第208話 ベン神父の学校作り

 今日は、朝からミラ姉とシエンナも一緒に拠点の学校づくりに来ている。ファルコン・ウイングのメンバーは、レイにマウンテンバイクを作ってもらって、森のダンジョンへ狩りに出かけた。昨日の夕食の時、ゴーレム階層のガーディアンの間の入り口は、今日中は、開いているはずだと教えると、パーティだけで4階層で狩りをしたいと朝早くから出ていっていた。確認するとファルコン・ウイングはBランクのパーティーということだった。強いはずだ。


 レイとアンディーは、いよいよ明日に迫ったお披露目パーティーに向かって、目玉の魔道具作りに取り組んでいた。まあ、明日お披露目する魔道具は出来上がっているのだけど、次の魔道具、溶岩対応のアイテムバッグと超大型アイテムバッグ?とやらに取り組んでいるらしい。


 超大型アイテムバッグは、ゴーレムバスくらいの大きさで大きな物を運ぶことができる物にしたいらしいのだけど、何を運ぶつもりだろう。それに、ゴーレムバスの改良にも取り組んでいると言っていた。王都から砦まで移動しても気分が悪くならないくらいにしたいらしいんだけど、難しいだろうな。


「神父様、学校の建築は進んでいますか?」


「おう。建物はだいぶ形になって来たぞ。規模をどうするかは悩みどころだけど、最初は、30人くらいで良いんではないかと思っている。レイたちが作ってくれた敷地は大きいから数百人でも可能だとは思うんだが、あまり多いと、世話をする者の人数が足りないからな。初めは30名にして、必要に応じて拡張していこうということになった。」


「30名ですか。でも入学希望者ってそんなにいるんでしょうか?」


「各教会が持つ孤児院にも手紙を書いている。各孤児院には、独立したいと思う子どもたちはいるのだが、受け入れ先がなくてな。そのまま、孤児院の外に出すと犯罪に巻き込まれてしまうことが多く、かといって各町の冒険者ギルドで見習いとして働くには幼すぎて無理。シャルたちの様に商会や工房ギルドから見習いとして引き取りたいというような申し出があれば、受けざる得ない状態なのだ。教会は、基本的に寄付で運営されているからな。」


「じゃあ、そんな子どもたちがこの冒険者の学校に来るという訳ですね。そして、生きる術を学びつつ、糧も得ることができるように勉強したり、依頼を受けたりするんですか?」


「そうだな。それをどうしたら良いのか、まだ決め切れていないのだ。しばらくは、森の賢者とやらの資金で運営したり、子どもたちを食わせたりできるだろうがな。どうやって運営を安定させたら良いのか。しかも、子どもたちに生きる術と糧を得る力を付けながらだからな。」


「集まった子どもたちがどのくらいの力があるかも分かりませんからね。何なら、レイに行って畑づくりもさせましょうか。この学校の中で食料を作ることができたら、だいぶ楽になるでしょう。」


「あっ、俺、建築ギルドの手伝いに行ってくる。シエンナも来るだろう。」


 暫く、ミラ姉と神父様の話を聞いていたけど、俺は役に立ちそうになかったから、シエンナと建築ギルドの手伝いをすることにした。


 ストレージに資材を収納して必要な場所に運んだり、積み上げの手伝いをしたりすると建築の効率はどんどん上がっていく。シエンナは、ゴーレムたちに支持を出し、色々な場所の力仕事を引き受けている。物を立てて固定するまで支えたり、壁板を動かないように押さえたりと大活躍だ。


 俺たち二人が一日手伝いに入ることで、10日分くらいの作業が進むと建築ギルドの親方が言っていた。だから、きっと学校づくりの役にも立っているはずだ。俺にできることは、力仕事や運搬だけどそれでも役に立っている。子どもたちもこの学校に来れば、そんな人の役に立つスキルや力を身に着けることができるはずだ。そんなことを考えながら学校づくりを手伝った一日だった。


 一日の建築作業を終え、拠点の食堂で神父様と一緒に話をしている。


「今日、建築ギルドの手伝いをしながら思ったんです。俺とシエンナは、建築のスキルなんてありませんが、俺とシエンナが手伝いに入ると1日で10日分位作業が進むんだそうです。冒険者の学校って、そんなことができる力を付ける学校で良いんじゃないでしょうか。」


「どう言うことだ?」


「うまく言えないんですけど、冒険者の学校って、そこで学んで、冒険者にならなくても良いんでしょう?それぞれが得意なことを伸ばしたり、やりたいことをできるようになればいいんじゃないですか?」


「そうだな。パーティーメンバーは、同じ力やスキルの者は必要ないからな。お互いの力を出し合って仕事をする。皆、違うことが当たり前なのが冒険者のパーティーだからな。お前の言う通りだ。同じように力を付けて同じように生きる術や糧を得る方法を身に着けさせようとするから行き詰まる。なるほど。何となく進む方向が見えてきた。そうだな。レイに畑を作ってもらおう。そんなことが得意な子もいるはずだからな。」


「それから、ある程度住む場所ができたら、生徒を集めたらどうですか?早くから来た子どもたちが、後輩の子どもたちに色々と教えるっていうのも大切だと思うんですが…。」


「そうだな。よし。まずは、近くの孤児院を回って生徒を集めてみよう。それからまた考える。集まった子どもたちでできることをな。誰もいないのに何ができるか考えるから先に進まないのだ。ロジャー、ありがとう。何となく進む方向が見えた気がする。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る