第6章 フォレス・アグリゲート発足編

第201話 大樹の誓とダンジョン探索

 3日後には、賢者の研究所のお披露目パーティーだ。レイやアンディーは、その時に発表する魔道具の仕上げに一生懸命だ。ロジャーとシエンナは、砦の技術者の学校建築の手伝いをしている。


 アンディーが研究所の方に行ってしまって、手伝いは終るのかと思ったけど、ロジャーとシエンナがいるだけで石積みや道具や材料運びの効率が何倍も違うのだそうだ。


 そういう訳で、私が一人で、アグリゲートパーティー見つけをしている。条件は、そんなにきつくない。冒険者ランクもCランク以上だったらOKだ。なのに、私たちのパーティーと組んでも良いと言ってくれるパーティーが見つからない。つまり、冒険者学校の常任講師パーティーも見つからないということだ。


 今日は、拠点の道具屋の前にいる。私が居ると、Bランク位のパーティーも少し距離を取る。私を怖がっているのか?


「姉御、お早うございます。」


「おう、お早う。今日も早いな。今からダンジョンにもぐのか?」


「はい。そうなんですけど、聞いて下さい。私、アンディーさんに教えてもらったソードショットができるようになったんです。そしたら、アイテムボックスが生えて来て。そんなに大きくないんですけど。それに、ヴェルもアイテムボックスが生えて来たんですよ。凄いと思いませんか?」


「おっ、おう。凄いな。それなら、ゴーレム階層に行けばコアで稼げるかもしれないぞ」


「ゴーレム階層ですか…。私たちまだ、Cランクなんですよ。少し厳しいかな。ゴーレムコアを壊すには、かなりの火力がいるでしょう。」


「ああっ。でも、コツさえつかめば、火力なんて全く必要なくなるぞ。なんなら、今から一緒に行ってコツを教えてやろうか?」


「本当ですか?」


 ヴェルが嬉しそうに聞いてきた。勿論、本当だ。大樹の誓の連中なら一緒にエスに乗っても心配いらない。前にも乗せたし、その人となりは分かっているつもりだ。


 こいつらには、大きなこと言ったけど、私としては、若干不安だ。私にアイテムボックスが生えてきたのもつい最近だからな。アイテムバッグの中の回復薬と連携してヒールをかけていたら、空間魔法が生えて来た。


 うちのパーティーは、レイの作ったアイテムバッグと自分の魔術の連携で空間魔法が生えてきたようだけど、シェリーとヴェルは、どうなんだろう。いつか聞いてみよう。


「お前たち、道具屋で何を買おうとしてたんだ?」


「いつものです。リキロゲンボムです。ボムをアイテムバッグの中に入れておいて、その中身を使ってウォーターボールにしていたんです。ボム1個で、5発くらいの超低温ウォーターボールが撃てるんですよ。そうしたらいつの間にかアイテムボックスが生え来ていて、今は、アイテムバッグはオカタルが使って同じように超低温ウォーターボールを撃てるようになりました。」


「そうなんです。ですから、うちのパーティーにとって、リキロゲンボムは、欠かせないアイテムなんですよ。」


「そうなのか。そのアイテムバッグってこの道具屋で買ったものか?」


「そうです。そうじゃないと私たちには、持てませんよ。アイテムバッグは、普通の道具屋じゃここの道具屋の10倍以上の値段なんですよ。」


 ということは、こいつらもレイの作ったアイテムバッグと自分の魔術の連携で空間魔法が生えてきたんだ。


「そうか。そうだよな。では、リキロゲンボムを購入したら、ダンジョンに出発しようか。」


 今は、道具屋の店番はケインとエミリーがしている。エヴィは、研究所で工学魔術の勉強中だ。


「ミラさん。シェリーさんたち一緒にダンジョンに潜るのか?俺たちも行きたかったな。でも、道具屋の店番頼まれているしから無理なんだよ。今度連れて言ってよ。店番誰か捜しておくからさ。」


 ケインは、そんなこと言っているけど、店番の代わりってなかなか見つからないと思う。町の孤児院にいる子どもたちは、まだ小さすぎるからな。かといって、町で簡単に雇えるはずもない。ここの道具屋の商品は、他の所で売りさばいたらかなりの金額になる物が多いと思う。そんな店を任せられる人間なんてそうそういない。


