第211話 アグリゲート討伐完了

「多頭の蛇ね。あれだけボロボロにしてやれば、頭を増やすことはできないでしょう。とにかく、海岸に出ましょう。ジャングルの中だと奴に分があるわ。」


 なんかミラ姉が強気でおっかない。僕たちは、全員海岸に出てた後、フィートに乗って一旦海岸を離れた。作戦の練り直しの為だ。15人全員がフィートに乗ると少し狭く感じるけど、窮屈なほどではない。テーブルの上に焼き菓子とお茶を準備して作戦会議だ。


「ジャングル探索は得策じゃない。間違いなく、悪手ね。」


「そうだな。ジャングルは、奴の縄張りだし、アグリゲート全体が機能しない。狭すぎるんだ。かといって分散したら奴の思うツボだ。火力は落ちるし、奴は一体だとしても多頭だ。別々に攻撃を仕掛けてくる。」


 ボフさんもミラ姉と同意見。


「じゃあ、残る手は2つだな。」


「二つですか?それって何ですか?」


 僕が、ヒューブさんに聞くと。


「ヒドラを捨てて別の階層入り口を探すのが一つ。これが最善手と思うのだがな。もう一つは、空からヒドラを殲滅するという手だ。これは、上手くいく保証はない。」


「私たちが、アグリゲートを組んだ以上、私たちしかできない手が望ましいと思うのだが…。」


「ボフ、それは、どういうことだ?」

 アンジーがボフさんに確かめた。


「初回サービスを見逃す手はないってことだよ。」


「Cランクの俺たちがSSSランクの魔物を討伐できるチャンスに巡り合えるなんてこれから一生ないことかもしれないしな。」


「SSSランク以上の魔物なんて神話の中にしか出てこないからな。」


「それ以上は、神獣クラス。神と同列に扱われる魔物だ。人にどう、こうできる魔物ではない。」


 オカタルさんが、教えてくれたけど、みんなは知っていたんだね。うんうんと頷いてる。


「それにしても、ヒドラの毒に当てられなくて良かったな。もしもそんなことになったら即死ものだったのだぞ。」


「じゃあ、毒対策の為にも空からの攻撃にしましょうか。」


「でも、今のままじゃ、火力も量も不足してる気がするな。」


「全員、3人乗りドローンで飛んで、6機だもんな。」


「フィートから撃つことができる人を増やしたらどうでしょう。前方左右に2丁か3丁ずつ魔石ライフルを取り付ければ、フィート1台で5人から7人が狙撃できます。下の移動砲台を入れれば最高8人同時に攻撃できます。」


「それにリア機に私とレイが乗って、左右の2丁を魔力タンクのレイが撃てば、私が前のライフルを担当して3丁。ボフ、アンジーがリカ機に乗って2丁。ドロー、ソイ、サムで3丁。これで調度ね。ロジャーが移動砲台。アンディーとシエンナ、大樹のメンバーがフィートよ。レイ、フィートの左右に2丁ずつ魔石ライフルを追加して頂戴。」


「了解。じゃあ、一度、階層入り口に戻って魔石ライフルを追加するね。アンディー、取り付けと照準の調整は、頼んだよ。」


「了解だ。光の魔石で照準を合わせられるようにしないといけないな。少し面倒だけど、頑張ってみる。照準を映すのは、タブレットで良いか?良かったら、その設定はシエンナにお願いしたいんだけど。」


 アンディーは、追加設定の道筋が見えているようだ。


「大丈夫だと思う。シエンナ。設定と調整をお願いして良いか?」


「大丈夫ですが、試し打ちは、できないですか?照準の調整は試し打ちをしないとできないです。」


「試し打ちする時間はないな…。今付けているライフルの設定を参考にして設定できるように、光の魔石とライフルの角度が同じになるように取り付けるしかないな。撃つ方で、ずれを確認しながら調整してもらおう。」


 入り口に着くまでに魔石ライフルを精錬したり、リア機のライフルを中席から2丁撃てるようにしたりした。


 着くと直ぐにフィートを収納して魔石ライフルを前方前に3丁ずつ6丁取り付けた。それに合わせて、シエンナの操縦席横に椅子を6席並べた。その後、光魔石と銃の角度を調節して取り付けたり、タブレットに照準を映し出すことができるように設定したりして、約、1時間程でフィートのセッティングが終了した。話し合った布陣で、ヒドラ退治に出発した。最後に見にリア機の中席の引き金をかな席から撃つ小手ができるようにした。これで、準備終了だ。


