第203話 歓迎会とポーションジュース

 歓迎会は盛り上がった。お酒も入ったし、最後は、エリックさんやドナさんも合流した。何故か、ジェイソンさんとアントニオもいた。二人には、この家と同じくらいの大きさの家を作る予定なのだけど、場所をどこにするかでもめてなかなか決まらなかったんだ。


 二人とも家族を呼ぶつもりだから、砦の中が良いだろうと言ったのだけど、家族と過ごす家と客を招いたり研究中に泊まり込んだりする家は別に欲しいと言い出した。その上、客間の配置やそれぞれの部屋の配置や広さなど、色々と注文が多く、簡単に作ることができない。結局、研究所の中に作ることになり、建築ギルドと打ち合わせ中だ。だから、未だに僕たちのパーティーハウスで寝泊まりしている。


 王都にいるお二人の家族は、そう急がなくても良いと言っているそうだ。蓄えはそこそこあるし、長年暮らした王都から出るのは、あまり乗り気がしないとも言っているとのこと。本人たちは、そんなのお構いなしに研究に没頭している。アントニオさんは、研究というより、研究企画にだけど、次に作りたい物もそろそろ提案したいと言っていた。


「それでな。レイ。お前たちが作っているマジックバッグを溶岩ボックスで作ることで、溶岩を運ぶことができるアイテムバッグができるんじゃないかって思うんだが、どう思う?」


「アイテムバッグは、熱にそう強くないですからね。魔石に刻んでいる空間魔法の魔法陣を溶岩ボックスに刻めばもしかしたら溶岩流の熱に耐えるマジックバッグができるかもしれませんね。」


「それにな。馬車の荷台に溶岩ボックスというか大きな溶岩プレートを組み込めば、大きな物を収納できる馬車が作るれるんじゃないか?」


「なるほど、溶岩は、形を変えて作れますし、魔法陣を刻んだり、魔力を貯めたりできますからね。」


「溶岩の加工は、土属性のクリエートスキルを持つ魔術師が得意ですよ。俺もできますからね。」


「それに、精錬術師に魔法陣を刻んでもらえば、良いわけだな。」


 アントニオさんが工程を口に出して確認していた。酔っ払っているから声が大きい。


「あの…、何のお話ですか?」


 ファルコン・ウィングのボフスラフさんが会話に入って来た。


「これから、研究所で作る魔道具の話です。溶岩を使うから土属性魔術のクリエートスキルを持っている魔術師が活躍するんですよ。」


「やっぱり、土属性のクリエートスキルの話ですよね。私持っているですよ。」


「そうなんですね。俺も持っています。モノづくりも楽しいですよね。慣れれば、土属性と言いながら金属や木材なんかの加工もできるようになるんですよ。クリエートの熟練度が上がることで広がるんでしょうが、金属を加工できるようになったら、ウェポンバレットが撃てるようになりますよ。」


「私、金属の生成なんてできないので無理ですね。」


「金属の生成なんて俺もできないですよ。素材をアイテムバッグに入れておくんですよ。鉄塊なんかをです。そして、マジックバッグの中でクリエートするんですよ。それなら生成ができなくてもクリエートできるでしょう。」


「凄いアイディアと技術ですね。そんなこと思いつきもしませんでした。」


「うちにいるんですよ。そんな非常識なことを思いつく奴が。」


「ええっ。何の話?」


「何でもない。ボフスラフさんとクリエートの話とウェポンバレットの話をしていたんだよ。」


「そう言えば、ミラさんが言っていたのですが、ロジャーさんは、ストレージをお持ち立ちとか、ストレージの非常識な使い方をうちのアンジェリカにご伝授頂けませんか?」


 そんなふうに、ファルコン・ウィングのメンバーや元ギルマスのお二人と夜遅くでお話しして楽しんだ。


 次の朝、二日酔いで頭が痛いと言うファルコン・ウィングの皆さんには、朝食の時に初級回復ポーションが入ったフルーツジュースを飲ませてあげた。二日酔いが治るジュースに驚いていたけど、これからシエンナ、ロジゃー、ミラ姉と一緒に町まで行って、アグリゲート契約を済ませた後、ダンジョンに潜ると言っていたから二日酔いのまま行かせるわけにはいかない。


 それから、昨日の内に魔石ライフルを5丁と3人乗りドローンを4機精錬コピーで作っておいた。小型のゴーレム戦車も作った方が良いか聞いたけど、まだ良いそうだ。それよりもマジックバッグと投擲武器が欲しいと言われたから、ロジャーと同じ投擲セットを作ってアイテムバッグに入れて渡した。投げ斧と投げ槍も入れておいた。


 その他に、リキロゲンボムを200個 シエンナに誰も使役登録していないゴーレムを2体渡した。アイアンゴーレムだから、魔力はかなり食うけど頑丈だ。昨日ファルコン・ウイングのみなさんのスキルは聞いた。そのスキルで使用できることができそうなアイテムを準備したつもりだ。ほとんどミラ姉の注文だけど。


 アイテムバッグはストレージを持っていない4人全員に渡した。アンジェリカさんには、ボフスラフさんのアイテムバッグに入っている投擲武器を受け取ってもらった。


 今までにない装備を受け取り、ファルコン・ウイングの皆さんは驚いていたけどこれからダンジョンに潜るなら、装備は充実させていた方が良い。勿論、ロックリザードの皮の鎧は全員に、魔法の盾も準備してドロフェイさんに装備してあげた。


 剣は、全て今使っている物をコピーしてミスリルで作り直した物を渡した。見た感じは、今までの物と変わらないから、使った時に驚くかもしれない。一応、仕様前には、ミラ姉から伝えてもらうように言っている。そうしないと切れすぎて怪我をしかねないからね。それに、魔力の通りも良くて、魔力を流せば、切れ味も数倍上がる。


「では、行ってくる。まず、町に行って契約を済ませてからな。アグリゲート契約なんてやったことないが、タブレットで確認したら、パーティーの代表者が居れば問題なく行えるそうだ。」


「はい。行ってらっしゃい。そうだ。タブレットも5台渡しておくね。エスの中で登録して使えるようにしておいて。登録名は、それぞれの名前で良いけど、お互いのパーティー登録と、アグリゲート登録もしておいて、その中に僕とアンディーを入れ忘れないでよ。」


 8人は、エスに乗って出かけて行った。僕とアンディーは、研究所で披露パーティーの時に発表する魔道具の仕上げと昨日言っていた耐熱アイテムバッグと大型物体収納可能のアイテムプレートの実験をしに行く。


 僕も、披露パーティが終わったら、ダンジョンに行きたい。新しい階層に行く時ってあんまり参加できていない気がするんだよね。



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