「エヴィかシャルが、手伝いに来てくれると良いな。じゃあ、行ってくる。」


 私たちは、拠点を出てエスを出した。エスに乗れば、ゴーレム階層で安全にコアの採集ができる。


「これに乗るのは、初めてではないですがやっぱりすごいですね。」


 エスが動き出してすぐにヤルミラが話しかけてきた。


「何がだ?」


「このスピードで移動しているのに殆ど揺れない。ゴーレムバスなんて、ガタガタとすごく揺れるのに。」


「ああ、バスには、車輪を付けているけど、エスには車輪がないからな。少々の凸凹は、多足が吸収してくれんるんだ。」


「そういえば、これに乗っていたら安全にゴーレムからコアを取ることができるっておっしゃってましたけどどうするんですか?ここに座ったままじゃ、コアに届きませんよ。」


「ゴーレム階層に入ったらデッキに上がるんだ。しばらくの間運転はエスに任せてな。でも、まったくエス任せっていうのも心配だな。ヤルミラ、その時は、操縦席に乗っていてくれないか?危ないようだったら撤退の指示を頼む。」


 それから、私は、ゴーレム階層での戦い方を説明した。


「エスに乗っていたら、こちらから攻撃しない限りゴーレムからの攻撃はない。だから、コアまでの射線ができるまで静かに近づいて、コアまでの射線ができたら、アイテムボックスに収納する。これを繰り返すだけだ。」


「本当に、ゴーレムからの攻撃はないのですか?」


「そうだな。今まではなかった。もしあったとしても、エスは、すぐには破壊されたり、行動不能になったりしない。」


「信じます。ですから、宜しくお願いします。エス。」


 良く分からないけど、シェリーが、エスに向かってお祈りを始めた。他の連中も素知らぬ様子だったから、私も突っ込まないでおいた。


 10分程でゴーレム階層に到着した。階層入り口で、ヤルミラを操縦席に座らせて、エスにヤルミラの指示を聞くように伝えた。窓は、少しだけ開けておいて、デッキからの指示が聞こえるようにしてて置く。


 すぐにゴーレムと会敵した。一回目のコア採集だ。


「ヤルミラ、ゆっくり近づいてくれ。ゴーレムとの距離が2mくらいになったらその回りをゆっくりと移動してくれ。射線ができたらコアを収納する。」


 エスは、ゆっくりゴーレムに近づいて行き、ゴーレムの正面を横切るようにゆっくりと移動している。胸のついているコアへの射線はできた居る。私は、コアに向かって手の平を向け


「アイテムボックス・収納」


 コアは、アイテムボックスの中に収納されてゴーレムはガラガラと崩れて言った。


「こんな感じだ。今回はロックゴーレムだから素材収納はしないが、金属ゴーレムの時は、崩れた素材も収納する。金属素材は高く買い取ってもらえるからな。」


「じゃあ、アイテムボックスを持つ二人でやってみてくれ。」


 それから、ゴーレム階層に2時間ほどいて、100以上のコアを回収した。コアは、ギルドに持って行けば、銀貨2枚で買い取ってくれる。それは、レイに降ろされ、主にゴーレムバイクになる。コアを持ち込んでの注文は、優先的に受けられて、卸価格も金貨60枚になるのでギルドとしても嬉しい持ち込みなのだ。


 この階層だけだとヒューブとオカタルが退屈するので、下の階層に行ってみることにした。


 この下の階層は、溶岩流階層で、火属性の魔物が沢山出てくる。これから先は、研究所や工場からの溶岩流採集の依頼で賑わうだろう。そんな階層だから、今のうちに魔物の間引きをしておくのは意味がある。


 そんな話をしながら下の階層に降りて言った。全員、デッキから降りてエスの中に入れる。暑さ対策だ。溶岩量階層は、とにかく暑い。エスの中にいれば、冷風の魔道具で温度を一定に保っておける。エアコン?の機能を森の賢者が付けたからだ。


「溶岩流階層に入ったのに暑くないです…。」


「ここでは、窓についている魔術攻撃口から攻撃する。基本的に冷却魔術が有効だ。ヤルミラは、氷の矢―アイスアローを入れた私のアイテムバッグを貸してやるから、そのバッグと連携して攻撃してみろ。アローが無くなったらまた入れてやるから言ってくれ。」


