第209話 フォレス・アグリゲートの初ダンジョン

 国王陛下ご夫妻とティモシー様は、披露パーティが終わったらすぐに王宮に戻られた。


 残ったのは、クーパー卿とステラ様、ミーシャ様、オースティン様とチャールズ様だ。ミーシャ様とチャールズ様は、割と早く部屋にお戻りになったけど、クーパー様が遅かった。企画部長と喧々諤々新商品について議論し、ステラ様とオースティン様は、最後の方までそれを聞いていらした。何が面白かったのだろう。


 皆さんが朝食を済ませて、最後の研究所見学を終え、王都に帰られたのが10時だった。やっぱり早く研究所の敷地内に所長と研究企画部長の家を作らないといけない。お忍びとはいえ、平民の家に王族がお泊りになるのはどうかと思う。


 僕たちが、パーティーハウスに戻ると、大樹の誓のメンバーが家の前に立っていた。


「私たち、力不足とは思いますが、アグリゲート契約お願いしに来ました。」


「よく来てくれたわ。これで、私たちのアグリケートが形になる。さあ、いらっしゃい。あなたたちのパーティーハウスを案内するわ。」


 ミラ姉が嬉しそうに5人を招いてパーティーハウスに連れて行った。


「レイ、アンディー。家具作りお願いね。」


 一人一部屋のパーティーハウスに恐縮してたメンバーだったが、お風呂や台所なんかを見せられて逃げ出しそうになったのには、笑ってしまった。


「姉御、待って下さい。こんな立派なパーティーハウス、私たちに購入するお金はありません。それに、賃貸でも一月いくらになるのですか?無理です。1年で破産してしまいます。今持っている金貨200枚なんてあっと言う間になくなってしまいます。」


「何言ってるの?ここは、アグリケートパーティーハウスなのよ。賃貸なんかじゃないわ。私たちのアグリケートの拠点なの。隣には、もう一つのアグリケートパーティー、ファルコン・ウイングが入居しているわ。後で紹介するわね。」


「4日前にファルコン・ウイングとはアグリケート契約を済ませているわ。今日、今から冒険者ギルドに行ってあなたたちもアグリケート契約を済ませるわよ。ここのアグリゲート名はフォレス・アグリケート。これから、冒険者の学校の指導も含めて色々な活動をしていくわ。宜しくね。」


 それから、大樹の誓のリーダーのヒューブとミラ姉は、マウンテンバイクで町の冒険者ギルドに行った。その間に、各部屋を整えることになった。ベッド、机、棚。各部屋にその3つを備え付ける。台所には、調理道具と魔石コンロ。試作品の冷蔵庫も置いた。冷蔵庫の中にボアの肉と果物、野菜などを放り込んでおいた。調味料も一通りそろえておいた。


 次に揃えるのは、装備品だ。ヒューブの盾に溶岩プレートを仕込んで空間魔法の魔法陣を刻んでみた。盾を鉄からミスリルに変えたから、溶岩プレートを仕込んでもあまり重さは変わらないはずだ。


 溶岩プレートに空間魔法の魔法陣を刻むとアイテムバッグとして使用できるのは実験済みだ。次の実験は、火属性の魔術使いのヒューブに溶岩プレートのアイテムバッグの中に入った溶岩をファイヤーボールとして撃ち出せるかどうか。ロックバレットを打てるアンディーなら撃てるとは思うけど、溶岩は、火属性も持つから試してほしい。


 そうすると、ヒューブさんは、物理属性を持つファイヤーボールが撃てることになる。複合属性の魔術ってすごいと思う。


 そして、シェリーやヴェルにも溶岩ボールを試してもらおう。二人ともアイテムボックスが生えているそうだから実験は簡単だ。水属性のヴェルが火属性の魔術も扱えたらすごいと思う。


 そんなことを考えながら、ロックリザードの皮で皮鎧を作ったり、マウンテンバイクや、有人ドローンを作っているとミラ姉達が帰って来た。


「これで、アグリケートの人数が15人になったわ。オットーだったら余裕があるけど、エスじゃ乗り切れなくなっちゃったわね。」


「デッキに6人乗れないことは無いけど、溶岩流階層や雪と氷の階層に行った時に辛いね。」


「あの、エス2号機を作ってもらえませんか?」


「2号機は誰が操縦するの?」


「使役と情報共有は、私がして、操縦者にドローさんになってもらったら良いのじゃないかと思うのですが。」


「使役しないと完全な情報共有はできないからね。」


「じゃあ、それでいってみよう。2号機も9人乗りで良いかな?」


「2号機かエスを12人乗りにできませんか?空間的には余裕があるので。」


「じゃあ、エスを12人乗りにしよう。アンディー座席の位置替えと固定をお願い。座席は、3つ作るからさ。それから、魔力発出口も座席に合わせて作り替えておいてくれる?」


「了解だ。」


 僕は、精錬コピーでエス2号機を作っていった。20分位で出来上がり、シエンナが使役登録を行った。その後、ドローに操縦者登録を行えば、2号は、試運転できるようになる。


