第223話 カラの誕生日アピール
朝、ゆっくりとダイアリーを確認する時間はなかったけど、何か書いてあった。中学生は、朝余裕がない。昨日は、みんなでボルタリングやサイクリングを楽しんだ。昨日飲んだ筋肉強化ポーションは、今も効果が続いている。朝ご飯の時に飲むと、効果時間が延長される。上村さんや本田さんも同じなのか朝、聞いてみないといけない。
それにしても、あの二人は、筋肉強化ポーションを飲んでも、なんてことなく体をコントロール出来ていた。部活動なんかで体を使うことやコントロールすることに慣れているからなのだろう。その点、僕はかなり練習が必要だった。だから、今日もポーションは飲んでいる。
朝ご飯を食べて学校に向かった。中間試験も終わったし、部活動も終わっている。中学3年生は、この時期、元気が有り余っているようだ。みんな元気なあいさつをしながら昨日の休みの出来事何かを話している。
「玲君、おはよ。」
上村さんが僕の頭の上を飛び越えて進路をふさいで挨拶いてきた。その後ろには、大声で笑いながらその様子を見ている本田さんがいた。
「カラ!玲君にパンツ見られちゃうよ。」
「大丈夫!ちゃんとハーフパンツ履いてるからね。」
「僕は、カラのパンツもハーフパンツも見てません。おはよ。」
本田さんはカラカラとよく笑う。その笑顔はとっても可愛い。
「お早う!カラも私も、昨日のポーションはまだ効果継続中だよ。私だってカラみたいなことできると思うけど、ハーフパンツじゃなくてスパッツだからしない。」
「はいはい。ベル。そんな告白しなくていいよ。」
「告白なんかじゃないもん。ほんとのことを言っただけ。」
「分かった。もういいから。それでさ、何か変わったことなかった?お腹が痛くなったりしなかったよね。」
「大丈夫。健康。いつもよりも調子が良い位よ。ベルは?」
「私もぜっこ―調!」
「それでさ。玲君、昨日飲んだポーションって本当に玲君が作ったの?薬局なんかで撃っているんじゃなくて。」
上村さんの質問。そうだよね。誰だってそう思うよね。
「その通り。僕が作ったんだ。母さんたちに色々アドバイスをもらいながらだけどね。」
「でも、あんなのが出回ったら、オリンピックなんて意味なくなるんじゃない?」
「意味がなくなるかどうかは良く分からないけど、禁止されたり、飲んだうえでの競技になったりするかもしれないね。ただし、体に悪影響がなかったらだけどね。」
「ええっ!健康被害があるの。病気になったり、ムキムキになりすぎたり…。」
「ないない。ただ、作ってからまだ一月位しか経っていないからね。今検証中というところだよ。自分自身やお二人を使ってね。」
「ええええええっ。私たちモルモットなの?人体実験の被験者?」
「まあ、そう言われればそうなんだけどね。一月は、僕や母さん、父さん、おじいちゃんとおばあちゃんで安全確認したからね。実験対象を増やしているところかな…。」
「おじいちゃんやおばあちゃんまで飲んでるの?なんか、凄い家族…。」
「おじいちゃんやおばあちゃんは一緒に住んでいるんじゃないけどね。二人ともポーションを飲み始めて若返ったって喜んでいるよ。」
「あんまり過激に効果が出なくて若返るだけみたいなポーションないの?」
「そんなのができればいいのだけど、今のところ薄めて飲むくらいかな。過激な効果を避けたかったらさ。」
「こんな所でポーションについてなんて話していたら遅刻だ。走るよ!」
15分位ポーションのことについてゆっくり歩きながら話していたけどちょっとの間だけ急いだから、いつもよりも早い位の時間に学校に着いた。よかった。受験生は、遅刻なんてできないんだからね。
いつものように、授業が始まり、いつものように下校時間になった。帰りの会が終わって、3年生は、普通、真直ぐ家に帰るのだけど、僕たちは図書室にたむろしていた。
