第205話 湖階層のボス部屋攻略

 飛行訓練は、順調だった。おれが少々調子に乗ってドロフェイさんの気分が悪くなったくらいで問題なく終わった。初級ポーション入りのジュースでドローン酔いを治めて後半の飛行訓練を行うことになった。


 リカ機にアンジェリカさん、ボフスラフさん、ソイントゥさんが乗り、フェイ機にドロフェイさん、シエンナ、サムエルさんが乗る。リア機に、ミラ姉と俺。


 リア機が先頭で中にフェイ機、殿しんがりがリカ機だ。この編成でも1時間ほど飛行訓練を行い、そこそこパーティーでの飛行ができるようになったと思えた頃、休憩を取った。


「ボフスラフさんたちは、マウンテンバイクを使ったことはありますか?」


「王都で最近流行り出した乗り物ですか?」


 ソイントゥさんが、聞いてきたが、それに答える前にボフスラフさんがミラ姉の質問に答えてくれた。


「あれは、王都内を移動するには便利だけど、外を走るのは危険だと聞いていて、乗る機会はありませんでしたね。」


「王都内用のマウンテンバイクは、そうかもしれませんが、もともとマウンテンバイクは、こんな草原や道以外の所を走ることができる乗り物なんですよ。」


「乗ってみますか?」


 俺は、ストレージの中にあるマウンテンバイクを出して聞いた。


「身体強化を使って、これで走るとかなり面白いですよ。」


「私たちが、初めてこのダンジョンに来た時、マウンテンバイクで走り回りました。」


「「是非乗せて下さい。」」


 ドロフェイさんとアンジェリカさんが二人でマウンテンバイクを取り合っている。姉弟げんかになりそうだったので、ミラ姉がもう一台出してくれた。


「まだ、マウンテンバイクは、ありますから喧嘩しないでください。」


「あっ、あのもう一台あります。ロジャーさんが二人乗りのマウンテンバイクを持っているはずですからそれも使えば、全員一緒にマウンテンバイクで、ダンジョンを走ることができますよ。」


「では、アンジーに運転してもらって私が、後ろに乗ろう。」


 ボフスラフさんが、そう言ってくれたので、すぐにその布陣でマウンテンバイクに乗ってダンジョンに散っていったファルコン・ウイングの皆さん。20分くらいで、戻って来た。


「これは、凄い。我々のパーティーには、こっちの乗り物の方があっているかもしれない。アンジーとドロフェイの機動性も生かせるし、何より身軽に動けるのが良い。」


 この20分程で10体以上の魔物を狩ることができたそうだ。兎に角嬉しそうに話してくれた。


「基本的な魔道具の使用方法と使用訓練は、この位で終わりにして、ダンジョンの探索に行きましょうか。」


「はい。ダンジョン探索は、初回突破が一番難しいと聞きますが、このダンジョンは、何階層まで探索されているのですか?」


「7階層の入り口ですかね?」


 俺が答えるとミラ姉も


「多分、今のところ、私たちのパーティー以外このダンジョンを深くまで探索しようとしているパーティーは居ないかもしれないわね。」


「6階層のボス部屋を攻略した時に初回限定サービスなんて言ってたからな。」


「あの…、言っていたって誰がですか?」


「階層ボスのドラゴンが言ったんですよ。びっくりしました。なんでも、本当は、何十階層も下にいるんだけど、初回限定サービスで出て来てやったとか。」


「「「「「ドラゴン!!」」」」」


「アンデフィーデッド・ビレジャーの皆さんは、ドラゴンスレイヤーなのですか?しかも、喋るドラゴンを討伐したんですか?」


「えっ?ええ、初回限定サービスで討伐できました。よかったです。良いドラゴンさんで。」


 いつものシエンナだ。聞いていて力が抜ける。


「えっ?良いドラゴン????」


 ファルコン・ウイングの皆さんの頭にはきっと?マークがぐるぐると回っているだろう。しかし、俺もそれ以上的確な表現の仕方を知らない。運が良かったんだ。あの時は。


「まあ、その話は、いずれゆっくりとしましょう。行くでしょう。ダンジョン探索。それから、本格的に探索始めたら、長ったらしい名前で呼んでいたら間に合わないわ。私のことは、ミラって呼んで。そして、シエンナ、ロジャーで宜しく。」


