第225話 ダイアリーと完全試合

 朝起きると、ダイアリーの確認。最近あんまりしていなかったけど、久しぶりにワクワクしながら確認した。半分は、何も書き込みないだろうって思っていたけど、なんと書き込みがあった。


 火山岩は前回採集してきたものがまだ残っている。でも、キャンバス地がないから母さんか父さんに買って来てもらわないといけない。ミラ姉がバッグを持っている写真も送って来た。青いキャンバス地のバッグだ。バッグもお洒落だけどミラ姉もきれいだった。


 その写真を精錬して実体化した物を父さんと母さんに見せて、キャンバス地を買って来てもらう。上村さんだったら明るいオレンジか黄色が似合うかもしれない。本田さんの誕生日ももうすぐだって言っていたから色違いのキャンバス地を買って来てもらおうかな…。必要なキャンバス地の大きさが分かればいいんだけど…。


 昨日の夜は、遠隔通信魔道具といものの仕組みを聞いて父さんと母さんに相談してみた。結論から言うとパケット通信の考え方が良いんじゃないかということになった。インターネットを利用した通信方法だ。


 ゴーレムタブレットとは少し仕組みが違うけれど、似ている点もある。同一の電波みたいな魔力を使用していることつまり、ゴーレムタブレットは、同じチャンネルの魔力波?を全タブレットが使用しているけど、どのタブレットに対する通信かをそれぞれのタブレットが判断して、自分に必要な通信信号だけを受け取っている。その為にお互いに送る為、受け取るために情報に識別信号を付けているんじゃないかということ。その通信方法を今回利用すればいいだろうということだ。


 しかし、同じ信号を共有しているわけでもなく、全ての通信魔道具がお互いを認識できるわけでもない。では、どうするか。お互いを認識できないのなら、中継局に番号を付けると良い。例えば、ある声のデータがフォレストメロウの町まで向かっているとする。そして、フォレストメロウの中継局の番号は0020番とする。


 0020番以外の中継局は、魔力信号を増幅して一定の強さにして次の中継局に渡すだけだ。0020番のフォレストメロウの中継局では、その番号に続く個別の通信魔道具に信号を送る。たとえば、研究所の所長室の番号が00002だとすると、その魔道具にまず信号を送る。「魔道具通信が入ってますよ。」って。そして、一方が通信を許可すれば、会話の信号をやり取りすることができるという仕組みだ。


 この仕組みだと中継局は1本の線でつないで良いけど中継局から各魔道具までは、一本の線でつながないといけなくなる。しかし、町の中でも各エリアごとに中継局を置けば町の中継局から町中の中継局。そして、それぞれの魔道具としてもよい。それぞれの魔道具の中をすべて通っていくようにすれば、一本の動線だけでも何とかなるだろうけど、一か所切れると全部通じなくなるかもしれないから心配だ。


 このように中継局と各魔道具に規則性のある番号を割り振れば、お互いに登録しあわないでも通信することが可能になる。


 本当は、パケット通信となるともっと複雑な手続きを行っていて、複数の経路を通って互いにデータのやり取りをしているようだ。しかも、何ヶ所か通信のケーブルが通じなくなってもデータのやり取りができる仕組みになっている。この辺りになると良く分からないからパケット通信について書かれた本を何冊か図書館から借りて来てコピーし置いた。


 そのことを付け加えて、こちらの電話の仕組みに近い通信法をダイアリーに記述した。これでうまくいくと良いんけどな。ゴーレムコアが異次元的高性能でもっと別の方法があるかもと思ってしまう。


 朝ご飯を食べて学校に行く。今日は体育がある。本田さんは、ポーションを飲んで参加するはじめ他の体育だ。男女ともソフトボールとバレーボールの選択制だ。バレーボールはしたことないのとジャンプが異次元的な高さになってしまいそうだからやめておく。道具が多く、体力の差が目立ちにくいソフトボールの方を選ぶことにした。


「玲君、体育の種目は何を選ぶの?私、バレーボールの方が少しだけだけど自信あるから手加減もできると思うの。だから、バレーボールにしようと思うんだけど…。」


「本田さんは、バレーやったことがあるんだ。僕は、ないから、テレビなんかで見たことがある野球に似ているソフトボールにしようと思う。道具使うから体力差が目立たないかなって思ってさ。」


「でも、玲君一人でやらせたら、とんでもないことをしでかしそうな気がする。やっぱり、私もソフトボールにする。玲君一人じゃ心配だから。」


「ありがとう。でも、あんまり体力全開は、止めようね。怪我人が出るかもしれないからね。同じチームになったら良いけど、敵チームになったら手加減忘れずにね。」


「うううっ。手加減ってスポーツでやりずらいわね。いつも全力だったから…、レギュラーじゃなかったし…。」


 体育の授業は5時間目だ。休み時間ごとにルールの確認や非常識なプレーはどんなものかなんかを話して体育の時間を迎えた。


「今日から始まったソフトボールとバレーボールの授業だが、初めに、履修種目の受講者分けを行う。まずは、ソフトボールだ。呼ばれた者は、こちらに並ぶように。まずはAチームだ。」


 先生が名前を呼んで呼ばれた者がチームごとに並んで行った。何の順番か良く分からなかったけれど、僕と本田さんは同じチームになった。


「ソフトボールの指導は、私が行う。各チーム丁度10人になったから、まずは、キャッチボールからだ。試合には、一人余るが、各チームDH制をとる。ただし、奇数回と偶数回で守備を交代するように。それから、各チーム守備位置とDHはしっかり考えて決めるように。勝敗は体育の評価ポイントに直結させる。それから、2週間ごとにチーム編成を変えるから安心しろ。」


 僕たちは、二人でキャッチボールをした。ゆっくりとボールを投げているつもりだけど周りの目はそう見ていないようだった。僕もだけど本田さんも時々とんでもない球を投げるんだけど、頑張って後ろにそらさないようにした。それで、二人とも目立っていたようだ。


「玲君。もう少しゆっくりで良いから、慎重に投げて。本当に取るの大変なんだよ。」


「本田さん。本田さんにも同じこと言いたいと思う。ゆっくりだよ。ゆっくり。」


 そんなにゆっくりゆっくりといいながら、はたから見てたら意地の張り合いのキャッチボールに見えてたようだ。キャッチボールの後に二人とも呼ばれて


「良いか。キャッチボールというのは、相手に取りやすい球を投げないといけないんだぞ。おまえらみたいな、意地悪ボールをどれだけ取れるか、なんて競争ではないからな。お前たち、そんなに仲が悪いのか?それなら、別の奴の組んでキャッチボールをしていいんだぞ。」


「いいえ、そういう訳ではありません。へたくそなだけです。」


「そうなのか?それなら…。本田、お前ピッチャーをやっみろ。キャッチャーは、持田、お前がやってみな。本田は、バスケ部だからアンダーハンドパスと似たようなもんだ。ボールは小さいけどな。」


 それから、二人でピッチング練習をしてみた。本田さんは、ストレートだけしか投げることはできなかったけど、かなりコントロールされたボールを僕に向かって投げてきた。」


 その後の試合で、体育の授業ではありえない、完全試合なんてしちゃうから非常識に目立ってしまった。本田さん…、手加減しようよ。







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