「ヒューブには、この魔法銃を貸してやるよ。アイスジャベリンにセットして、撃ちまくってくれ。シェリーにも魔法銃を貸してやりたい所なんだけど、あいにく銃は一つしかなくてな。しばらくの間は、ロックバレットで攻撃しておいてくれ。」


 私はエスを操縦しながら窓側に座らせた大樹の誓のメンバーには指示を出した。


「右から溶岩ゴーレムだ。近づくから攻撃をしないように。シェリーのアイテムボックスの収納県内に入ったら、収納の準備をして、収納可能な距離になったら、ヴェルがリキロゲンボールをコアの辺りに打ち込んで溶岩を固めるんだ。そのすぐ後に収納したらいい。分かったか?」


「「了解です。」」


 溶岩ゴーレムに対応しようとしていると、左からフレームベアが近づいてきた。


「右からフレイムベアだ。ヒューブとオカタルで対応頼む。」


 溶岩ゴーレムにゆっくり近づきながら左側のフレイムベアに攻撃を仕掛ける。ヒューブが、頭に向かって魔法銃でアイスジャベリンを撃つ。オカタルは、リキロゲンボールをフレイムベアに向かって放つが、狙いが甘く、方と胸に当たったが、大きなダメージを与えられない。


「オカタル、ヒューブと連携しろ。同じ場所を狙うんだ。どこに当たるかをしっかりイメージして、手の平をそこに向けて固定しろ。ヒューブ、狙う場所を支持してくれ。」


「フレームベアの右目のだ。視力を奪う。その後左目。いいな。」


「ゴーレムコアを収納できる距離に入った。ヴェル、頼む」


「リキロゲンボール!」


「収納」


 溶岩ゴーレムが溶け崩れて言った。


「うまくいきました。」


「俺たちも、仕留めるぞ。撃て!」


 ヒューブの合図で、オカタルがリキロゲンボールをベアの右目に向かって放った。命中。同時にアイスジャベリンが右目の辺り突き刺さった。フレームベアば、顔をその大きな前足で覆って苦しんでいる。


「胸への射線が空いた。狙いちを胸に変更だ。」


「了解。リキロゲンボール、リキロゲンボール」


「行け!」『ブシュッ』


『ズシャッ、ギンガラキン』


 リキロゲンボールで脆くなったところに大量のアイスジャベリンが突き刺さった。フレームベアは、魔石を残して消えて言った。私は、エルのゴーレムハンドを伸ばして魔石を拾い、左側に移動してきたシェリーに収納してもらった。


 上空に現れ、急降下で攻撃してくるファイヤーバードは、ヤルミラのアイスアローレインで面白いように狩れた。大小含めて火属性の魔石を50個以上手に入れた。パーティーの連携がかなり上達したところで、私たちは、ダンジョンを出ることにした。


「姉御、ご指導、ありがとうございました。それにしても、この乗り物凄いですね。私たちでも、いつか手に入れられるでしょうか?」


「そうだな。購入しようと思ったら大変かもしれないな。一台、金貨数万枚はするだろうしな。」


「金貨数万枚…。数万って最低価格でどの位でしょうか?」


「3人乗りの有人ドローンが金貨3万枚だからな。それに近いかそれ以上になると思うぞ。」


「無理です。私たちのパーティー、この前のロックリザード狩りで報償金と合わせて金貨100以上稼いだんです。それで、パーティーハウスでも借りて、この辺りに腰を落ち着けようかと思っていたんですけど…。姉御たちって金貨数万枚もする魔道具を何台も持てるほど稼いだんですね。」


「そんなことより、お前たち、パーティーハウスを持ちたいのか?」




【後書き】

 フゥー、やっと新章始まりました。

 森の賢者の研究所編は、少しもたもたしてしまいました。

 反省です。


 アグリゲートというのは、集約した物、集めた物、または、その行為のことを言うそうです。つまり、いくつかのパーティーを集めた物をアグリゲートと言っていると思って下さい。ファミリーとかギルドとか呼ばれるものと似たような感じです。


 今回登場するフォレストアグリゲートは、そもそもは、冒険者の学校の講師をしてくれる冒険者パーティーを探そうと言うので作り始めた物です。そのパーティーと一緒に連携して冒険ができたらいいなと、ミラ姉は、メンバー探しを熱心にやっています。新章でどんな展開があるのか。楽しんでいただけると嬉しいです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る