第216話 エリアボス

 島に上陸して、ドロップ品と魔石を回収したらすぐに階層入り口に向かった。島の中には、魔物はいなかった、と言うより海岸を上がると直ぐに入り口の階段だった。階段を下りてサーチで次階層入り口を探した。距離は、45km。30km移動して5kmだけ距離が短くなった。海上の移動距離と下層ダンジョンの移動距離が一致しているわけではないかもしれないけど、仮にほぼ一致していると考えると…。


「シエンナ、さっきの島とこの島を含んだ地図を作成することができる?」


「えっ?はい。ドローンが飛行した範囲でしたら描くことができますよ。」


「じゃあ、その地図にさっきの島から50km半径の円とこの島から45kmの半径の円を描いて僕のタブレットに送ってくれない?」


 二つの円が交わる場所が2か所できた。仮に海上の移動距離と下層ダンジョンの移動距離が一致しているなら次階層入り口はその2か所のどちらかになる。一致していなかったら、近くなるダンジョン入り口を探して回るしかない。ある程度の距離になったらそこからは、下層ダンジョンを移動する。


 二か所ともすぐ側には島はなかった。近くにある島を探して今度は全員で移動する。ある程度距離を取って、まずは、最遠の次回層入り口の方面にある円が交わる方向に移動してみた。島がある。次回層入り口もあるようだ。この島には5体のアーマードライノが生息していた。ロジャーの索敵にはそのほかの魔物はかからなかったようだ。


 先ほどの島から交差する点の方向に向かって25km進んだ場所にその島はあった。まずは、着陸できるようにアーマードライノを片付けないといけない。フィートが2体のアーマードライノを他の3機で残りを担当することにした。射線がお互いのドローに重ならないように位置取りを行い一斉に攻撃。全ての魔物を魔石に変えて索敵しながら着陸した。


 階段を下りてサーチ。距離は20kmに縮まっていた。ビンゴだ。


「ここから、20kmの場所に次階層入り口があるみたいだ。20kmなら歩けない距離ではないし、エスで移動しても15分程で着くと思う。ここからダンジョンの中を移動しようか。」


 僕の提案にみんなが頷いてくれた。エスと2号でこれからはダンジョンの中を移動する。まだ、一体の魔物とも会敵していないからどのくらいの強さの魔物が出るのかは分からないけど、エスの中に居て一瞬で殲滅されることは無いと思う。


 天井の高さは、先ほどより少し高くなっていた。


「この広さが続くようならオットーに乗り換えませんか?」


 シエンナが心配そうに言ってきた。オットーに乗り換えるのはもう少し待った方が良いかもしれないけど、ガーディーたちを布陣に組み込むことはしておいた方が安心かもしれない。


「シエンナ、ガーディーたちを出して、先頭をガーディーとソーディー、殿をインディーにしてくれない。この広さだとオットーにするのはちょっと心配なんだ。逃げないといけないときに身動き取れなくなりそうで。」


「分かりました。じゃあ、ガーディーたちを出して布陣を作り直します。」


 5分程移動すると扉があった。中に魔物の気配がうじゃうじゃあるそうだ。


「扉を開けると直ぐに会敵する。横一列で扉から出てくる敵を殲滅数を減らした後、部屋の向こう側へ移動する。フォレス送信。」


『2号:了解』


「シエンナ、ガーディーとソーディーに扉を開かせて。」


「了解です。」


 ガーディーとソーディーが扉を開けるとカニがぞろぞろと出てきた。カニのモンスターハウスだ。アンディーとロジャーは、一度外に出るとデッキに飛び上がった。シェリーとヴェル、ヒューブさんもそれを追った。オーさんとルーさんもデッキに飛び乗って行った。僕とミラ姉、魔術発出口から攻撃だ。シエンナは、エスの魔石ライフルを撃ちまくっている。右を見るとファルコンのメンバーは、操縦席のドロー以外はデッキに上がって攻撃していた。


 アンディーが魔力を練り上げたウェポンバレットをぶっ放した。ダンジョンの扉もろともカニが吹き飛んでいく。扉から出てくるカニがいなくなるとエスはモンスターハウスの中に入った。部屋の四隅にいる蟹を次々に片づけていく。ハウス内の魔物をすべて魔石に変えて今回の戦闘は終了した。


