第227話 ジャイロモノレールとポーション効果

 昨日の夜寝る前にダイアリーを開いたら、玲からモノレールに関する質問が来ていた。簡単に言えば、跨座式と懸垂式以外のモノレールはないかということだった。跨座敷なんて聞いたこともなかったから、以前渡した文献か自分で図書館に行った時にコピーした文献のの中にあったのだろう。


 父さんや母さんに聞いても何のこと?て感じだったからグ〇〇ル先生に聞いてみた。


 ジャイロ式モノレール。今までのモノレールの欠点をカバーするいいことずくめのモノレールになるはずだった。過去形。実験失敗のモノレールだったんだけど、動画にそのモノレールの実現に成功したものがアップされていた。勿論、本物じゃなくて模型だけど。何度も動画を見たし、自分でも作ろうとしてみた。


 でも、昨日の夜、手持ちの材料ですぐに作ることなんてできるはずもなく、設計図と写真と関連資料を精錬コピーしてダイアリーと一緒にホームスペースに移しておいた。かなりの量になった。


 そんなことをしていたから昨日は寝るのが遅くなって、まだ眠い。眠気と戦う一日になりそうだ。ジャイロモノレールは、面白そうだけど、モーターやコントローラーなど、持っていない材料が沢山必要になりそうだったから、お小遣いと時間に余裕がある時しか実験が難しい。しばらく先になりそうだ。多分、実現するのは、レイたちの方が早いと思う。ゴーレムコアと、アンディーのクリエートの魔法があれば、色々なことができる。


 朝ご飯を食べて、学校に出かけた。学校に着くとソフトボールの天才が現れたと学校中で噂が広がっていたけど僕のことじゃなくて本田さんのことだ。


 手加減するようにって言ったんだけど、ピッチング練習の時、野球部の連中にバスケ部が投げるヘナチョコボールなんか、全部ホームランだ見たいなことを言われて意地になってしまった。初めは、僕以外の子がキャッチ―のはずだったんだけど、なんかやばいことになりそうだったんで、僕がキャッチャーをした。良かったよ。そうしていなかったらけが人が出る所だった。


 それで、そんな噂が広まっているという訳。当の本田さんは、何故かこそこそと上村さんの後ろに隠れて教室に入ってきた。


「玲君、なんか変な噂が学校中に広がってるんだけど…。」


「だから、言ったでしょう。ポーション飲んでいる時にあんまり本気出さないようにって。僕のダンクシュートの時だって、変な噂が広がったんだからさ。ところで、ポーションの効き目落ち着いてきた?」


「ポーションの効き目?わかんない。昨日もそんなに効き目が続いている自覚なかったのよ。いつもよりは体が良く動くかな、ボールは軽く投げているつもりでも早いな…って、それくらいの差だったのに。」


「それって、ポーションの効果に体が慣れて切立ことなのかな。ぼくも、そんな感じなんだよね。お茶碗割ったりとかしないし、壊れやすい物や柔らかい物も握り潰してしまうなんてことないからね。それなのに力を入れたいときには入ってる。力を入れた時のコントロールは自然にできるのに力の加減が難しいんだよね。」


「そうなのかな…。今日、昨日と同じくらいの速さの球を投げられるかどうか聞かれたら分からない。でも、玲君が言ったみたいに生活で不自由を感じたことは無かったわね。」


「明日も体育があるから、ポーションの補給は止めておこう。あと何回かソフトボールがあるみたいだからさ。力加減の練習をちゃんとやろうね。」


 授業が終わってみる休み。上村さんも一緒に本田さんのピッチング練習を人気がない場所でやってみた。グローブとボールは、上村さんに借りてきてもらった。


「カラ、投げてみるから見てて。普通の球だよね。スピードも遅いでしょう。」


 本田さんは、軽く投げているつもりなんだろうな…。グローブに吸い込まれたボールがとってもいい音を出した。


「私の感想だから当てにならないと思うけど、まあまあ速いわよ。でも、打てないほどではないと思うわ。」


「上村さんもポーション飲んでるからね。全くあてにならない。だって、野球もソフトボールも経験がない僕が、誰も打てない本田さんのボールを何の苦労もなくキャッチできるんだからね。多分、ポーションの影響で、反応速度や動体視力も上がっていると思うよ。」


