第207話 海の階層探索

 海の階層だ。ここの探索を行うなら船で探索した方が色々分かるんだろうけど、船はない。だから、ドローンでの探索にする。


 ドローンでの探索も3機に分かれるより、フィートで一緒に探索をした方が安全だろうということになった。その代わりリングバードを3機出動させる。


 入り口の島から、4方向に分かれて高高度から島影や陸地を見つけることにした。ダンジョン内でどのくらい高度を上げられるかは、分からないが、できるだけ高く上がってみることにした。高度を徐々に上げながら真直ぐに進んでいく。


「今の高度は、2000mです。島影、陸地は発見できません。」


「高度3000mです。9時方向に陸地を発見しました。リングバード3号から3時方向の陸地の報告が入りました。多分同じ陸地だと思います。」


 俺たちは、この階層入り口が開いている方向にドーンを進めてきた。その方向を12時の方向だとすれば、今見つけた陸地は、入り口の向きを基準にすると10半の方向にあることになる。


「上陸はもう少し後にして、陸地探しをしましょう。」


「了解です。」


 それからも俺たちは12時方向に進み続け、30分ほど進んだ2時の方向に島を発見した。入り口から1時の方向に進んだところと思えば間違いないだろう。更に1時間ほど進んでみたが、新たな島や陸地は発見できなかった。リングバードからは、距離が離れすぎたためか陸地が見つかっていないからか連絡は入っていない。


「入り口から1時の方向にあると思われる島から上陸してみますか?」


 現在位置から近いのは島の方だ。探索にも時間がかからないだろうからと、近い方から行ってみることになった。島に近づいてみると木々が密集して生えていて、島の中央辺りには着陸できそうな場所はなかった。かろうじて着陸できそうな場所があったのは、海岸だった。50mくらいの長さの砂浜が広がっている。


「あの海岸に着陸しましょうか。」


「索敵は、念入りにお願いね。」


 ミラ姉から、オーダーが入る。


「了解です。」


「砂浜の中に、魔物の気配があります。」


「俺が移動砲台で探りを入れてみようか?」


「そうね。それじゃあそうしてもらおうかしら。シエンナ、海側から海岸に向かって高度は…、50mで接近してみて。ロジャーは、海岸が射程に入ったら、アイスジャベリンを砂浜に打ち込んで探りを入れて。射程に入ったら教えてよ。一旦停止するから。」


「そんな戦い方があるのだな。俺たちだったらとりあえず上陸してたな。」


 ドローがアンジーと話をしている。ボフもそれに頷いていた。


「できるだけ安全にが私たちの基本方針よ。それは、ファルコンのみんなも守って欲しい。お願いできるかしら。」


「了解した。しかし、そのできるだけ安全にの方法をまだ学ばないといけないようだ。」


 そんな会話を聞きながら俺は、移動砲台に入って行った。


「射程距離に入った。気配を探りながらアイスジャベリンを撃ち込んでみる。アグリゲート送信。」


 海岸に砂煙が上がる。俺が打ち込んだアイスジャベリンに反応するようにでっかいカニが姿を現した。


 一匹、二匹、三匹…。あのカニ食えるのかな。


『ミラ:上からも攻撃する。高火力のファイヤボールに変更してみて』


「了解。俺は、左端から仕留めていく。照準がかぶらないように指示お願い。アグリゲート送信。」


 ミラ姉達は、海岸に前方を向け、3丁の魔石ライフルから高火力のファイヤボールを撃ちこんでいる。俺は、宣言通り海岸の左端から仕留めていく。魔石ライフルにできるだけたくさんの魔力を流し込んで威力を上げ、撃つ。


「一匹目、それ!二匹目、オリャ!三匹目…。」


 かなりの量の魔力を使った。俺だけで60匹以上のカニをやっつけた。全員でだったら軽く200匹は超えてるんじゃないか。上は、撃ち手を変えて攻撃していたようだからな。索敵に魔物が引っかからなくなって海岸に着陸した。移動砲台は出したままだ。


 着陸後しばらくは、安全確認のためにドローンに待機。魔物の気配がないことを再度確認して移動砲台を収納し、上陸した。


「今から魔石拾いをする。ボフ、ドロー、サム、シエンナは、森側の警備を頼む。シエンナ、ゴーレムを出しておいて頂戴。」


「了解しました。」


 シエンナが3体のゴーレムを出して警備に当たった。俺たちは、せっせと魔石とドロップ品の回収だ。ドロップ品は、魔石の他には、カニのハサミとカニの肉だけだった。ほぼほぼ拾い終わった頃、ミラ姉がこれからの行動について相談してきた。


「目の前の密集したジャングルに入るは、気が進まないわね。」


 海岸から、魔物道のようなものが何本かジャングルの中に通路を作っているが、あんまりそこを通って中に入る気がしない。魔物が待っているのは間違いないのだから。


「今日の所は、上陸地点の確認だけにしておきましょうか。この島が次の階層の入り口ならジャングルの中に入るということで。レイと一緒に来た時に決めましょう。」


「では、次の陸地に言ってみますか?」


 シエンナが聞いてきたが、ミラ姉は、時計を見ている。


「そろそろお腹が空いてきたから、帰りましょうか?まだ、4時だけど、魔力を一杯使うとお腹がすくでしょう。」


「そう言われれば、お腹がすきましたね。今からまっすぐ帰っても、2時間近く必要でしょうからちょうどいいかもしれませんね。」


 ファルコンのみんなは、唖然とした顔でミラ姉を見ている。時計を見て行動予定を立てるなんてこと経験したことは無いだろうから仕方がない。俺たちも最近だからそんなことするようになったの。


 俺たちが、階層入り口に到着した時には、リングバードは、入り口上空で待機していた。それぞれ島と陸地を見つけていたようだ。シエンナがリングバードの情報を集約して地図を作った。まだ、空白の部分はたくさんあるが、この階層もかなり大きそうだ。


 それから、真直ぐ家に帰った。夕方の6時半くらいにパーティーハウスに到着した。ファルコン・ウイングの皆さんは、自分たちで食事を作ると言っていたが、エリックさんたちがみんなの分も作ってくれていたからと言って夕食に招待した。


 今日作成した地図をギルドに持って行けば金貨数枚の報償金を受け取ることができる。小さな氷属性魔石は、一つ銀貨数枚で売れるだろう。それでも100個以上だから金貨数十枚の稼ぎはあったことになる。ブリザードウルフとブリザードディアの魔石は、一個ずつ折半した。


 こまごまとしたドロップ品は、全部レイに渡して森の賢者の素材にすることにした。一番珍しいのは、氷属性のゴーレムコアだ。ロックバレーダンジョンの溶岩流階層の火属性のゴーレムコアとどっちが珍しいだろう。これからのレイたちの魔道具作りに役立つと良いのだけれど。そんな話をしながら、楽しく夕食を頂いた。


 それから、カニの肉はとにかく美味しかった。焼いてもらって食べてみたけど俺好みだった。ボフは、酒が欲しいと叫んでいたけど今日は酒は出なかったはずだ。俺たちが部屋に戻った後にも食堂の方でにぎやかな声がしていたから、最後までお酒なしだったのかは分からない。カニの肉がお酒にあいそうだったのは、ボフやアントニオさんたちの会話から伝わってきた。


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