第215話 階層入り口巡り 

 階段を降りると次の階層だ。目の前に広がるのは、海。そして、洞窟。サーチしてみた。確かに洞窟は次の階層入り口につながっているようだ。しかし、距離が…。サーチで追いきれないくらい深い。


 海を渡った時は…。一番近い場所で2km。遠い場所でも120km。海上に10か所の次階層入り口の候補がある。入り口は、その全てかもしれないし全て違うかもしれない。でも、洞窟の中に入ってサーチすると違う結果が現れるかもしれない。どうする。全てを試すこともできる。一番効正解の確率が高い探索から始めるしかない。


「海から行った方が良い。ドローンで移動できる場所から確認した方が良いと思うぞ。」


 アンジーは、断言した。確かに、距離も何も分からない洞窟ダンジョンの先にある階層入り口より距離も場所も分かっているところから確認した方が良いとは思う。


「今までは、階層入り口がブラフだったことは無い。それなら、近場から探索をする方が良いのではないか?近いのだ。上陸が難しければ引き返せばよい。このパーティーには、偵察用の魔道具もあるのだろう?心配ないではないか。」


 よし。近場の入り口からドローンで偵察をかけることにしよう。近い順に有人ドローンが着陸できる場所がある次階層入り口候補を探してみることにした。


 シエンナにドローンを飛ばしてもらって20分。階層入り口から30km離れた場所にドローンが着陸できる島を発見したと連絡があった。


 僕たちは、前回同様の有人ドローンフォーメーションで30km先の島に向かった。リア機は、僕とミラ姉。フェイ機は、ドローとソイ、サム、リカ機は、ボフとアンジー。残りはフィートだ。前回のSSSランク討伐と同じ布陣で島に上陸だ。


 何もない。もうすぐアグリゲートメンバーが全員揃うと言うのに何もない。それで良いのか?これが初回限定サービスなのか。ぽつりと口を開けた次階層入り口。次々に着陸するドローン。全員着陸したところで階層入り口の階段を下りていく。


 階段は、人が2列でようやく通れるくらいの大きさ。先頭は、バッキーだ。ガーディーたちは入ることができなかった。それに続いて盾師のメンバー。ドロー、シエンナ、ヒューブ。その後、アンジー、アンディー、ロジャー、ヴェル、シェリーの近接武器メンバー、最後が支援、遠距離攻撃のメンバーだ。殿は、ボフさんが取ってくれた。


 30mほど下っただろうか。階段が終わって洞窟になった。魔物の姿はない。次回層入り口のサーチをかけてみた。ここからは、かなり離れているけど、確かに次の階層入り口はあるようだ。しかも、一つ。洞窟は、階段入り口よりも広く高くはなっているけど、ガーディーたちは、頭が使えてしまうくらいの高さだ。エスだと大丈夫だろう。でも、ぎりぎりだ。


「次の階層入り口まで140kmってところかな。ここからだとかなり離れている。ロジャー、索敵にかかる魔物はいる?」


「この先に、ウヨウヨいる気配がある。ここに出て来ていないのが不思議なくらいだ。結界か扉で仕切られているのかもしれない。」


「洞窟の中を進むのが良いのか、別の階層入り口から入った方が良いのか分からないな。一度、外に出て別の階層入り口から入ってみないか?」


「そうしましょう。何の妨害もなく次の階層入り口にたどり着けるとは思わないけど、海の上をドローンで移動した方が楽なようだわ。」


 僕たちは、一度外に出て、再度ドローンで出発した。この島の階層入り口から少し離れた場所にある島で、ドローンが着陸できそうな場所がある島を探して分散することになった。ただし、見つけてもすぐに着陸しないで、全員が揃うまで待つことを条件にしてだ。


 20分ほど分散飛行で島を見つけた。階層入り口は、ほとんど目視で北から効率よく探すことができた。20分で4つも着陸できそうな島を見つけた。こんな時は、索敵の精度が一番高いシエンナがいる場所を基準に全員が一番早く集まれそうな場所から上陸することになっていた。


 今回は、偶然、僕たちが見つけた島だった。僕のサーチで島には何体かの魔物は見つけていた。固い甲羅を持つ亀の魔物だと思う。その亀が20体ほど島をウロウロとしている。海岸には海の階層と同じくカニが潜んでいるようだ。


『フィート:全員揃いました。次階層入り口側の亀の魔物を排除後、着陸しましょうか。』


『リア:階層入り口の一番近くにいる魔物の頭を狙ってくれ。甲羅だと魔石ライフルで貫通できるか心配だ』


『フィート:近場の魔物を一斉に排除することをお勧めします。攻撃を感知すると甲羅の中に入ってしまうかもしれません。』


『リア:フィートが階層入り口そばの3体を担当。リア機がすぐ右の一体。フェイ機は、中央3体から左に少し離れた場所にいる1体。リカ機は、中央4体から右に少し離れた場所にいる1体を担当してくれ。準備が済んだら、報告を頼む』


 各機担当の魔物に射線を確保し、報告をしてくる。


『フィート:準備完了』

『リカ:準備完了』

『フェイ:準備完了』


『リア:3カウント後、撃ての合図で撃つように。では、カウントを始める。3、2、1、撃て!」


 全てのファイヤボールが命中し、亀の魔物は魔石に変わった。ファイヤボールの音と魔石に変わっていく魔物の気配に気づいた他の亀は、手足、頭を甲羅の中に引っ込ませて石のようになってしまった。試しに、僕とミラ姉でかなり魔力を練り込んだファイヤーボールを撃ちこんでみたけど、ファイヤーボールは、弾かれてしまった。


