わせを開始する。


「皆さん、改めまして、これから会議を行う。まず、今回の議題の確認だが、大樹の誓のメンバーからの提起だ。ヒューブさん、説明を頼む。」


「はい。では、私たちからの提起というか、お願いになるのかもしれないのだが、今回の叙勲式では、陛下から多大な褒賞を下賜かしされると聞き及んでおります。しかし、私たちには、それに見合う献上品が思い至りません。そこで、ミラさんにお聞きしたところ、全員で確認して、アグリケート全体で準備するか、パーティーごとに準備するのかも含めて話し合った方が良いだろうと言われまして…、皆さん、まず、献上品は、どうさせますか?」


 その質問に、アンディーが手を上げ、ミラ姉に指名された。


「そもそも、ヒドラの魔石を献上するのだからそれだけでいいのではないか。ヒドラの魔石はこのアグリゲートからの献上品だろう。」


「どうした、レイ」


 僕が、発言しようか迷っているとミラ姉がその様子を見て聞いてきた。


「いや、今回の叙勲式とは直接関係ないんだけれど、森の賢者の依頼で作ったバッグの試作品が完成したら、研究室から、王室の女性の方に高級カジュアルバッグを献上する予定なんだけど、周りからみたらそれも僕たちからの献上品に見えるのかなって思ってね。」


「それは、誰の手で届けることになっているのだ?」


「所長かな…。でも、森の賢者の依頼で作ったってことになると、森の賢者の代理人が届けることになるのかな…。決まってないよ。」


「作ったのは、研究所だけど、制作を依頼したのは森の賢者か…。ややこしいな。」


 とロジャー。


「いっそのこと、全部研究所の手柄にしたらどう?」


「あの…、それって、森の賢者様のご指示なのでしょうか?」


 ボフさんからの質問だ。そりゃあそう思うよね。


「森の賢者からは、デザインや構造の大まかな提案だけで、それに沿って試作品を作って欲しいと言うのが依頼なんだ。その試作品を元に森の賢者が、自分が思うバッグを作るつもりなんだって。で、出来上がったバッグの販売の仕方や値段なんかは研究所へ一任とい形だよ。少し変だけど、森の賢者ってのが、変ちくりんな人だからしょうがないよね。」


「まあ、そのようにお金や物の価値に無頓着な方でなければ、私たちに、貴重な魔道具をポイポイとお貸し頂いたりしないでしょうから、そうなのでしょうが…。信じられません。」


「レイ、そう言えば、私たちにも、そのバッグを作ってくれるということだったが、本当なのか?王室への献上品にするようなものなのであろう?」


 アンジーさんが心配そうに聞いてきた。王室に献上すると聞いて心配になったのだろう。


「本当ですよ。ただし、その素材は、自分たちで準備してくださいね。研究所から、試作品を頂いたのでそれを元に僕が、精錬コピーで作ることができます。ただし、マジックバイパーの皮だけは、止めておいてください。王室への献上品にするので…。王室の皆さんが使うようになったらマジックバイパーの皮のバッグも解禁されますが…。」


「ミラ殿、先日お主が手にしていた、キャンバス地のバッグを見せてくれぬか?私は、以前手に入れたジャイアントワームの糸を持っているのだが、それで織った生地でバッグを作れないかと思ってな。軽くて丈夫な布ができるだ。」


 ソイさんは手持ちの糸で作るつもりのようだ。それをきっかけに、話は、パーティーからの献上品から、女性陣のバッグの方に流れて行こうとしたんだけど。


「ちょっとお待ちください。今は、パーティーからの献上品についてお話をしていたと思うのですが…。」


「そ、そうだった。ちょっと待ってくれ。それで、各パーティーからは、献上品を渡さないということで良いのか?」


「ミラ殿、ちょっといいか?」


「ソイさん、どうぞ。」


「王宮から、各パーティーへどのような褒賞品が下賜される分からぬ故、ここでは結論が出せぬと思うが、もしも、アグリゲートと各パーティーへ叙勲式で褒賞が渡された時は、各パーティーでそのカジュアルバッグとやらを献上するのも一興ではないかと思うのだがどうだろう。それぞれのパーティーが持つ、最高の素材で作ったバッグをだ。そこでなのだが、男性向けのカジュアルバッグ?は、ないのか?あれば、王子殿下や国王陛下にも献上できるのではないかと思うのだが、どうだ?」


「それぞれのパーティーが、自分たちが持っている最高の素材で作ったバッグを記念品として献上するということか?…、レイ、森の賢者に男性けのバッグのヒントなんかを送ってもらうことはできるか?」


 ミラ姉からの要望は、ハイかイエスかだ。


「できると思うよ。後で聞いておくけど、素材は、皮になるかどうか分からないよ。まあ、皮や布で作れるものにして欲しいって要望は出せするけどさ。」


「それでいい。では、下賜される褒賞で変わるが、今回持って行く献上品は、ヒドラの魔石のみ。その後、各パーティーからの献上品が必要だということになったら、各パーティーで準備することができた素材で作ったバッグを送ることにする。そして、国王陛下や王子殿下への献上品は、森の賢者に相談するということで良いな。」


「あのさ、森の賢者への質問の期限は、いつまでにするの?できるだけ早くっては言うけど、森の賢者に製作のヒントを貰ってから研究所に試作品作成依頼しないといけないからね。今日連絡を取って明日返事をもらっても、研究所での試作品完成までの期間も必要なんだからね。今回は直ぐにできたけど…、次は時間がかかるかもしれないんだよ。」


「その事情は理解した。しかし、王族の皆さまに献上品を送る時、女性の王族だけというのは、問題があるだろうからな。そこは、宜しく頼むぞ。」


 ヒューブさんの一言でこの会議は終った。それから各バーディーは、自噴たちが持っている最高の素材を確認しあって、王室全員分の記事を確保すべく各地へ散っていった。僕たちが、マジックバイパーの皮を献上品に回すことは決定で、その量は、必要以上揃っているから特に素材採集に行く必要はなかった。


「じゃあ、玲に男性向けのバッグのデザインについて早急に何とかしてくれるようにダイアリーに記入しておくね。」


 ミラ姉に言うと僕は、ダイアリー用紙を精錬して、男性用のカジュアルなバッグを送ってくれるように書き込んだものをリペアしようとした。すると、既にダイアリーに書き込みがあった。昨日の夜、質問を書き込んだばかりなのに…。書き込みはついさっきだったんじゃないかな…。向こうは今、夜中だ。少しずつ時刻がずれていくから分かりにくいけど、多分向こうの時刻は深夜の1時過ぎだと思う。


 リペアしてあった日記と、コピーしてあった沢山の資料をコピーして実体化した。今日は、向こうの世界で実現できなかったって書いてあったジャイロモノレールの実験をしよう。向こうの成果と違って、僕たちには、研究資金も資材もたくさんある。



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