「それから、大樹の誓のみんなにタブレットを渡しておくね。登録方法は後で教えるから。」


「じゃあ、エス2号の試運転もかねてダンジョンに行きましょうか。」


「一昨日森のダンジョンに行ったから今日は、ロックバレーのダンジョンにしないか?」


「でも、ロックバレーのダンジョンは、暗闇ダンジョンがあるからエス2号の試運転には向いていないと思うわ。森のダンジョンの平原階層辺りで試験走行をしてその後新しい階層を目指さない?」


「そうですね。暗闇ダンジョンは、私がコントロールできるので行けないことは無いですが、試運転としては向いてないでしょうね。」


「よし。じゃあ、森のダンジョンで新階層を目指そう。」


「うっ…。まだCランクの私たちがそんなとこに行って大丈夫なんでしょうか?」


 シェリーさんがそんなこと言っている。まあ、僕たちがCランクの時は、初級ダンジョンにしか潜ったことなかったけどね。それって何日前のことだったかな。


「大丈夫よ。あなたたちは、Cランク以上の実力があるもの。それに、ファルコン・ウイングとアンデフィーデッド・ビレジャーが付いているわ。安全第一で行くけど、しっかり働いてもらうつもりよ。頑張ってね。」


 装備や乗り物を精錬し終わった頃、ミラ姉がファルコン・ウイングのメンバーを連れてきた。


「ドロー、今日からあなたが、エス2号の操縦者よ。しっかり頑張ってね。この後、操縦者登録をして試運転に行くわ。シエンナ、宜しくね。」


 さっそくシエンナは、ドローを連れてエス2号に乗り込み、操縦者登録と操縦レクチャーを行った。特に、タブレットを操縦席のハンドルの前のタブレット置きに固定することを忘れないようにと念を押していた。


 エス2号からの送られてくる情報もタブレットを通してドローに伝えられるそうだ。それから、シエンナの提案で、エス2号には、カメラ機能を取り付けた。前方の魔石ライフルの照準は、カメラを通してタブレットに送られるようになった。


「ドローさん、なるべくエス2号と会話してくださいね。答えはタブレットを通して送られてくると思います。分からないことは聞いたら教えてくれますから。頼みましたよ。」


 シエンナの方が年下なのになんかお姉さんみたいだ。


 2号にはファルコン・ウイングが、エスには僕たちと大樹の誓が乗る。今日は、ガーディアンが復活しているからコアの採集から行わないといけない。今日の採集は、僕とアンディーでサクッと行うことにした。


 20分後には、ガーディアンの間に着いていた。その間に大樹の誓のメンバーは、タブレットの登録を行い、使用方法のレクチャーを受けていた。略式パーティー名は、ビレッジとファルコンそして大樹だパーティー送信もその名前で登録している。アグリケート名はフォレスにした。ビレッジ送信、ファルコン送信、大樹送信、フォレス送信でグループ送信を区別する。


 僕たちは、デッキに上がってコアの回収を行った。

「1、ハイのタイミングで回収するよ。」


「了解。」


「1、ハイ,1、ハイ,1、ハイ,1、ハイ,1、ハイ,1、ハイ,1、ハイ,1、ハイ,1、ハイ,1、ハイ。」


 最後に回収したコアを破壊して魔石にを手に入れ、壇上にセットして扉を開けた。まずは、2号の試運転からだ。デッキには、アイテムバッグの中に槍をしこたま作って入れているボフさん、アンジーさん、サムさんソイさんが登っている。索敵を2号に任せて魔物を狩ったり最高速度を確認したりとシエンナの指示で様々な試験を行っていった。


 大樹の誓にはドローンの操縦練習をしてもった。しかし、墜落時の対応を考えるとしばらくは大樹の誓だけでドローンに乗せるのは心配だ。シエンナが小型ドローンを使って墜落時の対応ができるようになったから、操縦は、僕たちのパーティーの僕以外が行うことになった。4機に10人が分散搭乗する。


 飛行訓練は、キャノピー全開の攻撃訓練も行った。ミラ姉とシェリー、それに僕。ヒューブさんが操縦でロジャー。シエンナが操縦でヤルミラことルーさんにヴェルさん。オカタルことオーさんが操縦でアンディー。操縦するとキャノピー全開の時に攻撃に回れないといってロジャーとアンディーは中席になった。その分、操縦の負担がシエンナにかかることになるけど、オーさんとヒューブさんの頑張りに期待しよう。


 暫く操縦訓練とキャノピー全開の攻撃訓練をして草原階層での訓練を終えた。シエンナの後に続いて次階層の入り口に向かった。いつものようにコカトリスがいる。戦闘のミラ姉が魔石ライフルで仕留めた。


 着陸して鶏冠と魔石を回収し、しばらく待っていると2号に乗ったファルコンのメンバーが到着した。ドローさん以外少し顔色が悪い。聞くとドローさんがかなり無茶な運転をしたらしい。みんなから操縦者を変えてくれと言われていたけど、気にしている様子はなかった。


 試験走行だったから限界ぎりぎりの走行試験をしたのだと思っておこう。それから、湖階層に降りてドローンでボス部屋に行った。ボス部屋は、オットーで入った。前回と同じならと、デッキの上に上がってサクッとボスを倒すことにした。


 サクッとボスは魔石になり、多くのリザードマンは、ルーさんのアローレインで一気に魔石になった。今回は、シエンナ一人で終わらせるよりも早く終わった。






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