『リア:私たちから着陸してみるわ。他の亀の様子を見ておいて』


『フィート:了解』


 僕たちは、慎重に魔物をサーチしながらドローンを降下させていった。着陸して、キャノピーを開けた時。


『フィート:離陸しください。リア機、5時方向から亀が突っ込んできます。速いです。急いで』


 立ち上がりかけていたミラ姉がシートベルトも閉めないでキャノピーを開けたまま離陸する。


「レイ、しっかりつかまっておきなさい!」


 浮かしかけてした身体がシートに押し付けられる。振り落とされないように椅子に捕まった。ドローンは急上昇し、すぐ下を亀の魔物が駆け抜けて行った。亀とは思えないスピード。何だあの魔物は。


『フィート:リア機が着陸してすぐに頭を出して突進していきました。振動を感知したのかもしれません』


 駆け抜けて行った亀は、入り口から離れた場所で草を食べ始めた。今の突進で敵を排除したと思ったのだろうか。他の亀は、首を甲羅に入れたまま動こうとしない。リア機で草を食べている亀の横から近づき、魔石ライフルで頭を打ちぬいた。


 残りの亀は、14体。どこかに隠れていなければ、それだけだ。それにしても何故さっきの1体だけが突進してきたんだ。他の亀は、身動き一つしていないのに。


『リア:一番遠くにいる亀の正面の延長上に着陸してみる。様子を見ていて』


『フィート:了解です』


 次階層入り口から、一番遠くにいる亀の正面。入り口からも亀からもかなり離れているけど、一番遠くに着陸してみた。ドローンが着地した瞬間、亀は角のある頭を出し、ドローに向かって突進してきた。リア機は、離陸しながら正面に向けてファイヤーボールを発出。突進してくる亀は、尖った角でファイヤーボールを貫いた。そのまま、上昇していくドローンの下を通過していき、海岸を突っ切って海に飛び込んでいった。


 ブクブクと沈んでいく亀だったが、水中で方向を変えたようで、海岸の方に戻って来た。砂浜を歩く亀に向かって、海岸のカニが攻撃を仕掛けているが、そのまま悠然と海岸を横切り陸地へと上がってくると何事もなかったかのように草を食べ始めた。


「やっぱり、正面の振動に向かって突進してくるようね。それにしても、角も甲羅も頑丈みたい。全くダメージが通らなかったわ。」


『リア:見てた?正面の振動に向かって突進してくるようだわ。なるべく距離を取った場所に着陸して誘導。通り過ぎて、草を食べているところを攻撃しましょう。今誘導した亀は、私たちが狩るわ』


『了解』『了解』『了解』


 アグリケート返信で了解が送られてきた。僕たちは、草を食べている亀の横に回ってファイヤボールで頭を吹き飛ばした。その後は、それぞれの機が亀の正面に一度着陸し、亀を誘導した後狩っていった。同時に着陸しないとどちらから亀が突進してくるかわからなくなるため、かなり慎重に進めないといけなかったけれど、シエンナがドローンの着陸の管理をしてくれて事故なくすべての亀を狩ることができた。


 亀の魔石を回収。魔物の皮と甲羅がドロップ品だった。アーマードライノの甲羅。初めて聞く魔物の名前だ。オカタルさんたちも知らなかった。


 同じように次階層入り口の階段を下りて行った。それからサーチ。次階層入り口までの距離は50km。かなり近づいたけど、もう少し近づきたい。


 僕たちは、再度ドローンに乗り込み次の入り口に向かった。入り口側に戻るより、離れる方向の方が次階層入り口に近くなる気がして、そちらに向かった。ドローンで5分位の場所。距離にして30kmほど離れている場所にその島はあった。


 アーマードライノがいた島よりもかなり小さく、海岸くらいしか着陸場所がないようだ。そしてそこには、カニがいるはずだ。その肉は、かなり美味しかった。Cクラスの魔物だと思うが、肉のおいしさはAクラスだ。


 前回の海岸攻略同様にドローンを横1列に並べる。布陣は前と同じ。フィートとリア機を中央に、右がフェイ機、左がリカ機で横一列だ。


「初撃はロジャーお願い。海岸一帯に弱めの攻撃をばらまいて。おびき出して、その後一斉攻撃よ。フォレス送信。」


 ロジャーが、フィートの移動砲台から弱めのファイヤボールを浜辺に打ち込んでいった。ドフドフドフドフドフドフドフドフドフドフ。その攻撃におびき出されるようにカニたちが砂の中から這い出して来る。次から次へ、ものすごい数だ。


「攻撃開始。フォレス送信。」


『ドゴーッ、ドガッ、ゴーッ、ゴーッ、ゴーッ、ゴーッ、ゴーッ、ガガガガッ、ガフゴーッ』


 途切れることなく撃ち出される高威力のファイヤボール。全員、上級回復ポーションを飲みながらの攻撃だ。この後とってもお腹がすく攻撃方法だ。20分ほどの攻撃でカニが這い出してこなくなった。焼き蟹の美味しそうな臭いが砂浜中に漂っている。魔力の使い過ぎと焼き蟹の美味しそうな臭いでお腹が空いて死にそうになっていた。


「索敵をしながら、警戒して着陸よ。フォレス送信。」






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