「フィートに8人。リア機とフェイ機、リカ機に2、3、2の7人。レイ、全員に10本ずつくらい上級回復ポーションを配っておい頂戴。全員、魔力切れなんて怖がらないでガンガン行くわよ。」


リア機は、僕とミラ姉。フェイ機は、ドローとソイ、サム、リカ機は、ボフとアンジー。残りはフィートだ。ミラ姉の声に。


『了解。』


 14人の声が揃った。トリプルSランク討伐だ!


「ヒドラの島が近づいてきたわ。レイに初撃を任せる。ヒドラの魔石をサーチできる?」


「やってみるけど、いくつもあったらどうするの?」


「一番近い所から攻撃よ。でも、一つだけの時の方が厄介よ。その時は、魔石を狙わないで、その少し上を狙ってみて。魔石を破壊したら何のためにヒドラを狙っているか分からないわ。」


「私たちのヒドラ退治方法は、多頭を全て落とすことよ。ヒドラの魔石とドロップ品をたんまり頂きましょう。」


『了解』


「全員出撃!」


 ミラ姉のリア機を先頭に3機のドローンが隊列をなして飛行していた。リア機、フィート、フェイ機、、殿がリカ機だ。到着したらリア機の左隣がリカ機、フィートの右隣りがフェイ機になる。」


 40分後、ドローン編隊はヒドラの島に到着した。僕は、慎重にサーチするこの島の中の大きな魔石の位置を。


「ロジャー、ボフさん、ヒューブさん、魔石位置は、海岸を6時とすると島の中央よりも3時の方向側。中央と島のへりの中央側、3分の1場所にあるけど、間違いない?」


「魔石の位置は間違いない。しかし、頭と思われる大きな気配は、かなり色々な場所う散らばっている。」


 ボフさんの索敵にかかっている先の場所は間違いないと思う。


「おれは、魔石の位置から11時方向に移動した場所を初撃を入れることを進める。理由は、何となくだ。首根っこがある気がするんだ。」


「了解。初撃は、そのあたりに入れてみる。反応を見てその後の攻撃を入れてくれ。じゃあ、初撃行きます。」


 タブレットに移る照準をしっかりと見定める。ブルブルと揺れる攻撃対象の照準それでも慎重に引き金から魔力を押し、ぎりぎりまで練り上げて、撃った。


 ほぼ思った場所に着弾し木々が吹き飛びジャングル全体が鳴動した。


「グギギギゃーッ」


 四方八方のジャングルの木がなぎ倒された。倒れる木は、今撃ち込まれたファイヤーボールの場所に集まってきている。そこに敵がいると認識しているのだろう。


「残念だったわね。そして、ありがとう。集合してくれて。全員、一斉攻撃。初弾よりほんの少し中央寄りに狙いをずらして、撃て!!」


 全員による一斉攻撃が始まった。ジャングルの木々は焼け落ち、白いファイヤーボールがヒドラの肉を焼き、千切り取る。沢山の首がポトリポトリと落とされていく。それでもヒドラは、死なない。尚も、頭を自噴の体がある中央に寄せ、攻撃者を食いちぎろうとしてくる。


 しかし、そこには何もない。自らの魔石を守る体があるだけだ。そこに食らいついていくヒドラ。完全に錯乱し、知性を失っている。


 今、ヒドラが食いつこうとしている場所に更に、高温の白いファイヤーボールを撃ちこむ。食いちぎられただけなら再生し、無限に増えていく頭だが、食いちぎられ焼かれると再生できない。


 次第に首の数は減り、動きが無くなって来た。やがて、その大きな体は、ダンジョンに吸収され、大きな魔石と大きな金属傀が残された。


『シェリー:やりました。トリプルSランクの魔物を倒しました!』


 タブレット通信は、しばらくの間大騒ぎだった。僕たちのアグリケートで倒した初めてのトリプルSランクの魔物だ。興奮しない訳がない。それでも、慎重に索敵とサーチを繰り返し、安全を確認して着陸した。回収した物は、ヒドラの魔石。毒袋。ヒドラの皮だった。


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