第213話 ダンジョンでの野営

「今日は、この階層で休むことにしましょうか?」


 時刻は、5時。ヒドラ退治にかなり時間を使ったし、鍾乳洞階層を抜けるのにも時間がかかった。それに、若干、疲れたかもしれない。


「魔石も、木材もたくさんあるから、コテージを2つ作って、3つのコテージで休もうか。結界を張っていても行き来できるように3つをつなぐ通路も作ろう。」


 いつものコテージ。バストイレ付を精錬コピーして、アンディーが作ってくれた穴に設置。外向きにある扉の他に向かい合う後ろの壁に出入り口を作って上に魔石をセットする柱と屋根を付ける。これで裏口を通ってどのコテージにも移動できるようになった。


 柱の上に魔力を貯めた魔石をセットした。勿論、タブレットから結界の入り切りができるようにした。出来上がった3連コテージに皆さんを招待した。


「食事は、私たちのコテージでみんな一緒に取りましょう。明日もダンジョンの探索をつつけるからお酒は無しね。それから、地下にトイレとお風呂があるわ。今日は、私たちのコテージの右側が男性コテージ。左側が女性コテージにするね。共有コテージが私たちのコテージ。それぞれ荷物を移動して、男性コテージは、少し狭いかもしれないけど我慢して頂戴。」


 僕とシエンナ、ミラ姉で夕食の準備をした。精錬調理が中心だったけど王都の宿の朝食を沢山メニュー化しているからたくさんの料理を並べることができた。


 シエンナとミラ姉は、サラダと何種類もの肉を焼く担当だ。美味しそうな臭いがコテージ中に広がって行った。


 各コテージでお風呂を済ませたメンバーが集まってきた。


「ダンジョン探索中にお風呂に入って、ベッドに寝るなんて考えられないわ。」


 ソイさんが目をキラキラさせながら、料理を見つめてそう言った。


「俺たちは、野営の一回目から、このコテージの中で寝ているからな。流石に風呂を作ったり、トイレを作ったりした時は、呆れたけどな。」


「ええっ、ロジャーも喜んで手伝ってくれたじゃないか。」


「そりゃぁな。お風呂はともかく、トイレがあれば、探索中でも安心だからな。それでも呆れていたんだよ。」


「はいはい。その話は、もうお終い。私は、とっても嬉しかったわ。コテージにお風呂やトイレができた時。」


「私もです。感謝します。」


「私も、凄いと思うし、こんなダンジョン探索なんて初めて何で戸惑いはするが嬉しいぞ。」


 アンジーさんもミラ姉たちに同意してくれた。


「わかった。ありがとう。で、もうこの話は終わりにして御飯にしようか。」


 それから、ゆっくりご飯を食べて、片付けを終え、休憩しながら明日のダンジョン探索について話をした。


「鍾乳洞階層のボス部屋を考えたら通常通りのボスだったと思わないか?」


「そうだね。3階層のゴーレム階層の最難関ボス部屋と変わらなかったからね。」


「アイテムボックスのスキルを持っているあなたたちだから難なく攻略できたと思うが、持っていないパーティーにとって攻略は、ほぼ無理なボス部屋だと思うぞ。」


「一番近くが、ここだったからね。離れた場所にも階層入り口があったみたいだから、そっちの方だともっと難易度が低いのかもしれないね。」


「しかし、コーラルゴーレムとアシッドバッドがいる中を後何十kmも先に進むのも大変だな。」


 シェリーが言うのももっともだ。確かにエスもなく、歩いて後何十kmもこのダンジョンを進むとなるとかなり厳しいことになるだろう。仄かに明るさがあることだけが救いだ。


「コーラルゴーレムは、石化の霧は吹きだしているけど、動きも遅いし、攻撃と言うより、この鍾乳洞ダンジョンを作っているって感じなのかもしれないですね。」


 ソイさんが考察してくれた。確かに、エスに乗っているからかもしれないけど、攻撃行動はそう多くなかった。攻撃的なのはアシッドバッドの方だ。


「今日のことと、他の冒険者の攻略のことより、明日の私たちの探索方針について話しましょう。」


「ああっ、そうだな。冒険者ギルドに報告しないといけないから鍾乳洞ダンジョンのことも整理しておかないといけないと思ったが、明日以降の探索方針を確認しておく方が大事だな。」