 反対側の扉を開けて外を見た。天井はさらに高くなり、アーマードライノが悠然と歩いている。すぐに扉を閉めた。


「やっぱり、オットー1台にしよう。この隊列じゃあ、アーマードライノを捌ききれない。突進される前に頭を吹き飛ばして魔石にしないと突進されたら逃げるしかない。」


「一体仕留めたら、他のアーマードライノは、首と足を引っ込めて防御の体制を取るはずだからその間に駆け抜けていきましょう。」


「全員、オットーに乗り換えよ。」


 僕たちは、安全になったモンスターハウスでオットーに乗り換えた。運転席は、ドローに任せて、シエンナはデッキでゴーレムたちを指揮する。全速で移動するときに、ゴーレムたちを回収するためだ。


 ガーディーとソーディーに扉を開けてもらい、射線ができていたアーマードライノの頭を吹き飛ばす。デッキからの一斉射撃で10体のアーマードライノが魔石に変わった。


 それを合図にしたように、他のアーマードライノは、頭と足を甲羅の中に入れて防除の体制を取った。


「シエンナ。ゴーレムたちを回収して!全速前進。次階層入り口方向に向かって進んで!」


 振動を前方に感じたアーマードライノが突進してきてもはるか後方だ。敵を排除したつもりになったアーマードライノは、突進を止め悠然と歩き始める。


 アーマードライノのエリアを抜けると貝殻を背負った大きな蛇が現れた。この蛇もオットーのスピードに追い付くはずなく、後方に置いてきぼりされている。


 次階層入り口まで、後2kmゴツゴツとした岩の陰から魔物が現れた。鎧のような皮膚を持つ半魚人だ。手には斧や大剣を持ちオットーに飛び乗ろうと待ち構えている。


「無賃乗車を許可するほどお人よしじゃないぞ。」


 なんか変なことを言いながらアンディーが隠れている岩ごとウェポンバレットで吹き飛ばしていた。ここの岩は、あの半魚人たちの砦代わりだったのだろうか?何となく人工的に積み重ねられているような重なり具合だ。


 そんな岩を吹き飛ばしながらオットーは進んでいった。次階層入り口まで後500m。目の前に大きな扉が現れた。


何人なんぴともこの扉の先に進むこと能わず。10の階層を超えようとする者、その力を示すことなくこの扉を超えること叶わず』


「ええっ、ここ11階層じゃないの?」


「そう言われれば、上の階層と同じような魔物が出て来てましたね。」


「同じ階層だから、距離と方向が一致してたんだね。」


「とにかく、ここのボスを倒したら良いってことでしょう。今までと一緒じゃない。」


 全員デッキからオットーの中に入った。ボス部屋に突入する時は、用心するに越したことは無い。勿論、ガーディーたちには出て来てもらう。前にガーディーとソーディー、殿は、インディーだ。


 ガーディーとソーディーに扉を開けてもらう。とても広い空間が広がっていた。目の前に大きな魔物がいた。羽をもつトカゲ。ワイバーンだ。


「ゴーレムハンドに盾を持たせて。バッキー先に出て警護。ロジャー、アンディー、アンジー、シェリー、デッキに出て高火力物理攻撃よ。私たち追いかけても魔石ライフルでつい攻撃。向こうの攻撃が来る前に終わらせるわよ。」


「シエンナ、撃ての合図で魔石ライフル最大火力で攻撃して。初撃で終わらせるわよ。」


 シエンナ以外全員がデッキに上がり攻撃態勢を取った。


「攻撃用意。魔力を練り込んで!…、撃て!」


 ワイバーンは、僕たちを見つけ、攻撃の為の魔力を練り込もうとしているところだった。その瞬間。まばゆい光とたくさんの武器が目の前に迫っていた。もう逃げようにも間に合わない場所に。


『ガゴシャーン…ゴゴゴゴゴ。ドガガガガドガガキーン。」


 ワイバーンは飛散し、皮をドロップして消えていった。今までワイバーンがいた場所には、転移の魔法陣と透明の転移の魔石が転がっていた。その後ろには、次階層入り口の扉がある。


 僕たちは、下の階層を覗いて転移の魔法陣でダンジョンを出ることにした。ロックバレーのダンジョンの2階にある転移の魔法陣とそっくりの魔法陣がエリアボスの部屋にあった。


 下の階層は、寒かった。雪と氷の階層だ。スノードラゴンがいた時の6階層ほどじゃないけど、今の6階層よりはるかに寒い雪と氷の階層だった。





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