「そうね。そもそも、ソフトボール経験0のベルが、ストライクボールをそんなに続けて投げられるはずないか…。」


 兎に角、明日まではポーションの補給は無しで、体育の時に様子を見ることになった。僕もポーション効果が残っているのが当たり前のようになっているし丁度良い機会かもしれない。


 学校ではその後何事もなく時間は過ぎて行って放課後、僕が一人で帰ろうと下足入れに向かっていると、後ろから本田さんと上村さんが声をかけてきた。


「玲君、ちょっと待って。」


「ん?。ああ、本田さんたちか。どうしたの?」


「途中まで一緒に帰りましょう。買える方向一緒なんだからさ。」


 と、上村さん。そういう訳で、3人で一緒に帰ることになった。一緒に帰ると言っても固まって話をしながら帰るだけなんだけど、ペースは、いつもよりも遅くなる。時々立ち止まって、周りを気にしながら会話しているから当たり前だ。


「そう言えば、うちのクラス今日の5時間目、体育があったのよ。昼休みに、玲君たちとソフトボールの練習してたから私も、選択種目はソフトボールにしたんだ。ピッチャーはしなかったよ。ベルみたいに噂になるの嫌だし、キャッチャーできる子いなそうだしさ。」


「ふーん。私みたいに噂になるのが嫌だったのね。どうせなら、噂になって私の噂を上書きしてくれたらよかったのに…。」


「そうなんだ。それじゃあ、上手く手加減できたの?」


「うーん…。でき…た、なかっ…た。」


 なんか、歯切れが悪い。


「どうしたの…。カラも目立っちゃったんでしょう。私みたいに。」


「ミス・イチローっアダ名が…つけられたの。しかも先生から。私がライトからホームにタッチアップ阻止のボールを返球したのを見て…。昔、メジャーで活躍していた、イチロー選手のレーザービームだ!何て言ってね。そんなこと言うから、その場で、私はミス・イチローって言われることになって…。それが、他の競技を選択している人たちまで広がっちゃって…。ううっ。」


「よかった。私、そんな変なあだ名を付けられなくて…。」


 本田さんは、自分がミス・パーフェクトって呼ばれているの知らないんだ…。黙っておこう。そんなアダ名定着しないと思うし。


「あっ、そうだ。玲君、今度の土曜日の昼間、何か用事ある?」


「えっ?えっと、特に、ないよ。どうして?」


「あのね。本当は、受験生だし、もう中学生なんだから、普通はしないんだけど、エリの誕生会?みたいなものを土曜日にカラオケボックスでしようかってことにしたの。それに来てくれない?」


「えっ、誕生会って僕も参加して良いの?でも…、他に誰が来るのかな…。学校に知り合いっていないよ。クラスの子ともあんまり話したことないし。」


「そっか。れうだよね。玲君が学校に来だしたのって1カ月くらい前からだからね。…、ちょうど良いよ。玲君の友達作りのきっかけになるかもしれないでしょう。でもあんまり大人数だと知らない人だらけでうまく話しに乗っかれないよね。それなら、今回の誕生会は、3人でしようよ。そして、玲君の友だち作りの方法を考えよう。」


「私は、賛成。それに、受験生が誕生会なんて大々的に開いてるなんて知られたら、先生たちから厳重注意が言い渡されるかもしれなわ。3人くらいだったら大目に見てもらえるでしょうし、受験勉強に悪影響だなんて言われる成績じゃないしね。」


 それで、次の土曜日、カラオケボックスで、上村さんと本田さんの合同誕生会を開くことになった。二人が主賓なら、お祝いするのは僕ということになる。かなり責任重大だ。




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