 ヒューブさんも、ミラ姉の話に賛同して明日からの方針について話すことにした。


「この草原と森の階層は、少し詳しく調べた方が良いんじゃないか?」


「どうしてだ?」


 アンディーの提案にアンジーが質問をしてきた。


「一つは、階層の深さと魔物の強さの関係を確かめるためだな。階層ボスが通常の強さに戻ったのなら、魔物の強さも、この階層の魔物の強くなり具合で分かるんじゃないかと思ってな。そして、もう一つは、このダンジョンの攻略価値を知るためだ。」


「攻略価値?」


「そうだ。このダンジョンは、まだ新しい。だから、ドロップアイテムは、あまり大したものは期待できない。魔物の肉と魔石くらいじゃないかと思う。」


「確かに、初回サービスとやらで、下層ダンジョンの魔物が出てくるなら魔石の価値もあるだろうが、それも期待できないならダンジョンの価値はそう高くないということになるだろうな。ところで、ダンジョンが新しいこととドロップ品が期待できないこととはどんな関係があるのだ?」


 ヴェルさんの疑問はもっともだ。


「この前ロックバレーのダンジョンで実験して分かったんだけど、そのダンジョン階層の素材で作ったものをそのダンジョンに吸収させると、複製してドロップするみたいなんだよね。」


「落とした物そのものではないのか?」


「もしかしたら、そう言うこともあるかもしれないけど、実験した時は、僕が作ったものと違うものだったよ。自分で作ったものと他の人が作ったものは、形が同じでも区別できるんだよ。」


「それじゃあ、ここの木材や土なんかで作ったコテージをこの階層に吸収させたら、この階層でコテージを拾えるかもしれないってことなのか?」


 ドローが、ワクワクした顔で聞いてきた。


「このダンジョンが、コテージを吸収出来たらそうなるかもしれないね。」


「それなら、明日は、コテージを吸収させる実験をしてみよう。」


「その他、この森の素材で作ることができそうなものはないかな?」


「この階層に薬草や毒気し草があるならポーションもできるかもしれないわね。」


 ミラ姉の意見は絶対優先だ。


「それなら今すぐ実験できるね。初級ポーションから上級ポーションまで吸収させてみようか。」


 僕とロジャーで索敵して近くに魔物がいないことを確認した後、外に6種類のポーションを置いてみた。ポーションはポーション瓶ごと一瞬で吸収されていった。


「ドアを開けて。」


 僕たちを中に入れてもらってさっきの話の続きだ。


「他に何かないかな?」


「う~ん。今すぐには思いつかないな…。どうせならアイテムバッグなんてどうだろう。魔物の皮と魔石でで聞いてるならこの階層の素材で作れるんじゃないか?」


「ヤルミラさん、それ良いね。この階層の魔物の皮と魔石でアイテムバッグを作って吸収させてみよう。アイテムバッグが拾えるとなったら、このダンジョンの価値は、爆上がりだよ。」


 明日は、アンディーと僕と大樹の誓で森方面へ素材採集に行き、残りはオットーに乗ってこの階層の魔物狩りへ行くことになった。そして、ポーションは、この階層の素材で作ったものをもう一度吸収させてみようということにもなった。明日からポーションをドロップしてくれれば、そんなことしなくても良いんだけれど、念のためだ。


 次の日の打ち合わせと確認の後、それぞれのコテージで寝た。夜警は、バッキーたちに任せていたから全員ぐっすり眠ることができた。







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