「私さ、来週15歳になるのよ。日曜日に。いよいよおばんの仲間入りよ。」
上村さんの突然のおばん突入宣言。
「へ~っ、15歳っておばんなの?」
「玲君!何言ってんのよ。15歳がおばんのはずないでしょう。来襲が誕生日だっていアピールよ。プレゼントクレクレアピール。」
「なーんだ。で、上村さんはどんなプレゼントが欲しいの?早く言ってくれてたら何か準備したんだけど…。今からじゃ手持ちの素材でしか作ることができないんだよね。」
「玲君、言ってる意味が分からないんだけど、ケーキか何か作ってくれるってこと?」
「えっ、いや。そ、そんなところかな…。ケーキじゃないよ。食べ物じゃない。手先が器用だから、いろいろ作れるんだ。僕。」
「じゃあ、私、バッグが欲しい。カッコいいバックで。沢山物が入るの。でも、ゴッつかったら嫌だよ。そして、丈夫なの。」
それってかなり矛盾している。ごっつくなくて、大きくなくて、沢山物が入って、丈夫。しかもカッコいい。そんな、バッグあるのだろうか?
「上村さん。沢山物が入るって、何を入れたいの?」
「ええっとね。鏡でしょう。いつものポーチでしょう。筆記用具は必要でしょう。休みの日だったら形態に充電器。イヤホン。出来たらタブレットも入れておきたいでしょう。それから、本は一冊入れてるでしょう。わたしってこう見えても女子力高いから、裁縫道具なんて入れていることもあるんだよね。」
「わかった。入れたい物はとにかくたくさんあるってことは良く分かったよ。じゃあデザインでお気に入りあるの?大きさも含めてさ。容量は、気にしなくて見た目重視で考えてみて。」
「スポーツバッグは嫌だ。そうねえ。シャ〇ルって聞いたことある?シャ〇ルはちょっと大人っぽ過ぎるから、オリ―〇・〇・オリ―〇くらいのカジュアルさが良いかな。…そして、…。」
「分かった。良く知らないけど…。僕が知らないのだということが良く分かった。オリ―〇・〇・オリ―〇の雰囲気が好きなんだね。素材は?皮じゃないとダメとかこだわりある?」
「あるはずないでしょう。丈夫が一番よ。どうせすぐにボロボロになるんだから。」
「そうだねぇ。カラは物の扱いが荒いからね。丈夫が一番。」
とにかく、オリ―〇・〇・オリ―〇のイメージを作らないとどうしようもない。帰って母さんが持っていないか聞いてみよう。
図書館で少し勉強して家に帰った。中3男子、女の子の友達にバッグを送るって少し恥ずかしいかもしれない。でも、実験したいこともあるから丁度良い。矛盾した願い、かなえて見せよう。
家に帰ったら、インターネットでオリ―〇・〇・オリ―〇のバッグを検索した。出てきたバッグをいくつも比べて上村さんのイメージに合うデザインのバッグをチョイスした。それを印刷して、バッグの構造説明を記入した。
母さんが帰って来て構造や作りがおかしくないか確認してデータ化して共有スペースにお願いの手紙とともにコピーした。
『アンディー、このデザイン画でイメージできる、できるだけハイセンスなバッグを作って欲しい。中を溶岩魔道具で拡張しようと思う。小物を入れる場所以外は、空間収納スペースになるから、そのつもりでデザインを頼む。友だちの誕生日のプレゼントだ。宜しくお願いする。』
レイ以外に頼み事するのは初めてだけど、アンディーが一番頼りになる。願わくば、できるだけ早く、このダイアリーに気が付いてくれることを望む。
そう言えば、今朝、レイから書き込みがあったんだった。その返事と疑問への回答は、明日する。だから、アンディーにこのお願いを伝えて欲しい。
追伸。試作品は、明後日までには作って欲しい。試作品で良いんだ。宜しく頼む。
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