「では、我々も、私は、ボフ。アンジー、ドロー、サム、ソイで頼む。パーティー名もファルコンと呼んでくれてかまわない。」


「そう言えば、私たちのパーティー名は長ったらしくて呼びにくいわね。ビレッジで良いわ。ファルコンとビレッジでいきましょう。」


「分かった。パーティー単位での布陣などは、そう呼ばせてもらう。」


「じゃあ、下の階層に行きましょうか。シエンナ、フィートで移動しましょう。下の階層入り口までお願い。」


「了解です。」


 シエンナがフィートを出して乗り込み、全員一緒に下の階層入り口に向かった。入り口の番をしているコカトリスは、フィートの魔石ライフルで倒し、ドロップ品の魔石と鶏冠とさか、ついでにフィートを収納し、歩いて下の階層に向かった。


「さっきの攻撃は何なのですか?」


「あれ?ドローンに積んだ魔石ライフルよ。あなたたちのドローンにもついてるわよ。」


「強力過ぎませんか。大型のボスに匹敵する魔物を一発で仕留めるなんて…。」


「気にしないで。魔物以外に使ったことないし、使う予定もないから。3人乗りドローンからの攻撃は、キャノピー全開でのスキル攻撃が主な手段よ。そっちの方が融通がきくし、強力でしょう。この後、練習しましょう。」


 次は、3人乗りドローンでの移動だ。戦闘訓練もするからリア機とロイ機、リカ機を使用する。


『リア:私が先頭を行くわ。ロイ機は、殿しんがりをお願い。シエンナ、索敵をお願いするわ。今回は、普通の索敵でOKよ』


『シエンナ:了解です。』


 低空で、湖の上を進み、島の上空になった。下には、リザードマンが数体見える。ドローンを見つけて攻撃態勢に入って来た。


『リア:いったん上昇して攻撃を回避』


『リア:敵の場所は確認したわね。敵3時の方向から横並びで接近して一気に殲滅するわよ。着いてきて』


 リア機の後を追い、3時方向に降下した。キャノピーを全開にして戦闘態勢を取る。本当なら、俺が中席で攻撃の中心になりたいところだけど、中席は、ドローだ。


「ドロー、魔石ライフルだ。ファィヤーボールにセットして一体ずつ仕留めてくれ。」


「了解。」


 ドロー、前方に魔石ライフルを向け、狙撃体制を整えた。


『リア:攻撃開始』


「攻撃開始だ。ドロー、撃て」


 20体ほどいたリザードマンからの攻撃を受けることなく殲滅できたようだ。


『リア:一旦上空に退避』


 リア機の指示て全員上空に退避した。索敵したが、敵の気配はない。


『シエンナ:殲滅完了した模様です。このまま、次階層入り口に向かって下さい』


『リア:了解。ボス部屋に向かう』


 ボス部屋の前の小さな空間に着陸しては、ドローンを収納し、次の着陸スペースを作る。全員着陸後、オットーを出して乗り込む。勿論、ソーディーとガーディー、インディーの三体も護衛に出しておく。


 ファルコンのメンバーは、オットーを見てびっくりしていたけど、有無も言わさず搭乗させた。前回は、ここのボスは、セイレーンだった。しかし、今回は違うと思う。セイレーンの魔石の大きさから考えて、こんな浅い階層のボスとは思えないからだ。


「ソーディー、カーディー扉を開けて。」


 シエンナが2体のゴーレムに支持を出す。前回は、この扉は空けようとすると消えてしまったが、押し開ける扉に変わっていた。


 扉を押し開けて中に入る。弓矢が飛んできた。リザードマンが撃ち出す弓矢だ。ソーディーの大剣一閃で、多くのリザードマンが吹き飛び魔石に変わっていった。弓兵の後方に、他のリザードマンよりも一回り大きい半魚人のような魔物がいた。多分この階層のボスだ。


 こちらに手をかざし魔法を放とうとしている。


『ボフゴーッ』


 半魚人が魔法を放つ前に、白いファィヤーボールがオットーの前方から発出された。シエンナが魔力を最大までため込んだファイヤボールだ。


『ズガーッゴーッボフッ』


 半魚人の胸に大きな穴をあけ、壁にも大きな穴をあけたファイヤーボルがまだ、ブスブスと壁を焦がしている。残りのリザードマンもガーディーに押しつぶされ、オットーのシールとバッシュで吹き飛ばされて魔石に変わっていった。


 ボスが倒されたことで、ボス部屋のリザードマンたちは、逃げまどいどこかに消えて行った。残されたのはたくさんの魔石。あまり大きくないけど、くず魔石という訳ではない。それに、半魚人の魔石を収納した。ヴォジャノーイの魔石だそうだ。ここのボスの名前だ。


 俺たちは、オットーを降りて魔石集めをしている。


「何もしないで、ボス部屋の攻略が終わっていましたね。」


「次の階層に期待しましょう。」


 ファルコンのメンバーが小さな声で話をしていた。本当にこの階層ボスの部屋でやっているのは、魔石集めだけだ。全部シエンナが、一人で終わらせてしまった。

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